大地を見つめて

詩川貴彦

第1話 大地を見つめて

「大地を見つめて」


~たとえば桜は、その根に屍を深く抱く鎮魂花である。~



たとえばその巨木たちは

薄い花びらをたたえ

淡い日差しの中でも

日だまりの匂いを注ぎ続ける

人々に

命のときめきを思い出させる


たとえばその巨木たちは

翡翠の葉脈をたたえ

むせぶ霧雨の中でも

力強くたたずみ続ける

生き物に

命のたくましさを教えはぐくむ


だからその巨木たちは

灼熱の太陽に木陰を成し

青寒の木枯らしに温床を作る

はかない命たちを

母のように守り続ける


誰のために生きているわけではない

ただ自分のために

生き抜いているだけなのだ

それが他者への恵みとなり

こんなにも誇り高く

たくましく優しくあるのだ


何を悩み苦しむのだ

大地を見つめて

生き抜けばいい

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