第13話 もう1つの指輪
前書き
引き続きクリス回(本編)
第四王子大暴走!
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【王城・宰相府宰相補佐官室】
こんにちはクリスです。
殿下と共に今日も朝から大量の書類を処理し、やっと休憩に入ったところだ。
「殿下、コーヒーを淹れましょうか?」
そう声をかけると殿下は
「あゝ、ありがとうクリス。
君の淹れてくれるコーヒーを飲むとホッとするよ。
それだけに残念で仕方ない……。」
⁇
いったい何が残念なのだろうか?
気にはなったが、コーヒーを淹れる為に席を立つ。
殿下はブラックで私は砂糖もミルクも入れる。
私がコーヒーを飲む度に、周りの人間から怪訝(けげん)な顔をされる何故だ?
私と同じ飲み方をされる方を、1人知っている。
以前お仕えしていたロピアー公爵様だ。
所用で来られた公爵様を、殿下が偶然お見かけし、何故か補佐官室で一緒にコーヒーを飲む事になった。
殿下にコーヒーを淹れるように言われたので、いつも通り淹れたところ、公爵様はいたく気に入られ王城へ来る度に、補佐官室に来られるようになった。
もちろん忙しい時は対応できないのだが、殿下は何故か私にコーヒーを淹れるように即す。
そんなある日、いつもはペンダントにしている【父親の形見の指輪】のチェーンが切れた為、一時的に指にはめていた。
偶々通り掛かったエミール殿下に
「その指輪、どこで手に入れたのですか?」
と聞かれ『父親の形見で子供の頃から持っている。』と答えると殿下は怪訝(けげん)な表情を浮かべて……
「それ、良くない物だから、外した方が良いですよ。
まぁ片方だけなら良いかもしれませんが……
もしもこの指輪のもう片方の持ち主がいた場合、気をつけた方が良いです。」
と言われた。
それから更に数日後、侯爵家からとんでもない知らせが届いた。
エリーお嬢様にナルキス様が学園の生徒の前で『婚約破棄をする』と宣言したというのだ!
しかもナルキス様が挙げた理由は、全て冤罪であったという。
その報告を聞いたシオン殿下も呆れていた。
「あり得ないだろう……。
しかも何の裏付けも取らずに、浮気相手の言う事を鵜呑みにするなど…。
あの男が公爵になったら、領地が潰れるのが目に見えている!」
私もそう思います。
とは、口が裂けても言えませんが……。
そのうちシオン殿下がとんでもない事を言い始めた。
「もうこの際、お前が公爵家継いじゃえばいいのに!
幸い叔父上にも気に入られてるし、顔もそっくり!
コーヒーの飲み方とか、もう親子にしか見えないぞ!」
何て事を言い出すのですか、貴方は!?
その言葉に呆れていると
「もしかしたら本当に親子かもしれんぞ?
そうだ、良い考えがある。
最近エミールがサイド家(*1)と開発した【鑑定の魔道具】というのを使わせてもらおう!」
「それにな…実は『ナルキスを廃嫡して、お前を養子に迎えエリー嬢を嫁に迎えようか。』という話が出ているんだ。」
「は?!ナルキス様を廃嫡?
私を養子にしてエリーお嬢様を嫁に!?
ちょっと何を仰っているのか理解できないのですが……。」
そんな事あり得ないでしょう。
「そう言いながらお前、随分と嬉しそうだぞ?
特に『エリーお嬢様を嫁に!』のくだり。」
そんなバカな!殿下に気づかれただと!
私のエリーお嬢様への気持ちは、誰にも知られてはいけないのに!
驚いている私に殿下は更に
「それにお前、学園の寮にいた時、野良猫に名前付けて可愛いがってたろう白×黒ハチワレのメス。
『エリス』何て名前付けて♪」
な、何故それを!
「安心しろよ。あの猫は今、公爵家で飼われてる。」
えっ?何故公爵家で?
学園にいる時は、私にしか懐かなかったのに……。
「高等部入学式に行った叔母上が、ナルキスのあまりの残念ぶりに倒れてしまってな。
医務室で休んでいたら全力で慰めてくれたそうだぞ♪」
あゝエリス……
私だけだと思っていたのに…
「あ、叔母上にはちゃんと猫の名前は『エリス』だと教えて置いたから♪」
あまりの話に呆然としていると、殿下は私の肩に手をかけ
「じゃ、早速行こうか♪」
⁇
「何処へですか?」
「もちろん【鑑定の魔道具】を試しにさ!
なるべく沢山のデータが欲しいって言ってたから試しに使ってみよう!」
殿下…本当は仕事サボりたいだけでしょ!!
―――――――――――――――――
*1
【サイド家】
ハーシー&タークの実家
錬金術と魔道具の研究と製作を生業としている伯爵家。
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