第10話 兎の質屋さん
【ユイナーダ王国王都ユイナー・質屋ラパン】
先生の奥さんの実家は、王都でも老舗の質屋だった。
1人で入るのは、ちょっと気が引けるくらい立派なお店だ。
「いつまでもここに立ってるとお店の迷惑になるから入ろうか。」
本当は1人で来ようと思ってたのに、何故か兄さんと一緒だ。
「おっ!コレ探してたんだよなぁ♪」
店に着くなり、兄さんは置いてある商品に夢中になり僕の事は放ったらかしだ。
兄さんが商品を見ている間に、僕は奥に案内され、店主さんから話しを聞いた。
アクセサリーを持って来た人物の特徴を聞いた途端確信した、“アイツら”だ!
念の為写真を見せると、複数の店員さんから証言が取れた。
同じアクセサリーを大量に持ち込んでいたのは、案の定サンソンとキヨミナだった。
調査が終わって店の奥から出て来たら、カウンターの前に大量の荷物が置いてあり、兄さんが支払いをしていた。
いったいいくら払ったのだろう?
『質屋ラパン』での調査を終えた僕らは、そのまま『国立図書館』に向かう事にした。
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【国立図書館】
「無い……。何処にも無い。」
エリーから聞いた『魔法の指輪が出てくる本』が見つからない。
エリーの当時の年齢からして、子供向けの本のはずなのに、見つからない。
結局、閉館時間まで粘ったが見つからなかった。
せめてエリーが本のタイトルとか内容をもう少し覚えていてくれたら良かったんだけどなぁ……。
帰り道兄さんの運転する魔道車(*1)の中で、質屋で買った大量のガラクタに潰されそうになりながら愚痴を言っていたら、思わぬ事を聞かされた。
「国立図書館にはタークが小さい頃(今でも小さいけど)、よく連れて行ってたなぁ。
エリー嬢とエミール殿下と一緒になった事もあるぞ。
2人はよく読みたい本が被ってたから、殿下なら覚えてるかもしれないな。」
エミール殿下?
そうか殿下なら覚えてる!
だって殿下は!!
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翌日、さっそく殿下に『魔法の指輪が出てくる本』の事をお尋ねしに魔術科へ行った。
残念ながら公務で王城に戻られていて、お会い出来なかった。
その後は、サンソンの件でこちらが忙しくなり『魔法の指輪が出てくる本』については、また中断することになってしまった。
(『どうやらお仕置きされたいらしいですね』参照)
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(エリー視点)
「カイザン先生お願いがございますの♪」
私はナンパ騎士の為に、パーティー会場を探しに騎士科に来ていた。
「魔術科のお前が騎士科の俺に頼み事とは、珍しいな。」
騎士科の主任カイザン先生と魔術科の私が知り合ったきっかけ?そこはまぁ、この際カットします。
カイザン先生と別れた私は『夜8時に旧闘技場 下見』とメモした後、皆んなとの待ち合わせ場所である【ユウリン館】に向かっていたの。
ところが途中、ナンパ騎士ことサンソンの仲間に囲まれて拉致され、取材メモを取り上げられたのよ!
やっぱり近道をしようとしたのがまずかったのかしらね?
「おい!このメモ使えそうだな!」
ナンパ騎士の声ね。
「そうっすねー。コレであの女達を呼び出すってのは、どうっすか?」
この方は、知らないわね。
え?何で声かって?
それはですね……ロープで縛られ目隠しと猿ぐつわをされて床に転がされているからですわ!
酷すぎない?
それからアナタ達忘れてるみたいですが、私一応、#侯爵令嬢__・__#なんですけど。
『貴族の誘拐』ってかなり罪が重いんですわよ!
それから数時間後、私はタークちゃん達に助けられナンパ騎士一味相手に皆んなと大立ち回り!!
私達だけの内緒の作戦だったはずが、実は上層部に報告されていて、エミール殿下や、沢山の方々に多大なご迷惑をおかけしてしまいました。
そして現在……
「「「「聞いていらっしゃるのですか⁈お嬢様(お姉様)!!」」」」
絶賛お説教中ですわ……。
妹のケイト、執事長のトマス、私付きメイドのモリリン、そして私の“本当の運命の人”クリス。
あゝ怒ってる顔も尊い♡
「「「「お嬢様(お姉様)!また余所事を!!」」」」
因みにお父様は、領地視察の為にお留守でした。
お戻りになったら何と言われるか恐ろしいですわ。
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*1【魔道車】
馬を使わずに魔道エンジンで動く自動車のような乗り物。
スピードは、馬車より少し早い程度、馬を休ませる必要がないので結果的には、早く目的地に着く。
高級品の為、高位貴族しか所有していない。
ハーシーが持っているのは、製造元が実家の為、宣伝も兼ねているから。
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