不平

世界に認められなくてもいい

ただ自分が価値があると思えるような

そういうものを残すことができれば

せめてもの幸福といえよう

それを為すだけの才がないと言うこと

これほどの絶望はない

手を伸ばす権利すらないのか

星を眺め、ひたすら想い焦がれ

そして、ただれそれだけに留められる

こんな虚しさがあるだろうか

ただ荒野を、自分だけの手によって

走っていこうと、それ以外の喜びを消し去り

物語を見捨て、友人を見限り

曲がりなりにも捧げてきた

その見返りが、何もない

君の門が開くことはない

お帰りいただこう、と

そう言うわけなのか

では、私の残された年月はどうなるのか

ただ地上に飼い殺しにされ

同じようなものを食い、寝て

起きて、価値の認められない働きをし

そのうちに力尽きて倒れるだけ

この唯一の生が

この唯一の生が!

輝く人々を横目に

私は暗がりで密かに世界を呪いながら

ただ朽ちていくのか

何もなせぬまま

自己嫌悪の泥濘にはまったまま

永遠にうだつがあがらぬのか


足を踏み外したい

そして闇の中に落ち

私は訳のわからぬままに

闇のなかで傷つけられて

悲壮的な物語を強いられる

そしてそれをくぐり抜け

新たな力を手にした私は 

新たな光を世界にかざすことが出来る

悲劇の主人公

その深奥に優越感を隠しながら

余裕そうな笑みを振り撒いている


お前も死んでいる

何が楽しくて生きていられるのか

私には分からない

お前のような人生はくずだ

先の知れたものだ

お前の下らない憂さ晴らしを見るたびに

私は情けない気持ちになる

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