番外編 もう10年目ですね
今年ももうすぐハロウィンが来るっていうのにこの2人は特に何をするつもりでもない。思い浮かばない。とりあえずお互いが好きな料理で今年はハロウィンを楽しもうということになった。
李仁と湊音の同性カップルでパートナー協定を組んでもう8年近く。出会ってもう10年、同性同士、子供を持つことは考えていないため行事一つ一つをより大事にしよう、と言っているもののこのハロウィンだけはなんだかマンネリ気味と感じているようだ。
他の行事のように毎年趣向を変えたり、街のパーティに出てみるなどもしたが去年は自宅でと思った矢先、2人は些細なことで喧嘩になって、かぼちゃシチューを作るタメに用意してあったカボチャが後日カボチャの煮物と天ぷらとして出てきたという事態が起きたのだ。
そんなこともあり今年もとりあえずかぼちゃシチューを作るか、と李仁は仕事帰りに大きなかぼちゃを買ってきた。
「また今年も煮物か天ぷらになるんじゃないの」
「そうならないように喧嘩はしないようにしましょうね」
「わかってるぅー」
と湊音が李仁にキスをした。そして李仁もキスを返す。
今からラブラブな2人。
「去年なんで喧嘩したんだろうー」
湊音は大きなかぼちゃを両手で撫でる。その後ろから李仁が彼を抱きしめる。
「わかんない、忘れた……」
「忘れたなんて。怒った張本人のくせに」
「2日くらい本気で話さなかったっけ……」
些細な、というほどのレベルではなさそうである。
だが思い出すよりも2人の吐息はだんだん激しくなる。
「なんでさっきからミナくん、かぼちゃをそんなに撫でてるの」
「わかんない……撫でたくなって。李仁が僕のお尻を撫でてるように」
先程から李仁は湊音のお尻を撫で始めていた。
「ミナくんがそうやってるからこうやって欲しいって思ったの……」
「もぉ、だーめ。夜までお預けなんだから」
また軽く湊音がキスをして2人は料理に取り掛かる。
「ねぇ、はじめてのハロウィンは覚えてる?僕らの」
李仁はそう言われて、うーんと思い返す。
「んー、たしか付き合ったばかりで、とりあえずホテルでコスプレ選んだけど結局はすぐ脱いじゃって……」
「すぐ悪戯されちゃった」
「でも次の年はコスプレしてパーティして。李仁の手料理と僕のカボチャパイ食べてその夜もセックスして……」
「だってミナくん、かわいい猫のコスプレだったから」
「李仁も確かバンパイアでイケメンだった……いつも以上に」
と過去のハロウィンパーティを回想しながら戯れあってるのはソファーの上だった。
シチューの煮込み時間の間、待ちきれなかった湊音が李仁に抱きついた。そこから李仁のスイッチも入ってしまってお姫様抱っこで湊音はソファーに運ばれたのだ。
「その次の年はパートナー協定を結んでお祝いを兼ねてパーティしたわよね。みんなで仮装パーティー」
「ミナくんはあの時高校の先生だったのに朝まで飲み明かして……」
「それ内緒」
と湊音が李仁の唇に人差し指をあてるがすぐに咥えられてしまう。
「変態、李仁っ……あっ」
「指だけでこんなに感じちゃうのね、だったらー」
「李仁っ、そっちはっ! んあっ!!!」
「その次の年からか次はどうしようとか悩み始めたの」
「ん、う、うん……そうだったね、李仁」
2人は気付けば裸になっていた。湊音は李仁の頭を撫でながら彼の動きを見ていた。
「四年目、五年目あたりはとりあえずハロウィンしよう、とかなって……装飾したり、ちょっとしたコスプレしたり」
「そうだった、ね……六年目は旅行行ったかな……七年目は高校のハロウィンの行事に行って、んっ、八年目は……料理作って……っ」
「そして去年は喧嘩。今年で十年目っ」
「あっ……」
「十年の節目のハロウィンだったわけよ、今年は」
湊音は力を出し切り放心状態である。そしてもう十年目だったか、と。
「今年はハロウィンの思い出話をした年ね。来年はー、またコスプレでもして街で歩きたいわねーみんなと」
と李仁が言うと、湊音はウン、と頷いた。
マンネリハロウィン、とか言いつつも毎年何か違う。そんなんでいいんじゃない? でもほぼらぶラブラブしてるのは変わらないな、と2人はさらに愛し合ったのであった。
終わり
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