第24話 誰のせい
とある車内。
運転席に李仁、助手席にはシバが座っていた。シバはタバコを吸うために窓を開けて、李仁に聞くこともなく火をつけすぐ煙を吐き出した。
「久しぶりじゃないか。なのに湊音のスマホから偽ってメールをして俺を呼び出すなんて卑怯だな」
シバは黒縁メガネに無精髭。黒の半袖のシャツとジーパンというラフな格好。頭は相変わらずボサボサだ。またタバコを吸い、煙を吐いた。
「……そうでもないと会えないかなって」
「なんだよ、別に李仁自身からメールすればいいじゃん。シバに会いたい、シバとキスがしたい、シバのが欲しい、シバの上に乗って喘……」
「最低ね、ホント。どんどん廃れていく、シバ……元刑事が嘘のよう」
「おいおい、いつの話だよ」
煙たくなる車内。独特なニオイのタバコで李仁は顔をしかめる。
「そいやタバコやめたってな。湊音が言ってたけどコレ吸わせたらムセた……お前もやめたんだ」
「……そうよ」
「よくやめれたな、感心するよ。二人とも体悪くなったのか?」
シバはようやく持っていた携帯灰皿にタバコを押し入れた。かと思ったら2本目。
二人は過去に付き合っていた。バーテンダー兼情報屋だった李仁、刑事だったシバ。
後腐れなく別れたつもりだったようだが、それからのシバの荒んだ生活に呆れて李仁は珍しく毛嫌いをしている。
それは湊音をしつこく付き纏い彼の心を乱すこともだ。
李仁は後悔した。シバと湊音を引き合わせたのは刑事をやめた彼に湊音の務める剣道部のヘルプのためだった。
それと同時にまだ李仁と湊音は付き合いたてで、湊音自身もまだ自分が同性愛者であることに戸惑いを感じていた時で、シバと引き合わせれば少し変わるのでわないかと浅はかな考えをしてしまったのだ。
多くの女性を魅了させたシバに湊音も恋が落ちるのもあっという間であった。
二人が結ばれた後は李仁と湊音の間の関係も発展してさらに強い結びつきをもったが、李仁の知らぬ間にシバと湊音の関係はずっと続いていた。
そしていきなり湊音たちの前から消えたかと思ったらまた現れ、そしてまた消え、またまた現れ……湊音の指導している剣道場にまたやってきたシバ。そしてまた湊音の身体を弄ぶ。
李仁はそれはとても許されないことであった。湊音は過去に母親が目の前で自死したのを見ており、ずっと不安定さを心に沈ませていた。
シバによって掻き乱され湊音がさらにおかしくなったと李仁は感じているのだ。
「あなたがミナくんをおかしくさせた」
「は? 何言ってんだよ。あいつを調教させろって言ったのは誰だよ」
「……」
シバは苦笑いをしながら李仁の頭を触る。李仁はすぐ払い除けた。
「お前は真面目になったなー。昔は悪さばかりしてたのに……結構こっちは見逃してやってたんだぞ。大切な情報網であり、可愛いペットだった」
「おもちゃのように無碍に扱ってたくせにっ……! んっ!」
シバの左手が李仁の首を掴む。すごく強い力だ。
「……湊音とおまえが会わなければよかった話じゃないのか? 会わなければ湊音はこっちの世界にはいなかった」
李仁は涙を流す。抵抗してた両手も弱くなっていく。
「……わたしのせいだって……言うの?」
「じゃないのか? 自覚ないのか、このアバズレがっ」
強くなっていく力に李仁はもう抵抗せず目を瞑る。その様子を見てシバはハッと手を離す。
李仁はぐたっとして息をハアハアと吸い込む。シバも手の震えが止まらないようだ。
「バカか……殺すわけないだろ」
李仁は呼吸がうまくできず、涙も大量に溢れる。だが笑っている。
「何笑ってんだよ、気持ち悪い……」
「殺してくれたってよかったのよ……わたし、もう限界なの!」
「李仁……?」
急に声を荒げた李仁はむせてしまったようだ。だが涙は止まらない。
泣き叫ぶ。今までに見ない李仁の感情の爆発にシバは驚く。
「……ミナくん……のこと……どうすればいいのかわからないのっ。もう嫌だ。もう嫌なの! 殺して、殺して……私のこと!」
「落ち着け、李仁っ! 李仁!」
するとそこに
「どうしましたか!」
警察官が2人の乗ってる車にやってきた。どうやら近所の人が通報したらしい。
シバはやばいと思ったが、発狂してパニックになる李仁を抱きしめた。
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