灰谷紅奈と大天使見習い
鳥居ぴぴき
第一話 新しい朝が来た!
1/6 新しい朝が来た!
一生懸命、今を生きてるでお馴染みのわたくし灰谷紅奈は完璧に寝坊した。
「ふーん、どれくらい寝過ごしたんだ?」そう思った僕たち! 甘い、甘すぎるよ。
私が掲げる完璧な寝坊とは、〝あと五分早く起きてれば……〟ってやつだから。
大体、何時間も寝坊したらそれはもう寝坊とかじゃないから。あれよ、あれ。それはもう、そういう睡眠方法になるんだから。
それって、全然完璧な寝坊って呼べないんだよね。だってもうそんなに遅れたら、ドキドキしないでしょ、心の臓が。
完璧な寝坊ってのは、あのドキドキが重要な訳であってね、そこんところを分かって欲しいのよ。
そんでね、間に合う時間に起きるのも、当然寝坊じゃないから。これは当然すぎるよね。は? 当然すぎることを言わせんなよ。
なんて現実逃避講釈を脳内で多垂れ流している間にも目覚ましのベルは鳴り続けている。
この音量設定って、かなりの悪意のある奴が設定してるんだろうな。でも、今はこんなにムカつく音量なのに、なんで、なんで私はあと五分早く気がつかなかったんだ!
いや、まだ希望はある。さっきわずかに時計を見て〝ヤバッ〟と思った瞬間、すぐに目を閉じたんだけど、もしかしたらそのとき時間を見間違えていて、本当は寝坊なんてしてないという、完全に無い希望だ。
信じよう。自分を信じよう。いやいや、自分を信じたらいけないんだ。見間違えた自分を信じよう。
やっと私が目を開けようとすると、ベルが勝手に鳴り止んだ。
「なに難しい顔してるんだよ」
あれ? 誰だろう。私の部屋に親が入ってくるはずがないし、何より聞いたことがない声だ。性別もわからない綺麗な声。
急いで目を開けると、そこには夢みたいに美麗な男の子がいた。
「キモ、なにニヤついてるんだよ」
なにか、ひどいことを言われた気がしたが、気のせいだろう。今の私は、見間違う自分を信じることが出来るのだから。きっと、今度は聞き間違い。そのはずだ。はっはっは! はあ……。
目覚まし時計を見ると、さっき見た通りの時間のままだった。やった。完璧な遅刻だ!
「今度は泣きそうな顔になって、やっぱキモいな」
あぁ?! こっちも聞き間違いじゃないじゃん! マジでなんなんだ?
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