第18話 クリストファー



「クリスお兄様の意地悪っ!」


 セレスティーヌがクリストファーに一言


「なんの話だ?! 私がいつセレスに意地悪をした?」

 ムッとむくれているセレスティーヌを、不思議そうな顔で見る


「ラルフ様が国を出た理由とか、私が幼い頃にラルフ様とお約束をしていた事をどうして黙っていたの? お兄様ならご存知のはずでしょう!」


「…あぁ、その話?」

「他に何がありますの?」


「本当に忘れていたんだな…」

「幼かったですから…先日ラルフ様が邸に訪ねて来られてお庭の、」

「噴水のところね」

「そう、噴水……お兄様、何故…もしかして」


 にっこりと微笑むクリストファー

 顔が赤くなるセレスティーヌ



「意地悪っ!」

「セレスが忘れていたんだろう? ラルフもしつこい奴だよな、あんな幼い子の戯言を本気にしてさ、待っているとでも思っていたのかねぇ…」


 目を細めセレスティーヌを見てくる



「あれからお会いしていなくて、忘れていたわたくしが悪いんです…でもっ、殿下と婚約をする時にラルフ様の事を教えてくだされば良かったのに!」

 両手をギュッと丸め抗議するセレスティーヌ


「ラルフだって、そんな口約束覚えているとはなぁ…それにしても幼なかったとはいえ、セレスに手を出したのが許せん…」


 笑みを浮かべながら足を組む


「…お兄様、お顔が怖いですわ」


「あの時のセレスはとても可愛くてなぁ、私でさえセレスに口付けなんてした事無かったのに…あいつが………奪ったんだよ、

 その後あいつが来なくなったから、セレスはずっと泣いていたな…思い出したら腹がたってきた……幼女に手を出すなんて…サロモン殿下の言った通り、もしかして……」


「やめてくださる? ラルフ様の事をそのように…成長したわたくしをみて、また好きになってくださったの」


 嬉しそうに、いやいやと両頬を抑え頭を振るセレスティーヌ



「そうですか…真実の愛とやらは人を変えるんだな、サロモン殿下に見せてやりなさい、今あの男は愛を求めて彷徨っているんだよ」


「元々、殿下が真実の愛を見つけたと言って来られて……わたくし本当に応援していましたのに、今は軽蔑しておりますわ。また被害者を増やすのかしら…女の敵ですわね!」


エドワール王太子が頭を悩ませている…セレスはサロモン殿下と婚約が破棄…いや解消となって良かったのかもな…ああいう男は同じことを繰り返すタイプだ……どこで道を間違えたのやら」


「殿下は…真実の愛と言っておられましたのに、婚約を解消する書類にサインを中々なさらなくて、イライラしましたもの…優柔不断ですのね」


 あの時のサロモンを思い出し嫌そうな顔をする


「ああいう男はな、フラフラして結局戻ってくるところは君の所だ! とか意味のわからぬ事を言って惑わすタイプだ! それに比べたらまだラルフの方が良いのかもな…タイミングよく帰ってきてセレスを奪って…サロモン殿下にはいい薬かもな」


 はっはっはと笑うクリストファー



「いや待てよ! ラルフも外国をフラフラして結局セレスの元へ戻ってきたのか…さてはあの二人……似てるのか?」


「っやめてっ!! お兄様!ラルフ様の事悪く言わないで! それ以上言ったら絶交だからぁ!!」


 涙を滲ませながらバンっと扉を開き、部屋に向かって走り去るセレスティーヌ

 母上に見つかり怒られている声が聞こえた



 セレスティーヌが嫁にねぇ…

 絶交とは、また…


 サロモンとは恋愛ではなくとも、いい関係だったように思えていたのに、これも運命なんだろうなぁ…

 私も小さかったは言え、いつ帰ってくるか分からないラルフに腹が立ち、しばらくは連絡も途絶えた。


 婚約をするわけではなく国を出て行ったラルフ、いつ帰ってくるか、生きて帰ってくるかも分からないと子供なのに大人びていた。

 自分の事もどうなるのか分からないのに、ひとりの人生を狂わせたくないと言っていた

 真面目なんだよなぁ


 セレスティーヌにラルフの事を思い出させないようにラルフの話はしなかった、これが意地悪なのか?


 邸の噴水を壊しておけば良かったかもな…


 そしたらラルフとの約束を思い出さなかったか?これは単なる嫌がらせ


 ただいまって…待たせすぎだろ!







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