第27階 "最後"の七大神王ディン
ふと思い立ち、私は神の樹の生い茂る場所へと来ていた。
ディンがいると思われる場所より宇宙の半分程度距離が離れている場所。
神の樹と言っても神秘的な効力を持っている訳でもない。
神の世界に生えている単純な樹の事を指している。
目的。
ラウドとその手にしていた大剣の埋葬のため。
ーー切削工具
ーー採掘作業
私はドリルで人1人が余裕を持って入れられる、具体的には2人分程度の穴を開けた。
そこにラウドを入れ、埋めた。
空気が震えて感謝する様に風が優しく撫でていく。
この地はラウドの生まれ故郷のようで。
エンシェントルーラエルフとしての感性がそう告げる。
もう滅んだ村は今では沈められているけども。
神々の戦争に巻き込まれた小さな村だったのだろうか。
敵国の神を殺す為に身も心も魂さえも砕き
ディンに仕えたというところかな。
それは故郷を救ってくれると信じていた淡い少年の心なのだろう。
私は人の生き死にに対して何かを抱く様な道徳的な心の綺麗さは持ち合わせていないけども、私相手に一歩も譲らず剣を向けて来た彼は称賛に値する。
きっと父もそうする。
戦士として彼を尊重しなければ"恥"だと私は心より思う。
私には結果として人の世を滅ぼしてしまう程の力を持っているという自覚がある。
白亜も漆黒も。
それは戦いという生きる為の本能を燃やす炎ともいえる。
なんでも小難しく考えがちだけども生きるって事が一番強い様に感じられる。
ディンがどの様な神様なのかは知らないけれど、七大神王よりも遥かにラウドの方が強い存在だと私は心より思う。
人の世が滅ぶ時にはこういう誰からも模範であり全てを人々の為に砕く様な人物が死んでいく。
人世界における善人が死なない限り滅びへと道を進める事は無いし、魔王が討たれる時は大抵善人に悪行をし尽くした後だったりもする。
だからこそ私はラウドをエンシェントルーラエルフのアオナ・エカルラートに惜しくも敗れ去った男としてこの場所に名を刻もうと思う。
神々の世の英雄として。
私は彼の大剣を墓標に樹の根本に突き刺した。
ーー時移
そして私は最後の七大神王ディンの元へ飛んだ。
「......来たのか魔王少女...」
歪な色を何色も重ね合わせたローブを緩々と身に纏い。
鋭く長い銀色の槍が鈍く淡く光る。
長身かつ渋く微笑むその表情は力強い。
「ラウドは負けたか」
全て聞かずとも分かると言いたげな憎しみを含んだ表情を私に向けた。
「いかにも」
私に引く気はまるで無い。
真っ直ぐにディンを睨みつけた。
「まぁよい、さぁ来い!ミリカンテアの勇者よ!!!」
全てにおいて神秘的な王宮が泣いた、そんな気がした。
でももう戻らない。
神々を総て討ち滅ぼす機会なんて過去も未来も幻想も架空も合わせてそうそう無いのだから。
ディンの槍と強くなった時剣アーザが火花を散らしぶつかり合う。
その最中、ディンはすぐさま下がる。
「我が魔槍に刃が食い込むとは」
ーー風体変
私も一旦距離をとる。
「この剣は貴方がミリカンテアに行使しようとした事を神々に対して行った物」
ディンは無表情で凍り付く様に絶句した。
「...ミリカンテアの二柱は神々に敵対したキレ・ルイデの娘、ハツミリア・ルイデを救う為にあろうことか神々に意見した。
故に我々は七大神王たる二柱のシアと行方不明のククハのおらぬ所でメイユールを仕向ける様に圧力をかけた武力でな。
メイユールの地に訓練された人間を送り情報操作をした。
高々と新米の神がメイユールを神々の世の為に討ち亡ぼすと声をあげているとな。
ミリカンテアの勇者よ。
愚かなるハツミリア・ルイデによってお前は死ぬのだ!!!」
私は深く息を吸って吐いた。
怒りが全身を貫いて、今にも吹き出しそうだったから、落ち着けていた。
「聞いて呆れる」
ーー時断
私は何も考えずにディンの身に深々と時剣アーザが食い込ませていた。
ーー軌道摩擦
摩擦係数を高めれば、それはどんな攻撃でも弾く盾となる。
「グフ...何故だ?我が魔槍は全てを貫く...」
槍が空を切り、苦しそうに悶える神ディン。
「うふふふ。全部知っていてこの場にいるのだから。
ハツミリフィは人間転生に失敗し寿命を著しく減らし命が尽きかけていた。
神降ろしに引っかかる神様に良くある事よ?
彼女は人に憧れを持っていた、神で無かった私に。
このハツミリア・ルイデに」
ーー白亜剣
ーー極速
状態異常:四肢損失。
私は斬る事によって神体さえも繋がりを切断してみせる。
その事によってディンに希望の表情はない。
強がっては見せても。
「ハツミリフィは可愛い神様だったわ。
もし、彼女を生かすという思考が何処かにあれば神々の世はあり続けたのでしょうね。
でも深淵の本能の奥深き意識の果てで滅ぶ事を望んでいた貴方達は私によって道を潰える」
ーー疾風刃雷
私は更に攻撃を繰り返す。
芋虫の様に悶えるディン。
「神々の世を生かすも殺すも私次第。
なぜだろうか、全知全能を持ち得ながら神々は利口からはかけ離れていた。
ただそれだけの話よ?
何を勝ち誇っていたのかしらねぇ?」
ーー風輪火山
私は更にディンへの攻撃を繰り返す。
「憎悪に悶えろ、復讐の炎で身を焦せ!!全てを!!意味が無いのだからな!!!」
状態異常:吐神血の最中、ディンは憎しみの表情で私を睨み付けてくる。
「これは復讐では無いわ。神々は不倶戴天としてこの世に認識されただけよ。
神々が滅ぶなんてこの世界の全てからしたら些細な事でしょう?器が知れてるわ。
草を踏み潰すよりも些細な小さ過ぎる出来事よ」
ーー漆黒
ーー堕太陽
それは世界の終わり、朝の消失、生命の成長の終焉を齎す流星という名の打撃。
魔槍をむ為の光の手を創造したディンの希望を掴もうとする手を漆黒で攻撃する。
「ぐおおおおおお!!」
「良い表情ね」
私が呟くとディンは底力を解き放ち始める。
俗に言うキレたらしい。
全身を活性化させ、再生させた片方の手で魔槍を握りしめて突撃してくる。
光がまるで速度を持っていないかの様な速度で。
ーー極遅延
その時が止まるのか進むのか、それを理解するのは困難だった。
「ねぇ、止まっているのかしら?」
私に銀色の輝く魔槍の先端は届くはずも無い。
ーー時断
漆黒の"ビートゥデス"はディンの神脳を捉えて抉っていたのだから。
高貴の象徴たる神界
その誇りが穢れていくかのように、空間が避けて無数に割れていく。
「......な...ぜ......それ...に......なんだ?」
鈍く深く呻くディン。
私は微笑みで応えた。
「私が貴方にかけた補助的な技が分かったかしら?
この私と貴方の隔たりには数千億をゆうに超える数の世界を瞬間的に移動出来て初めて私に届く。
私の戦闘のベースは魔皇と同義の"魔法使い"よ。
魔王少女はあながち間違っていないわ。
神々に仇しているし、もしかして戦士の様に打ち合いが出来ると感じていたのかしら?
そうだとしたらおめでたいわね。
スウは世界を少なくともいくつか纏えたはずよね?」
ディンの表情が変わる。
恐怖に引きつりながら、事実を淡々と思考しているのだろう。
世界を纏うという意味。
創造の力を使える者達が世界自体を盾にする高度な技術。
これにより防御戦術に圧倒的な有利を得る。
更に創造者からの攻撃も自ら創造した世界の何処にでも瞬時に存在出来る為に容易だったりもする。
とても簡潔にまとめるととてつもない範囲のヒット&アウェイともいえる。
ちなみに私の白亜と漆黒は行使力がとてつもなく高範囲である超範囲である為に超絶遠距離でも余裕で届く、結果がこれ。
本当の現実は信じた現実がただそこにあるだけだった。
それはディンは攻撃をくらい悶え、私は無傷だったという結果を生み出した。
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