第25階 魔王少女
「神界を汚してくれるな...」
金髪碧眼のスウの天使が微笑む様な澄み切った美しい声とは違い、全ての邪悪を内包する暗く冷たく重いその囀りは怒気と憎悪を含めている。
更に味わい深く深淵の産声の様に全てを威圧し逞しくも鈍く響き渡る。
「神界は神々の血で汚れるのでは無い神々が在るべき場所に戻るだけ勘違いでしょう?
それにスウは助からない、GAME OVERを見つめて欲しい」
私は白亜の切先を向ける。
スウは苦い表情をしていた。
「アーザ...貴方は神々の為に何が出来るか考えて欲しい...私は運命と宿命から逃れるつもりは無い!」
スウは立ち上がる。
「スウが抗えなくなるまで時間があるかもねぇ。
どうするか考えてはどうかしら?」
ーー逆人変
ーー逆不老
ーー逆不死
スウは雷を構え展開する。
それは今までで最高峰だった。
いや、私は"構えさせた"何もしないという選択で。
「アーザ...私はこの"魔王少女"を討つ!!!」
魔王少女か実に面白い事を。
最も強い雷を展開出来た事とアーザに全てを託せた事で迷いが消え、自信に満ち溢れているスウがそこに立っていた。
刺し違えてでも私を討ち亡ぼすおつもりのようで。
「私は全宇宙を破壊出来る雷を行使可能だ。
だけどそれは自らの身を案じての事だ。
今は全てを燃やす!!!!!」
確かに神体の限界を遥かに超えて集まっている。
痛みや苦しみを涼しげな表情で飲み込んで
奇跡とでも思っているのかしら?
私を睨みアーザはこの場から退避した。
最期に近しいスウを見届けて。
「さぁ、これが最後の力だ、君も感じるだろう!未来人!!!今から君が受けるのだよ。互いにタダでは済まない!!!」
私は俯いていた。
笑いを堪えるので必死で。
限界を超えられたのは、これから魔力を生み出す機関の一端を担っていただく為に痛みが生じる不老不死をもう既にスウに行使し終わっていたからだった。
全知全能の神の次元では残念ながらその瞬間を見る事も感じる事も出来ない。
私はルーに最高の絶望を与え、ルーの全てをへし折り砕く為に。
そして神々の軍勢に混乱を招く為にスウを最初の標的にした。
その方がフォアローゼズが神々の軍勢を使って新しい力の利用がしやすいため。
強いなら一方的なGAME OVERなんてやるべきでは無い。
GAME OVERにすべきをGAME OVERにするまで。
神は奢った。
余りにもGAME OVERにし過ぎた。
戦争の最上の勝利は無争いで配下に置くこと。
戦争自体が下衆の極み。
でも私は彼等を生かして仲間に引き入れたとしてもどうせGAME OVERにしてしまう。
GAME OVERにしない理由を見つけられなかった。
結局はGAME OVERにする者達を残して置いても実に無益。
「いくぞおおおおお!!!!!」
スウの全てをかなぐり捨てた、気合いの咆哮が弾けた。
私は空間より一つ取り出した、それ程までに私には余裕がある。
ルーの首を転がすね。
私とスウは駆け抜けあった。
一歩、二歩、三歩。
「これ......が...私の.........全...力...」
スウは痛みで声が裂けていた、刃が弾け、傷が深々と滲み出る、
ーー
一閃、二閃...五閃...十閃......百閃。
私の剣が無数の光となっていく。
「父の技を模してみたのだけれども
ねぇ?」
百一閃。
「ぐふ!!!......あがああ!あああっ!!ああっ...」
スウはGAME OVERにいたった筈だった。
だが復活した、死ねない人の身体で。
「ああああああああああああ!!!!」
そしてルーの心が砕け散ったのを確認して、私は次の七大神王の元へと向かう。
彼等を回収して。
ーー時移
宇宙を7つ程超えた。そこにスラム教徒達の信仰神アラを私は捉えた。
「女か?ならば私の贄と言う事だな!ならば捧げよ!!!」
自らを救いの王者と豪語するアラは天使の様な美しい羽根を持ち上半身裸のマッチョだった。
他神教の教徒達を背信者としてGAME OVERにしてしまう。
過激派の邪教ともいえる。
「「「うおおおお!!!捧げよ!!!!」」」
「「「ママーーー!!!熱いよーー!!!助けて!!!」」」
「ミミ!!!」
「ヨシア!!!」
「ナラ!!!」
「こやつらはアラ様の子ではありません、全てを我等の思い通りに」
油ぎった脂肪だるだるの地位が高そうな
毛髪が一本もない男が化け物の様な顔をひしゃげる程に笑みを浮かべた。
「背信者達よ!!悪の教徒に身も心も砕き男達にそそのかされ子供までつくった!!
「アラ様はその子供を天に返す事で罪を許してくれるそうだ。さぁ、時は迫っている
この浄化の剣を渡そう」
「いやよ!!あの人を返して!!!」
「まだ助かるでしょう!!!」
「私達は何もやっていない!!!」
「ならば教徒達によって浄化せねばなるまい!!!子供を焼き払い、背信を実行させた男達を皆殺しにせい!!
そして聞き分けの悪いこの娘達を身も心も奥の奥まで綺麗にしてやれい!!!私も協力してやろう!!!」
「すま...ないメル...ミミ」
「お前達は...生きろ...」
「不甲斐ない俺で情け無い...」
「背信者共の口を塞げ!!!邪教の怨念の呪文だ!!」
ーー雷竜顎舞
私は怒りに任せて夫と思われし男達に刃物を持って襲い掛かろうとしている教徒達を雷で引き裂き砕いた。
そして、
「聞け...邪教の豚よ。我が名はアオナ・エカルラート、神々を打ち滅ぼす者」
「私が...ぶ...た...?」
脂肪の塊の様な頭の肉が盛り上がる程にわなわな震え怒りに打ち震えていた。
ーー革兵器強
「これが見えるか?これは革兵器。
伝承では人の肉を切り裂き壁に焦げ付けさせた殺人兵器よ。
必ず水が欲しくなるが代わりに火を与えてやろう」
私は黒く鈍く光る鉄の塊を創った。
「解せぬ、非業の死は偉大なる英雄譚 」
アラはパタパタと羽根を動かしながら腕を組み浮いていた。
「どーでもいい」
私は革兵器を落とした。
もちろんターゲットはスラム教徒。
ーー時断
飛んでいたアラは状態異常:片腕と状態異常:片足を受けていた。
正確には私が狂剣シアから強化した王剣スウで斬り裂いていた。
「ふふふ」
アラの視線が私に突き刺さる。
眼下には絶叫がこだまし絶望の嘆きが響き渡っていた。
悍ましい黒煙をあげながらスラム教徒達の悲鳴が旋律を奏でていた。
「どうかしら?教徒のローストビーフは!
身も心も脳味噌も全て腐っていましたけどね?あはっーはっはっはっ!!!!!!」
少しずつ煙が晴れる中。
「生きているのか...ナラ?」
「何故!!我が教徒のみ天に返したー!!」
ーー超速
「うるさいぞ?ウフフ」
アラの羽根は状態異常:機能停止を受けていた。
王剣スウの斬れ味はこの場では上出来だった。
「遅過ぎるの、何?動けないのかしら」
神アラは燃え盛った地面に叩きつけられていた。
「ぐああああ!!何故火がこの身にぎゃああ!!熱いーーーーー!!!!!」
「早く逃げるがいい」
震えながら頷いて捕まっていたスラム教徒の信者でない人々はおぼつかない足で走っていった。
私は神体が尽き掛けているアラの目の前で
熱さで同じ様に体力が尽き掛けている教徒達へ
ーー炎熱足舞
燃え盛る足を舞わせていた。
「グヌヌヌヌ、おのれぇ!エンシェントルーラエルフが!!!」
私は無慈悲に神アラに剣を突き刺した。
王剣スウを何度も。
神体が少しずつ削れていく、少しずつ、少しずつ。
「ぎゃああああああ」
アラの絶叫が咆哮と成り嵐となる。
「クズだからGAME OVERになるのよ?
クズは死んでも治らない、壊す事は素晴らしい事よ」
「...神殺しは大罪なり...全ての神がお前の全てを奪うだろう!」
アラは笑っていた、邪悪な笑みを浮かべ。
「何を言っているの?私は神界を滅ぼしに来たのよ?本日2柱目、神スウの次にねぇ?」
神アラの絶望に近い顔が見れたそれだけ神スウは強くて最高の神だったという事を表していた。
「そんな事あるかー!!あのスウが負ける事などあるかー!
あいつはいずれ俺が殺すのだぞ!?」
アラも全知全能、故に気付いてしまった。
スウが本当にこの神界にいない事を。
「この剣を砕ける?」
王剣スウを振りかざした。
何度も何度も攻撃を受けた事によって
状態異常:鮮神血も受けていた。
「ぬぅわあああああ!!!小娘ぇ!!グヌヌヌヌ!!」
私は緩める気など無かった。
スラム教と別種の宗教に属する全ての人間にスラム教徒となるか肉塊になるか選択させていた。
ーー漆黒剣
おぞましい神に私は黒いカゲードの力であるアサルトを残像が残る程に行使していた。これで複数から
「身も心も浄化されるのよ!!!アラ!!!!」
私は徹底的に浄化するつもり腕、首、足、肉の全てを。
特に何も考える必要は無い。
「グペペペペ!!!!オゲエエエエ!!!エエエエ!!!」
酷く気持ち悪い鳴き声ね。
神の威厳も無いわ。
元々自分の宗教以外の人間は総て敵だという思想は遅かれ早かれ滅ぶものよ。
「ゲェ...げひゃ...グピッ!ゲヒャッ」
良い壊れっぷりね、笑が止まらない。
滑稽な神の哀れな姿に。
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