村内の交通インフラを作ろう1

ドグラスさん、ドラムスさんが率いるドワーフの酒造チームがあれやこれや言いいながら構想をまとめている頃、ドワーフ達の現れた結界の逆側ではラシンさん、アスタとドワーフ数名が集まっていた。


「えーと、それでデスネエ、鉄道というのは鉄で出来た線路という長い枠の上をすべるように動く鉄の乗り物デシテー、馬無しの大きな馬車をたくさん繋いだものなのデス・・・・・」


「うーーん?よく分からんが、そんな重い物を馬が引けるわけなかろうて。

どれ竜にでも曳かせるのじゃろかのお。」


「なに!!!ここには竜がおるのか!!!そんな恐ろしい所じゃと。」


「いやいや言葉のあやじゃ。本当に居るとは言っておらんじゃろ。」


「じゃあ何が引いておるのじゃ?のおラシン殿。」


「ドレミド殿、それがデスネ、何者も曳いていないのです。長く繋がれた馬車がそれこそ竜のように勝手に動いているのです。


そしてその中にはこれまで見たことも無いような数の人間が乗ってイマス。」


「何!!!竜に人間が食われているだと!!!」


「いえ、喰われているノデハナク、駅と言われる決められた場所で自由に乗り降りしているノデス。」


「そ、それではこの世界の人間は竜を手なづけて移動手段にしておるというのか!!!」


「そ、それはトンでも無いところへ来てしもうたわ。どうするのじゃ。」



ドワーフ達の勘違いがどんどん膨らんでいき、やがて生物最強である竜を思いのままに操る人間像へと膨らんでいた。


それは同時にこの世界の住人であるヒロシ達への恐怖へと変わりつつあり、今まさに大きなうねりへと発展しそうな勢いに、対人関係に問題のあるラシンさんもあたふたするばかりであった。


「こ、これを見て下さい!!電車は竜ではありません。鉄で出来た車デス。」


それまでおどおどしながら黙って見ていたアスタが大声を出して必死にドワーフ達に訴えかけたのだ。


「竜ではないのです。電気というエネルギーを利用してモーターを回し、それを動力として動いているノデス。


ほらこんな感じで。」


携帯型のネット端末の映像を壁に映してアスタは必死に説明している。


「電気とはなんじゃ?」


騒ぐドワーフ達を制し、ドレミドさんがアスタに厳しい視線を向ける。


「電気トハ、電気トハ雷のようなものです。この世界では雷のような電気というモノを大量に作り出し、それをモーターという機械に入れることにより電車の車輪を動かしているノデス。」


電気の作られる仕組みや電車の内部構造を壁に映しながら懸命に説明するアスタ。


その姿勢が恐慌状態であったドワーフ達を次第に落ち着けていき、やがてその関心は竜から電気、そしてモーターへと変わっていく。


「そのモーターというモノと電気というにはここにあるのだろうかのお?」


「あります。電車の小型のおもちゃデスガ、電気とモーターでたしかに走っているノデス。」


アスタはそこに居る全員を引き連れて図書館に向かう。


入り口に入ったところでミーアがいた。


相変わらず昼寝の真っ最中かと思ったが、今日は珍しく館内の掃除をしていたようだ。


「アスターー、皆んなーー、どうしたのーーー?」


「ミーア様、あのー、この前ヒロシ様に買って頂いた鉄道の模型を皆に見せたいんデスケド、良いデスカ。」


「あったりまえじゃーん。アスタ達の為にヒロシが買ってきたんだからさあーー。


さあ、奥で組み立てようぜーーーー!」


「早く、早くーー」とミーアは皆んなを引っ張るようにして奥の資料室へ連れて行く。


そして魔法を使って棚の上から大きな箱を下ろすと、アスタに組み立てるように促す。


「僕さあー、あんまりよく分かんないからさー、アスタ得意でしょー。」


大きな上箱を開けるとそこにはNゲージの線路や信号機、そして大量の電車模型が入っていた。


このNゲージは、村に鉄道を引きたいと言ったアスタの言葉に感動したヒロシが特別に取り寄せたものだ。


2045年になってもNゲージは根強い人気を誇るが、アスタの為に蒸気機関車から現在の電車まで様々な時代の車両を大人買いしていたのだった。


アスタは大事そうにそれを一つづつ丁寧に組み立てていく。


「やっぱりアスタが一番上手いよねーー。」


懸命に模型を組み立てるアスタ。


その様子を興味津々に見守るドワーフ達。


「俺達も手伝っていいかのお。」


「一緒にやりまショウ。」


ドワーフ達の力も借りてどんどん線路が組みあがっていく。


残念ながら不器用なラシンさんは手伝わせてもらえなかったようだけど。


やがて資料室いっぱいに鉄道模型が設置された。


そして電源を投入、最後に3Dプロジェクタの電源を入れると、そこにはアスタ達が見学に行ったあの駅の光景が立体映像として線路全体を包み込み、さながら本当の鉄道と見間違うかのような光景が広がる。


「おおおおおーーー!!!」


何の力も借りずに力強く走るNゲージの電車を見ながらドワーフ達はその光景に釘付けになっていくのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る