新しい住人
ミーア率いる電車軍団が飽きもせずに何度も目の前を過ぎ日も暮れかけた頃。
初めての収穫祭にハシャギ疲れたエルフ達が出始めたのを合図に収穫祭はお開きとなった。
途中で妊娠中のヘレナさんが産気づくというハプニングもあったけど、無事に収穫祭を終える事が出来たのは良かったよね。
ちなみにヘレナさんは無事に可愛い男の子を授かつてなにより。
精霊の加護で子供を授かると言われるエルフ。
元々お腹の張りが目立たないから、妊娠してもあまり気付かない。
驚くことに妊娠症状の軽い人は本人でさえ妊娠したことに気付かない人もいるみたいだ。
まあ日々ギリギリの中での生活を余儀なくされていたのだろうから、多少の身体の変化に構ってはいられなかったのかもしれないが。
ヘレナさんもつい1ケ月ほど前に妊娠に気付いたみたいで、まだ出産には早いだろうと思ってたみたいなんだけど、祭りの興奮の中で急に産気づいたようだ。
まあ、人間と違ってエルフの出産は動物のそれに近いらしいそうだ。
森の中の弱者として時間を掛けられないようになっているんだと思う。
長くても数時間、早ければ30分程度で生まれる場合もあるそう。
ヘレナさんも産気づいてからお湯の用意をしたり、産着の用意をしている間に無事出産。
母子共に健康で、ヘレナさんも出産から2時間後くらいには踊りの輪に加わっていたっけ。
さて収穫祭も終わり、各々家に帰りだした。
「さて、大体片付いたし、ミーア俺達も帰ろうか。」
「そーだねーーー。」
「ムムさーーーーん!!俺達そろそろ帰りますんで、すいませんが後よろしくお願いしまーーーす!!」
「ハーーーーイ!承知しマシターーーー。」
「よし、さあ帰ろう。」
「あのー.... ヒロシ様、少しよろしいでショウカ。」
「あっ、ヘレナさん、レンさん、どうされましたか。
ヘレナさん、先程は大変でしたね。お身体はいかがですか?」
「身体は全く問題ナイデス。お気遣いありがとうゴザイマス。」
「それは良かったです。でもビックリしましたよ。」
「収穫祭の最中にご迷惑をお掛けシテ.....」
何か言いにくそうに言葉尻が窄むヘレナさんにレンさんが口をはさむ。
「ヘレナ、ヒロシ様にお願いがあるのデショ。」
「えっ、お願いですか。 ヘレナさん、何でしょうか?」
「ほら早く言いナヨ」
「ジ、実は生まれた子供に名前を付けて頂きたいのデスガ.....」
「名前ですか。」
「いいじゃん、ヒロシー、付けてあげなよー。」
「ぜひ私からもお願いイタシマス。」
名付けなんてしたことないけど、ミーアに促され、レンさんとヘレナさんに頭を下げられると嫌とは言えない状況。
「わ、分かりました。ちょっとだけ考える時間を頂けますか。名前を考えてみます。」
「「ありがとうゴザイマス」」
2人は嬉しそうに自分達の家に戻っていった。
俺達も家に戻って就寝の用意をしていると、窓の外に稲妻が光り出した。
この村自体は結界に覆われており、雨も雷も入ってこないようになっているため、台風になろうが嵐が来ようが全く影響はない。
エルフ達がやってきて本格的に農業を始めてからは季節や天候の管理なんかも結界内で魔法を使って行っているのだ。
だからなんの問題も無いのだが、少し胸騒ぎがしたのだ。
「ヒロシーー。」
「ミーアも胸騒ぎがするんだね。」
「うん。あの時もこんな感じだったよねー。」
あの時とは、エルフ達がここにやって来た時のこと。
あの時も真っ黒な空に雷鳴が轟き結界を張っていなかった村の敷地に落雷したっけ。
「まあ今回は結界が広範囲に張られているのであの時みたいに雷が落ちることは無いと思うよ。」
「うん、そーだねー。じゃあヒロシー早く寝よー。」
「「おやすみー」」
窓の外には雷の光が差し込んできている。音は完全にふさがれているのだから、カーテンを閉めたら、なんの問題もないはずだ。
俺は胸騒ぎを残したまま、眠りへとついたのだった。
翌日、朝からネットで命名の仕方について研究。
2時間で挫折。やっぱり名前付けなんて無理かも。
しばらくするとミーアが起きてきた。
「ヒロシー、何してるの?」
「ヘレナさんところの赤ちゃんの名付けを考えてた。」
「適当でいいんじゃない。」
「そんなわけにはいかないよ。」
「この世界じゃどうつけるの?」
「最近は多様化してるけど、昔は親の名前を何文字かもらうのかな。」
「じゃあ『ヘレ』までは決定だね。男の子の時は下は何を付けることが多いー?」
「『お』か『た』かな。」
「じゃあ『ヘレオ』にしようよー。良い名前だよー。」
「そんな安直な!」
「へへへ、決まりーーー。ヘレナさんに伝えてくるねーーー。」
「あっちょっとーー!」
ミーアはそのまま出て行ってしまった。
20分後戻ってきたミーアは満面の笑みで「ヘレナさん涙を流して喜んでたよー」って伝えてくれたのだった。
なんとなく腑に落ちないけど、ヘレナさんが喜んでくれているなら問題無いかな。
それから1週間、何事もなく過ぎていった。
「ヒロシ様ーーー!!大変デスーーー!!」
結界の端の方で開拓作業をしているはずのシンブさんが慌ててやって来た。
「どうしましたシンブさん。そんなに慌てて。」
「ヒロシ様ーー!!結界の向こうにたくさんの人間がイマス!!」
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