ヒロシ、山を買ったってよう3
「ミーアどうだい?」
「ヒロシすごいよー。すっかり住めるようになっているねー。」
「後は家具が必要だね。ミーアの部屋はここにしようと思うんだけど家具は何が欲しい?」
「えーっとねー、まずはベットでしょー、それとソファー、机と椅子に茶器を入れるための棚かなー。
ベットはここでー、ソファーはここ、棚は冷蔵庫の隣でー、机は窓際かなー。」
ミーアがあーだこーだ言って考えている間に俺は外で木工ゴーレムを作成し、ミーアが言う通りに家具を設計させる。
「ミーア決まったかい。」
「うん。ゴーレムが描いてくれたくれた通りでお願いー。」
「よし、木工ゴーレム頼んだよ。俺の部屋はさっき言った通りにね。」
木工ゴーレム10体が頭を下げると外に出ていく。
やがて外で木が倒される音が響き、木を切る音、釘を打つ音が響く。
しばらくするとできたばかりの家具が次々と中に運ばれてきた。
「すごーい!みんなで住んでいたムーン大陸の家みたいになったねー。」
「ミーアこの家はね、俺達2人だけで自給自足生活するために作ったんだ。
また2人でのんびりと生活していこうね。」
「うん。ヒロシー、よろしくねー。」
こうして笑顔満面のミーアと新しい生活を送るための基盤となる家が完成した。
「よし、次は農場を作ろう。」
俺は農作者ゴーレムを生成し、農場を作り田畑を作りだした。
こうしてミーアと2人だけの幸せな時間が送れるはずだったのだが。
数日後ヒロシはマンションへと戻った。
一応世間から隔離された生活を作る環境は整った。
しかしまだ日本の国内であり、何らかの事態でヒロシ達がここで生活していることに気付く者達がいるかもしれない。
戸籍を取らないことを前提にこの山を購入、移り住むことにしたのだが、今後ミーアと旅行したり遊んだりするために街に出てきたい気持ちも湧いてきている。
なんせ18歳に若返ってしまったのだから、行動力は充分にあるのだ。
そんなこんなでこれからの人生をこの山中で隠れて過ごすというのも味気ないものだと思い始めたヒロシとしてはミーアと共に日本の戸籍を取得する必要性を感じ出している。
「さてどうしたものか?」
「ヒロシーどうしたんだー?何か悩みでもあるのかー?」
「うーん、日本の戸籍が欲しいなあって思うんだ。ほら、前に海浜公園に行っただろ。」
「うん。楽しかったねー。また行きたいなー。」
「そうだろ。だけどあっちに行くには戸籍っていうのが無いとまずいような気がするんだよなあ。」
「戸籍って?」
「あー、そういやエレメントスには厳密な戸籍って無かったよな。村々では村長が把握していたみたいだけど、町以上になるときちんと管理されてなかったもんな。
戸籍っていうのはね、その国に住んでる人ですよっていう証明書なんだ。
国がきちんと管理していて、何かあったとしても本人の身分確認が出来る大事なもんなんだよ。」
「ふーん。よく分かんないけど、ヒロシにはそれが無いの?」
「俺だけじゃないよ、ミーアも無いさ。
だって戸籍上俺は75歳になっているし、ミーアは元々こっちの人間じゃないからね。
ちょっと前まで猫だったし。」
「そうかー、さすがにヒロシは75歳に見えないもんね。
じゃあさー、作っちゃえばー。」
「そうか作っちゃおーか ......ってそんな簡単なものじゃないんだよ。」
そんな会話をミーアとしている時ふと閃いた。
「そうか、俺とミーアは孤児院育ちで榎木広志の養子になったように申請を出してしまおうか。
そしたら孤児院の職員達の記憶操作を少しするだけで上手くいく可能性が高いな。」
早速手近で小規模な孤児院を探し出した俺はミーアと共にその孤児院に赴く。
職員が4名で子供達の人数も3人。これなら問題なさそうだ。
早速俺は孤児院にいる職員・子供達の意識操作を行い、俺とミーアがそこで育ったこと、榎木広志の養子になることが決まっていること、この2点を刷り込んだ。
「ヒロシ君、良い人に養子縁組してもらえて本当に良かったね。ヒロシ君と仲の良かったミーアちゃんも一緒になんて神様の思し召しとしか思えないのよ。
本当に良かったわ。」
涙声で俺に近づいてきたのはこの孤児院の園長先生。
彼女の記憶には俺が生後間もなくこの孤児院の前に捨てられていて、今までここで育っててきた数々の記憶が植え付けられているのだ。
多少良心の呵責もあるが、悪い記憶では無いので良しとして欲しい。
とにかく園長先生と榎木広志が作成した養子縁組の申請書を市役所の窓口に提出。
そして申請書を入力している女性職員に意識操作を行い無意識の内に入力させたのだった。
こうして無事に俺とミーアは榎木広志の養子として戸籍を得ることができたのだった。
「ミーア、とりあえず2人の戸籍はできたから、これからはどこにでも出かけられるよ。
早速どこかに行こうか?」
「うーんとねー。またあの公園が良いなー。」
「よし、今から行こう。」
「やったー!」
電車に乗って前にも行ったことがある海浜公園に向かう。
ミーアも人間の姿に慣れてきたようで、大人しく席に座っている。
幾つかの乗り換えの末、海浜公園のすぐ近くにある駅に到着。歩いて公園に向かい、前回と同じようにお城に向かう。
もうすぐ夕暮れになる時間に再び上った展望台からは、きれいな夕焼けが見えた。
「......きれいだねー。」
キラキラした目をして夕陽を見つめるミーアの幸せそうな顔を見て、ヒロシも幸せになるのであった。
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