関口 陽(ひなた) (4)

おせ〜ぞ、あと、何だよ、その格好は?」

 三〇分以上経って現場にやって来たランは……青っぽい迷彩風の模様のプロテクター付ライダースーツに、青いフルヘルメット。

 しかも、ヘルメットの目の部分はバイザーじゃなくて、小型カメラになっている。

 ご丁寧に脇にはガンホルダー、足には短剣。

 ついでに、しっかり防護系と隠形系の呪法がかけられてて、並の攻撃呪法なら4〜5発ぐらいは無効化出来そうで、そもそも術者からすると「気配」を補足とらえにくいので、攻撃呪法そのものが命中しにくくなっている。

「そっちこそ、こっちがやったモノに、何、阿呆っぽいペイントをしてるんだ?」

 ランが、ここに来るのに使ったのは、この前の騒ぎの時に、本土の「正義の味方」からもらった三輪バイクトライクだ。

 私のアパートの裏に置いてたんだが……もらった後にやったファイアー・パターンのペイントが気に入らないらしい。

「うるせ〜、こっちの勝手……」

『がじっ♥』

「何だ、今の声は……」

「車載コンピュータのAIを入れ替えた。私が使ってる同じ型のヤツの車載AIのバックアップにな」

「おいっ……」

『がじぃ……』

「ガジくん、このお姉ちゃんは君の事が嫌いなようだけど、気にする必要は無いよ」

『がじっ?』

「わけがわからん……」

「あと久留間さんに頼んで、そっちの『自警団』から、あれを持って来てもらってる」

「あれか……」

「今後、要りそうなんでな」

「あとさ……その服、わざわざ、持って来たのか?」

「何が有るか判らんしな……」

 どうして、単なるバイトなのに、そんなモノを持って来たのか良く判んないが……それはともかく……。

「ところで、これ、何だ?」

 そう言って、私は、トラックのコンテナ内の大量のコンピューターを指差した。

「GPUだな」

「ああ、なるほどGPUか、うん知ってる」

「本当に知ってるのか?」

 横から笹原ささのはらが余計な口を出す。

「ああ、あれだろ……SNSのゲーム中毒者のコミュニティで使われてるネット・スラング」

「……」

「……」

「どうした?」

「私の知ってる中で、一番重症のゲーム依存症の奴でも、もっとマシな答を返すだろうな」

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