高木 瀾(らん) (7)

「おい、どうなってる? 何で、ドローンが『式』や『護法』が向かってるのと同じ方向に向かってるんだ?」

 撮影チームのテントに、関口が慌ててやって来た。

「そっちこそ、どうなってる? さっきまでドツキ合ってたのに、もう仲良くなったのか?」

「誰だ? この生意気なチビは?」

 関口と一緒にやって来たのは……さっきまで関口と試合していた相手。

「頼む……これ以上、話をややこしくしないでくれ……」

「そう言われても……私はいつも通りなのに、何故か、周囲が勝手にややこしい事になっていってるだけだ」

「ああ、判った、話を戻そう……」

「そもそも、見えないんで良く判んないんだが……誰かが呼び出した式神か何かが、あのドローンと同じ方向に向かってるのか?」

「えっ?」

「おい、それらしいトラックが動き出したぞ」

「中継画面も……」

 その時、撮影スタッフから次々と声がした。

「何だ……おい……?」

 当然ながら、関口は状況を把握出来ていない。

「まずは、この生中継動画を見ろ」

 動画は、車の中……おそらくはトラックの助手席……から撮影されていた。

 時折、車の窓ガラスにより屈折・反射した光と……そして、車の窓のフレームが映る。

 そして……。

「何だ、これは……? 霊的なモノを映せるカメラなんて……聞いた事も……」

「いや、待て、これ……変だぞ」

 関口の試合相手は気付いたようだ。

「これ……車の中か? でも、んだが……」

「えっ?」

「見ろ……式神らしきモノは……

「ヒントは……この動画を生配信してるアカウントだ」

「どこだ?……へっ?」

「仮に……『霊を映せるカメラ』なんてモノを作る事が可能だとしても……何で、こんな所が?」

「多分だが……まだ試作品レベルのモノだと思うけど……」

「何だ? もったいぶるな」

「これは『霊を映せるカメラ』と云うより……『霊が見える人間』が見た『霊』の姿を、カメラで撮影した映像と合成する為のシステムだ」

 カメラには式神だか何だかが映っている動画を生配信しているアカウントは……Q大理学部生物学科神経科学研究室……早い話が「脳科学」を専門にしているQ大の研究室だった。

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