第1話

『私さ、辛い事があった時に

いつも考えてる事があるんだよね』

2人でマンションへと帰る途中、急にあの人が言った。

『今が最低、これ以上辛いことってないよなって。そしたらもう後は上がるだけじゃん?

死んだわけじゃない!って』


『はぁ…?』

と呆れて言うと


『そう思った方が楽じゃん?』と屈託のない

笑顔で言うのだ。


『じゃあ、なんで今が最低だなんてわかるんだ

よ』 と気怠げに返す。


『んー、なんでだろ。人生経験の違いかな?』

とあの人は髪を風に靡かせながら蓮華のような

笑顔でくしゃっと笑った。



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