第11話 山賊討伐1
俺も加わった〈肥溜めの指輪〉は笑っちゃうほど順調に依頼をこなしていった。ドラゴが壁役で、ギドーが斥候、ソニアが回復役でルドルフが魔法で強力なトドメの一撃を放つ。
これまでは戦士が1人抜けて攻撃役がルドルフだけになって火力不足だったが、俺が加わることによってその問題は一挙に解決した。
そんな上り調子の俺たちは今、隣村に現れた山賊〈夜の狐〉の討伐依頼に来ている。
シンディからの事前情報では、〈夜の狐〉の構成人数は20人から30人。村から少し離れた山の中に拠点を構えている。
魔法を使う者はおらず、そのほとんどが都市に職を求めて辺境からやって来たが、思うように生計を立てられず落ちぶれた者達と推察されているそうだ。そのため、冒険者崩れの頭領を除いて戦闘に熟達した者はいない。
依頼の達成条件は、〈夜の狐〉の頭領を殺すか、構成員の3分の2を殺せば良いそうだ。ちなみにシンディ曰く殺さずとも生きたまま捕まえて騎士団に引き渡しても依頼達成らしい。人殺しにビビった俺は、山賊をぶん殴って気絶させて
(……俺は極力人殺しは避けたいが、俺以外の〈肥溜めの指輪〉の誰かが山賊を殺す分には別に止めはしない。)
(この世界はそういう世界だと思っているし、仮にも敵は山賊だ。)
(シンディの話では、〈夜の狐〉にも元々は善良な人間だっているのかもしれない。)
(……しかし奴らは、自分の意思で山賊になることを選んだのだ。)
(山賊になって何をしたか詳しい事は知らんが、たとえ殺されたとしても当然の報いってやつなのかもしれない。)
深夜の山の中で息を潜めてギドーの帰りを待ちながら、俺はそんなことを考えていた。ギドーは今一人で〈夜の狐〉のアジトの偵察に出ている。
そうしてしばらく他の〈肥溜めの指輪〉のみんなと会話をするわけでもなく、じっと虫の声に耳を傾けていると、
「チッチッ」
という舌を鳴らす音がどこからともなく聞こえる。ギドーからの合図だ。
「チッチッ」
眠っていたわけではないと思うが、目を瞑ってこれまで微塵も動かなかったドラゴもむくりと起き上がって同じ音で返す。
ちなみにこれは気配を殺したギドーが急に帰ってくると魔物と間違って攻撃してしまう可能性があるので、それを避けるための合図だそうだ。
チッが2回で問題なく調査完了。3回で警戒せよ、の合図としているらしい。警戒せよの合図はギドーが偵察中に捕まり、仲間の場所まで連行されて来た時とかに使うらしい。……そんなケースがあって欲しくはないが。
闇の中からギドーのモヒカンがぬっと音もなく現れる。
(……確かにギドーが急に現れたら魔物か山賊と勘違いするのも無理ないな。)
(……それにしても、ギドーが近くにいることに全く気付かなかった。)
(こいつ普段はアレだが、斥候としては結構優秀なのかもしれない。)
「よぉ、ヤツらの様子は大体分かったぜ」
そう言ってギドーは小声で偵察した結果を俺たちに共有する。
〈夜の狐〉の構成員は約20人で、事前情報と同じだった。テントを複数立ててそこで寝泊まりしているらしい。近くの村から攫われた女が一人いて、頭領に犯された後、別のテントに運ばれて
「作戦は決まったな。まずはクソ頭領がぐっすり眠りこけてるテントに魔法をぶち込むぞ」
ドラゴが間髪入れずにそう提案する。
「あぁ。だろうと思ってじいさんが魔法を打つ絶好のポイントも確認してあるぜ」
そうして俺たちはギドーが持ち帰った情報を元に簡単に作戦会議をした。
その中で、
ソニアは複雑な表情を浮かべていたが、それらについて了承していたようだった。
その後俺たちは、ギドーの案内で〈夜の狐〉の拠点が遠目に見える場所へと移動した。
「あの中心にあるやつが頭領のテントだ。あっちの右端のテントに
ギドーが山賊の拠点を指差してそう説明する。
(
(俺でさえ○ックスしたことないのに、どうしてこんな山賊たちが○ックスしてるんだろうか。)
(なんだか急に腹が立ってきたな……。)
(やはり山賊は根絶やしにすべきなのかもしれない。)
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