第10章 十月十九日(土) 〜 1
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「なんだかさ、記念すべき十回目にしては、集まり具合悪くないか?」
「まあ、みんな何かと忙しいんだよ。おまえさんみたいに簡単にさ、明日、休みますからなんて、なかなか言い出せないのが普通なんだって。だからちゃんと集まるのは、開始ぎりぎりくらいになるんじゃないか?」
向井幸喜の問い掛けに、本田幸一が呆れるように言って返した。
そこは例年より大きな会場で、まだ出席者はパラパラという感じだ。
「そう言えば、奥様連中もまだ来てないね」
「そうなんだ。寄るところがあるって言って、あいつは俺よりずいぶん先に出たんだぜ、でもまあスタートまでは、まだ三十分以上あるからな」
と言って、幸喜が腕時計に目をやった。すると突然、
「おまえたちが、早過ぎるんだろうよ!」
原悠治がそう言いながら、二人の前に躍り出るのだ。そんな悠治の登場に、二人がリアクションしようとしたまさにその時、会場どこかでドッと歓声が湧き上がる。三人は笑い顔を消し去って、声のする方に目を向けた。すると入口付近に女性陣が集まって、何やら口々に言い合っている。中には拍手している者までいて、その先にまで目をやれば、ちょうど入り口に美津子とゆかりがいるではないか。
きっと会場に入ってきたところで、二人も会場の外に何か声にしているようだ。さらに手まで振り上げて、その先にいる誰かに「おいでおいで」を繰り返している。
そうして数秒、新たな人物が姿を見せる。
思わず幸喜がボソッと呟き、それに悠治が即座に続いた。
「おい、なんだあれ? あいつ、クリスマスと間違えてないか?」
「ホントだ……でも、まああれも、パーティードレスって言えば、パーティードレスでしょ?」
「おいおい、小学校の同期会に、パーティードレスでご登場あそばすなんて、少なくとも俺は聞いたことないぜ。結婚披露宴じゃあるまいしさ、なあ、幸一?」
視線はまるで動かさず、幸喜は声だけで同意を求める。しかしそんな問い掛けは、幸一にはほぼほぼ届いていない。頷きだけは返していたが、彼の心には別の言葉が浮かび上がっていたからだった。
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