第9章 もうひとつの視点 〜 1(7)
1(7)
突然会話に割って入り、幸一が真面目な顔してそんなことを言った。そして〝謝罪〟という響きによってだろうが、一同の視線が一様に、なんらかの動きをしっかり見せる。
「謝罪ってのは、ちょっと言い過ぎだな、そう、ある種、罪滅ぼしかな? 罪滅ぼしをしてたって、そんな感じだったのかも知れない……」
そこで少しだけ口角を上げて、幸一は再び美津子に向かって聞いたのだった。
「ねえ、本当に覚えてないの? 次の日にさ、あなた、手紙を回したんだろ?」
『矢野さんへ、突然ごめんなさい』
手紙は小さく折り畳まれて、そんな文面で始まっていた。
そして......家に帰った後、直美の家を訪ねていいかと書かれていた。
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