第93話 詰め替え
魔法が使えない不便な日々がやっと終わった。
心配だったので、結局、治療院の先生に言われた1週間アイテムボックスも創造も使わなかった。
前世ではそもそも魔法なんてなかったはずなのに、一度魔法がある生活に慣れてしまうと、これ程不便なのかと実感した。
もう魔力は暴走させないぞ!と固く誓う
僕は慎重にアイテムボックスのスキルを使う。
異空間?から石鹸などのお風呂道具を取り出す
「問題なく使えるね」
僕は安心する。暴走した結果、アイテムボックスの中身が消えるなんてこともなくてよかった。
僕は前回の失敗を教訓にして、お風呂道具は予備を部屋に置いておくことにした。
他にも普段生活で使うものは予備を出しておく
次に回復魔法を使う。
体から疲れが取れる。元々そんなに疲れてなんていないけど…
暴走した時の回復魔法が問題なく使えるなら、他の魔法も使えるだろう
僕は久しぶりに創造スキルを使おうとする。
日課だった魔力を貯める為でもあるけど、この後お姉ちゃんに会いに教会に行くので、お姉ちゃんの好きな食べ物を準備する為だ。
とりあえず魔力を注ぎ込んで、それから創ろうとして異変に気づく。
今まで貯めていた魔力がなくなっていた。
何か目的があって貯めていたわけではないけど、ショックだ。
お金を落としたような感覚に陥る
でも、へこんでいても仕方ないので気を取り直して食料を創っていく。
創ったものからアイテムボックスの中に入れていく。
元々アイテムボックスに入っていた分も合わせて、お姉ちゃんのアイテムバッグに入るくらいにはなった。
村で別れた時と違って、無くなったらまた渡せばいいので、パンパンになるまで詰める必要もない。これでいいかな。
準備が終わったので、少しゆっくりしてから教会に向かう。
教会に入るとお姉ちゃんとは別のシスターさんが掃除をしていた。
「こんにちは。お姉ちゃん……エレナお姉ちゃんに会いに来たんですけど会えますか?」
僕はシスターさんに声を掛けて、お姉ちゃんに会いにきたと伝える
「エレナちゃんの弟くんね。エレナちゃんなら水やりをやってもらってるわ。教会の裏にいるはずよ」
「ありがとうございます」
僕はシスターさんにお礼を言って外に出る。
教会の裏に周ると、魔法で水やりをしているお姉ちゃんがいた
「お姉ちゃん、来たよ」
僕はお姉ちゃんに手を振りながら声をかける
「あ、エルク。もう少しで終わるからちょっと待ってて」
「手伝おうか?」
「大丈夫よ。私の仕事だからね。それにもうすぐ終わるから」
「うん」
僕は水やりが終わるのを眺めながら待つ
「お待たせ、神父様に言って部屋を借りてくるわ」
僕達は教会の中に入り、お姉ちゃんが神父様に断って、前と同じ部屋を借りた
「どう?魔力は安定した?」
お姉ちゃんに聞かれる
「うん、大丈夫だよ。さっき魔法を使ってみたけど、問題なかったよ」
「そう、よかった」
「アイテムバッグは持ってきた?あれから創れるものも増えたから、お姉ちゃんが好きだった物の他にも色々と創ってきたよ」
「ほんと!ありがとう。はい」
お姉ちゃんからアイテムバッグを受け取る
「多めに欲しいのはある?」
「えーと、お肉!あとはケーキが食べたい」
「ケーキってどれのこと?」
「1つしか知らないけど、他にもあるの?」
「いくつかあるけど、お姉ちゃんが知ってるのってこれ?」
僕はショートケーキを取り出す
「違うよ。それも美味しそうだけど、私が食べたことあるのは茶色のやつ」
「ああ、これね」
僕はチーズケーキを取り出す
「そう、それよ」
「とりあえず、今食べる?アイテムバッグにも入れておくけど」
「うん、食べる」
僕はチーズケーキを机の上に2つ置く
「飲み物はどうする?炭酸って飲んだことないよね?」
「タンサン?」
「とりあえず飲んでみる?合わなかったら他のもあるから」
僕はコップを取り出して炭酸入りのオレンジジュースを注ぐ
お姉ちゃんは一口飲む
「んーー。変わった感じだけどおいしい」
「じゃあ、これも入れておくね。他は何がいい?イモとパン、それからおにぎりは多めに入れておいたけど」
僕はお姉ちゃんが好きだったものを中心にアイテムバッグに詰め込んでいく
「ありがとう。お菓子もお願い、あの口の中でとろけるやつ」
「チョコレートね。わかった。他のお菓子も入れておくから気に入ったのがあったらまた今度教えて」
「ありがとう、そうするね」
「後は石鹸を創ったから入れておくね。こっちが身体用で、この2つが髪の毛用ね。先にこっちで洗ってから、次はこっちね。僕は洗い心地がいいなぁくらいで、そこまで違いはわからないんだけど、クラスの女の子が言うには、洗い終わった後の仕上がりが全然違うみたいだから使ってみて」
「わかったわ。使ってみる」
「後は適当に食べ物以外も入れておいたから、気になるのがあったら使ってみて。使い方がわからないのがあったら、聞いてね」
「うん、ありがと」
「お姉ちゃんは今日はこの後も教会のお手伝いなの?」
僕はお姉ちゃんの予定を聞く
「そのつもりだったけど、特にやらないといけないことはないよ」
「それじゃあこの後、遊びに行かない?遊びに行くっ言っても特に何をするかは決めてないけど……」
僕はお姉ちゃんを遊びに誘う
「いいよ。一応、神父様に確認してからになるけど、多分大丈夫よ」
「本当!やった。何しよっか?」
「それは散歩でもしながら考えましょ。それよりも、エルクに話というか、聞きたいことがあるのよ」
さっきまでとは表情を変えて、お姉ちゃんが真剣な顔で話し出した
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