第36話 遺跡への道

冒険者ギルドで1人で受ける依頼を探していると、面白そうな依頼を発見した。


[スマスラ遺跡の調査]


内容を確認すると新しく発見された遺跡の調査依頼のようだ。

基本報酬はないけど、遺跡内の地図を作って提出すると買い取ってくれるらしい。なにかお宝が見つかった場合も追加で報酬がもらえる。


遺跡は国の所有物となっているようで、お宝の所有権は国にあるらしい。価値によって報酬はもらえるけど、持ち逃げしてはいけないということだ。

国がいらないと判断したものはもらっていいらしい。


ダンジョンだと見つけた物は見つけた人のものになる為、遺跡探索の依頼はあまり人気がないようだ。


たまに宝物庫が見つかることがあるらしく、一攫千金を狙う冒険者が受けるらしい。


僕はクラリスさんの所に受注しに行く


「おはようございます、この依頼でお願いします」


「エルク君おはよう。どれどれ、遺跡探索ね。遺跡に興味があるのかしら?」


「面白そうだなと思いまして、地図も作れるので少しは報酬も貰えそうです」


「エルクくんは罠の発見や解除は出来る?出来ないなら遺跡は危険よ。ダンジョンも罠があるけど、遺跡は人口の罠が仕掛けられていることがあるから思わぬ罠に掛かる人がいるの」


「えっと……あ、大丈夫です。」

創造で問題なく創れそうだ。


「なんか心配な間があったけど、本当に出来るの?」


「出来ると思います」


「そう、危なそうなら早めに切り上げるようにしてね。違約金とかはないから」


「そうします」


「あと、遺跡は結構離れているけど学校は大丈夫なの?」


「今週はチームの授業はないので大丈夫です。学院に提出する紙だけ出してもらっていいですか?」


「はい、これね。距離的に1週間くらいね」

クラリスさんから学院に提出する課外活動の証明書をもらう


「ありがとうございます。では学院に寄ってから行ってきます」


「気をつけてね」


僕は学院に行き、担任の先生に証明書を渡す。


「冒険者活動もいいが、あまり学業が疎かにならないように気をつけろよ」


「はい、ありがとうございます」

無事受理してもらえたので、遺跡に向かう為に馬車乗り場に向かう。


遺跡の近くまでは馬車で移動して、そこからは歩きになる。

遺跡探索依頼の人気がない理由の一つがこれである。

大体遠方にあるので、移動に時間とお金がかかる割に、地図の報酬だけだとほとんど馬車の代金に消えるのだ。


馬車を待ちながら僕はスキルを創造する

「罠感知」と「罠解除」のスキルだ


罠に限定したので、必要魔力は少なかった。遺跡に着くまでには創れそうだ。


馬車が来たので運賃を払って乗る。

遺跡近くに着くのは明日の昼を予定しているので、途中の村で一泊する予定だ。


旅行に行くみたいでわくわくする


「君も1人なの?」

スキルを創っていたら、隣に座った女の子から声をかけられる。

10才くらいかな。どこか気品があるように見えるけど、貴族だったら乗り合い馬車には乗らないよね…

どこかで見たことがあるような気がする……いや、気のせいかな


「そうだよ」


「おつかい?まだ小さいのに大変だね」


「違うよ。僕これでも冒険者なんだよ」


「嘘だー。君みたいに小さい子が冒険者なんて」


僕はギルド証を取り出してみせる

「ほら、本当でしょ?」


「……本当に冒険者なんだ。すごいね」


「そんなことないよ。冒険者に知り合いがいただけだから」


「それでも、すごいと思うよ」


「そうかな…ありがとう」

僕は照れる


「それじゃあ、これから依頼に行くの?」


「うん、そうだよ。遺跡探索の依頼を受けたんだ」


「そうなんだ、遺跡ってどんな所なの?」


「遺跡に行くのはこれが初めてだから僕も知らないよ」


「え、そうなの?1人で大丈夫なの?もしかして現地で誰かと落ち合うの?」


「探索に便利なスキルを持ってるから大丈夫だよ」

まだ創ってる最中だけどね…


「気をつけてね」


「うん、ありがとう。君はどこに行くの?」


「おばあちゃんの家に行く所なの」


「そうなんだ、遠いの?」


「明日の夕方には着く予定だよ」


「結構遠いね」


その後も他愛もない事を話しながら進んでいく。

馬車の中はやる事がなかったので、話し相手が出来て良かった。


しばらく進んだところで急に馬車が止まった。

トラブルだろうか


僕は馬車の隙間から外を覗く。

外に武器を持った男が3人見える。

10人くらいに囲まれているのかもしれない。

盗賊かな?

馬車の中がパニックになる


「落ち着いて下さい。俺達が守りますので」

馬車に乗っていた護衛の冒険者パーティが外に出る


パーティはベテランっぽい4人パーティだけど、人数的に不利だ。


「なんで……私のせいなの……?」

隣の女の子も様子がおかしい。

何故か自分を責めているようだ


出来ることは少ないけど、僕にも出来る事はある。

僕は周りの制止を無視して外に出る。


予想通り、力量は冒険者の方が高そうだけど苦戦している。


僕は護衛の冒険者さん達に身体強化魔法とシールドを掛ける。


これ以上出来る事はないな。少しでも力になってればいいけど……


捕まったりして、邪魔をしてもいけないので僕は馬車の中に戻る。


それから少しして、外が静かになる


「安心してくれ!盗賊は全員倒した」


冒険者の男性が乗客に向けて報告する。

馬車の中は歓喜に包まれる


良かった。


「ありがとうございます。回復魔法使えるので怪我を治しますね」

冒険者の人達はひどい怪我をしていたので僕は治すことにする


「ヒール」


「…!スゴイな、ありがとう。助かったよ」

男性にお礼を言われる


「いえ、戦ってくれなければ皆死んでましたから。お礼を言うのは僕の方です。ありがとうございました」

こんなにボロボロになりながらも守ってくれたこの人達は立派だな。僕が同じ状況になったら戦えるのかな…?


僕は隣の女の子に声を掛ける。ずっと震えている

「もう大丈夫みたいだよ。護衛の人が倒してくれたよ、スゴイね」


「う、うん」

やっぱり様子がおかしい


「なにか気になることでもあるの?」


「ううん、大丈夫。なんでもないよ」

明らかに何かを隠してるけど、言いたくないなら聞かない方がいいだろう


「そっか」


その後は何も問題なく、遺跡近くの村に着く


「それじゃあね。話し相手になってくれてありがとう」

僕は女の子に別れを言って馬車を降りた


さて、遺跡まで後少しだ。

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