第34話 お宝発見!

ダンジョンの中でダイスくんが突然姿を消した。


「だ、ダイスくん!どこにいったの?」


「え、どうしよう。」

周りを見渡すけど、人影は見当たらない。


「もしかして、ダイスくんは魔物に食べられたのかな?」


「怖い事言わないでくれよ」


「うわっ!驚かさないでよ。どこに行ってたの?」


「悪い悪い。それよりも階段見つけたぜ」

ダイスくんがダンジョンの壁を叩くと壁がぐるっと回った。そして、ダイスくんは壁の向こうへと消えていった


これ、前世で見たことある。カラクリ扉だ。


僕も同じように壁を叩く。

そしたら壁の向こう側に行く事が出来た。

階段しかない、狭い部屋だ。

隠し部屋かな


「置いてかないでよ」

少ししてラクネもやってきた。少し怒っているようだ。


「ごめんね」

僕は謝る


「降りてみようぜ!エルクの言ってた通りなら宝があるはずだ。これでプラス評価だな」


階段を降りてすぐに宝箱があった。


「よっしゃ!宝箱だ。しかも3つもある」

ダイスくんは3つとも開けるつもりのようだ


「だめだよダイスくん。今回の訓練の皆の報酬なんだよ。多分先着3組までなんだよ」


「そんな事、先生は言ってなかっただろ?1チーム3人だから3つかもしれないだろ?」

……たしかに


「そうかもしれないけど…」


「エルクがいらないなら俺が2つ貰っちまうぜ。ラクネはどうする?」


「私は……欲しい」

ラクネはこっち側に付くと思ったのに……

まぁ、ラクネが開けなくてもダイスくんが3つとも開けたと思う


「僕もやっぱり貰うよ」


「だよな。開けるよな。誰がどれを開けるか決めようぜ」


僕達は開ける宝箱を決める


「何が入ってても恨みっこなしな。せーので開けようぜ!」


「「「せーの!」」」


パカっ!


僕の選んだ宝箱には剣が入っていた。

微妙だ。なんだか高そうだけど、剣は使えないからいらない。


ラクネの方を見ると鎧を持っていた。

ラクネも反応に困っているようだ。ラクネも鎧使わないからね


ダイスくんの方を見ると兜を持っていた。

ダイスくんは少し嬉しそうだけど、僕の方を羨ましそうに見ていた


結局、宝箱の中身は騎士セットのようだ。

3つで1人分だ。


僕が剣を眺めていると、ダイスくんが難しい顔になった


「エルクすまない。少しその剣を見せてくれないか?」

僕はダイスくんに剣を渡す


「やっぱり……紋章は……」

ダイスくんが何かブツブツと言っている。


あっちの世界に行ってしまったようだ。そっとしておいてあげよう


「ラクネ、お菓子食べる?」


「食べる。ありがとう」

僕はラクネにクッキーを渡す


2人でもぐもぐしているとダイスくんが戻ってきた


険しい顔をしている


「そんな顔しなくても、ダイスくんのもあるよ」

僕はダイスくんにクッキーを渡す


「そんなつもりで見てたわけじゃない」

そう言いながらもダイスくんはクッキーを食べる


「水はいる?」


「ああ、ありがとう」

クッキーを食べて、水も飲んで落ち着いたようだ。


「頼みがあるんだが……」


「なに?クッキーならまだあるよ」

大体わかるけど、一応聞く。茶目っ気をいれて


「クッキーはいらん。……いや、うまかったから分けてくれ」


僕はクッキーを渡す


「そうじゃなくて、あの剣と鎧を譲ってくれないか?」


「いいよ」

「……はい」


「え、本当にいいのか?」


「僕は使わないから、別にいいよ」

「私も鎧は付けないので……」


「……ありがとう。多くは出せないけど、俺に出来る限りでお礼はする」

すごく申し訳なさそうにお礼をされる。

王子だけど、お金はないのかな?

隠している事と関係があるのかも知れない


「無理しなくていいよ。どうせ使わないものだからね」

「私もです。使いませんから、同じチームのダイスさんが欲しいならもらってください」


「……2人に聞いて欲しい話があるんだ」

ダイスくんが急に真剣な顔をする


「なに?」

さすがに茶化したらいけないことはわかる。


「実は俺の母上が――――――」


ダイスくんから聞いた話は衝撃だった。


「そんな状態なのに僕なんかとチーム組んで良かったの?もっと強い人と組んだ方が良かったんじゃ…」


「この話は貴族の連中は皆知ってるんだ。だから俺とは距離を置いている。一応緘口令は出てるんだけどな。平民は貴族と距離をとりたがるし、エルクが声を掛けてくれて本当に良かったと思ってるよ。もちろんラクネにも感謝している」

そういうものだったのか。


「なんで話してくれたの?ずっと隠してたのはこの話なんでしょ?」


「2人はこの話を聞いても変わらずに接してくれると思ったからだ。現に2人共、俺を心配してくれている。他の連中は離れていくか、哀れみの目を向けるだけだ。」


そういうものなのだろうか……

クラスメイトが、しかも同じチームの仲間が困っていたら手を貸したいと思うのが普通だと思うけど……。

王子だと、色々としがらみがあるのかも知れないな。


「僕に出来ることがあったらなんでも言ってよ。何が出来るかはわからないけど手を貸すよ」


「私もです。ダイスさん、いえダイスくんの力になりたいです」


「……ありがとう。必要な時はお願いする。それにもう大分助けてもらってる」

ダイスくんは泣きながらお礼を言った。

なんのことだろうか?チームを組んだことかな?


ダイスくんが落ち着いた所でダンジョンから出ることにする。


「サウス先生、戻りました」

ダイスくんが先生に報告する


「遅かったな。どこまで行った?」


「10階層で宝を手に入れてきました」


「さすがだな。見せてくれ」

ダイスくんは宝箱に入っていた騎士セットを見せる


「これは?」


サウス先生の表情からすると、予想していた物とは違ったのかな?


「10階層の宝箱に入っていました。この紋章を見て下さい。サウス先生はわかりますか?」


「……見たことないな」


「それでは学院長に見せてください。きっと喜んでくれますよ。チームとして良い評価を期待しています。この装備はこのチームだから獲得できたものですので。」


「学院長に確認して、相応の評価をすると約束しよう。悪いが後で学院長の部屋に私と一緒に来て欲しい」


「……わかりました」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る