仲間

第1話

 ククイの村を出た2人は街道を西に進みラウダーの街経由で王都に戻ってきた。王都を出てから半年と少しの時間が経っていた。


 王都郊外の家に戻るとまずは師と仰ぐ大木に旅の報告をする。2人からの報告を聞いた大木。


『森でレスリーのスキルが上がったのは自然界にとって良いことをした結果だ』


「ありがとうございます」


 報告を終えた2人は久しぶりの我が家で旅の疲れを取る。大木の精気で家の中の空気は澱んでおらず新鮮なままでゆっくりとして疲れをとった2人は翌日徒歩で王都に向かった。


 城門から王都に入ると多くの人が通りを行き交っており活気にあふれている。


「やっぱり人が多いね」


「そうだな」


 そんな話をしながら2人はまずは王都のギルドに顔を出した。そこでギルマスに面会を求めると受付嬢が2人を奥のギルマスの執務室に案内する。朝のピークの時間を外していたのもありギルドの中は閑散としていた。


「2人とも元気そうじゃないか」


 ソファに座るなりギルマスのアレンが声をかけてきた。


「おとといまでドーソンとホロ、ラウダーに行ってたの。ここに帰って来たのも半年ぶりくらいよ」


「相変わらず国中を歩き回ってるんだな」


 レスリーが頷き、続けて、


「ギルドとしてランクAの冒険者に対しては指名クエストを指示することができる。俺達はそれを免除してもらっているからその分仕事をしないとな」


 王家からギルド本部に対して、レスリーとアイリーンの行動については王家として保障しており彼ら2人が国内で活動する際にはその行動に制限をかけていない。ギルドにおいては各地のギルドで必要があれば彼らに協力してほしいとお達しが出ており国内にある全てのギルドのギルドマスターにはその通知がなされている。従い目の前に座っている2人はランクAでありながら他のランクAとは違った立ち位置にいる冒険者だった。


 そしてギルドではこの2人が今まで国内で行ってきた数々の偉業についても各地方のギルドから詳細な報告が上がってきている。村の再生や用水路の施設など。その中でも最大の功績はホロから南に伸びている街道の完全修復だろう。


 ホロのギルドマスターの報告が本部経由で来た時は最初は信じられなかったくらいだ。その後冒険者達からも情報を集め街道の完全修復がなされて人や荷物の往来が増え街道沿の村に活気が出てきたという報告を聞いて本当だったのかとやっと理解する。


 最新のレポートはまたホロのギルマスから上がってきていた。目の前に座っている2人はドーソンからホロまでの森の中を抜けてきたらしい。その森の様子も2人から報告を受けたドーソンのギルマスからレポートが上がってきていた。ランクAとSしかいない森を3ヶ月近くかけて踏破するなんて目の前の2人しかいないだろうと思っているアレン。


「それでしばらくは旅にはでないのかい?」


「少し休んでからまた出るつもりだけど帰ってきたばかりだし、数ヶ月はここにいるかも」


「わかった。お前さん達は何をしても問題ない。まぁ王都を出る時に一言声をかけてくれたらそれで構わない」


 ギルマスとの話を終えるてギルドを出た2人は王都市内の通りを王城に向かって歩いていた。通りの左右には様々な店が軒を連ね市民や冒険者達がそれぞれの目的の店の前で店員や友人同士で話をしている。


「久しぶりの都会だけど、アイリーンが欲しいのがあったら買い物に付き合うよ?」


「最後に食料品と調味料を少し買うくらいかな。他には特に要らないわね」


 左右に並んでいる店舗を見ながらアイリーンが言うとわかったとそのまま商業区を抜けると王城のある貴族区の門に着いた。閉まっているゲートの脇にある詰所から衛兵が2人出てきたがレスリーとアイリーンを見るとそのままゲートをあげる。2人は少しずつではあるが顔が売れてきていたのだ。


 礼を言ってゲートを潜るとゆったりとした敷地の中にある王城を目指していき、王城に入る門に着いた時にも衛兵が2人を認めてそのゲートを開けてくれた。


 そうして王城の敷地の中に入るとそこにある1つの建物の中に入り受付に近づくと、


「こんにちは。アイリーンとレスリーです。リムリック王子にお会いしたいんだけど」


 といきなり用件を切り出すアイリーンだが、受付にいた執事の様な男はすぐに畏まりましたと言うと大きなノートを広げてパラパラを中を見てから顔を上げ


「ご案内いたします」


 そう言うと同じ建物の中にいた王城守備隊の騎士が2人近づいてきて


「ご案内いたします」


 と彼らを先頭にして城の中に入っていく。


 2人の想像以上に2人の名前と顔は貴族区や王城では売れていた。2人が国王陛下から王家のお墨付きの手紙をもらったことはすぐに王城に勤める関係者及び王城での警備全体に責任を持っている王城守備隊にも連絡が入り、そしてその後再び国王陛下とリムリック王子の2人からレスリーとアイリーンについてはいつでもアポイント無しでの入城を認めるとの通達があったためだ。


 この通達を受けた王城守備隊はリムリック王子とマリアの結婚式に参列したレスリーとアイリーンの顔を守備隊全員が覚える様に指示をする。その結果この2人は王城をまるで友人の家を訪ねる感覚で訪問することができる様になる。


 守備隊の騎士について城の中を歩いた2人はとある部屋に案内される。部屋の扉を開いた守備隊員が


「こちらでお待ちください」


 礼を言った2人が部屋にはいると広い造りの部屋の中に大きめのソファがいくつも並んでいた。


 ソファに座っていると扉を叩く音がしてすぐにマイヤーが部屋に入ってきた。


「久しぶり」


「久しぶりね、マイヤー」


「久しぶりだな。相変わらず2人とも健康そうだ」


「外を歩き回ってるからな」


 再びソファに座ったタイミングで給仕が部屋に入ってきて果実と果実汁をテーブルの上に並べていく。そして部屋を出ていくと、


「そっちは忙しいのかい?」


「毎日打ち合わせや勉強でクタクタだよ」


「でも充実してそうな顔してるじゃない」


 アイリーンの言葉にニヤリとして実はそうなんだよ。政の勉強が思いのほか楽しくてさと答えるレスリー。


「学生時代からそうだっよね、口では辛いとかもう止めたとか言いながらさ本当はガッツリ勉強してたもの」


「ところでこの部屋は?」


 レスリーが聞くと


「ここはリックがプライベートで友人と会う部屋だよ。もうすぐマリアと2人でくるだろう」


 マイヤーそう言ったすぐ後に扉が開きて


「リムリック2世王子とマリア様がお見えになりました」


 とドアの外に立っていた守備隊の兵士が部屋の中に声をかけ、その後ろからリックとマリアが部屋に入ってきた。

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