第3話 - 2階 -

外壁は真っ白、濃い琥珀色というかコーヒー色に近い一階正面のガラス。

 上の階も同じガラス。

 なんかコーヒーゼリーみたいだ毎回来るたびに思う。

 ジワリと汗ばむ。日差しは強いが、夏はまだ、気温は高くはない、上がり始めた湿度と風の無い今日のような日は、少し体が本調子になりきれない。


 このビルの中に入ってるのは、金融会社や社名を見てもよくわからない会社と、しょぼいゲームセンター。

 部活の無い日や休日、仲間たちとここのゲームセンターによく来ていた。

 四台しかない対戦ゲームが中央にあって、近隣の子たちとそれを囲んで盛り上がったり、奥の角に設置された椅子二つしかないテーブルで自販機のカップラーメンを食べたり、壁際にある麻雀やってるサラリーマンを後ろから覗いたり。


 今日は部活という気分でもなくて、なんとなく歩いてたら、いつものビルの前に来ていたという具合。

 このビル、誰が見つけたのか分からないが、ゲームセンターに来ている人でも一部の数人しかしらない、 特別な場所がある。

 それが、屋上。特別なものが何があるわけではない、六階建てのビルの屋上。柵で囲われたコンクリの床が広がっているだけ、正面の駅から伸びる広い道路に沿って土産物屋や個人商店が並んでるのを見下ろせる。さらに先には八階だけのデパートが建つ、二階しかちがわないのに倍も大きく見える、実際体積だと何十倍もあるのだろうし、二倍は無くても相当大きい。ずっと先に地元の名山が小さく見えてたのだが、市役所やら何やらが建って今は見えなくなってしまった。

 ビルの裏側には住宅が並ぶ。ここからは町が見えた。

 通行人や街並みをぼんやりと眺めるのが好きだった。


 この屋上、知らない人が多い主な理由は、黄色と黒の縞のシャツを好んで着るパンチパーマできんきらの腕時計をした、全力でヤクザアピールをしてる人が出入りしてて、みんな違うフロアに近寄らなかったからだと思う。

 逆に度胸試しでフロアを回った人が、いたのかもしれないが、特に誰かに聞いたりはしなかった。

 「俺たちもやってみようぜ」って言いそうな奴らが何人かいたから。

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