第17話 大精霊様
「………っは!」
完全にのみ込まれる寸前のところで、俺は正気を取り戻す。
どうやら、我が子の可愛さにあてられ、己を見失っていたようだ。
――当然、俺が全ステータス1の雑魚どもをを育ててやっているのには理由がある。
こいつらを立派に育てて、俺の身を守る盾とするためだ。
HPが0になったら死ぬこの世界、肉壁は多ければ多いほど良い。
俺を慕い、俺の後をついてまわるこいつらは、肉壁として適任なのだ。
フハハハハハッ!
……べ、別に情に
「と、とにかくご飯にするぞ。ごくつぶしども!」
俺はそう言いながら、集まってきた謎の幼体たちにスライムの肉片を配る。
……ブーメラン? 何のことかな。
「はむはむ」「もぐもぐ」「ぱくぱく」「むしゃむしゃ」「バリバリバリッ! ぐしゃッ! ぼりぼりッ!」
それにしてもこいつら、小さいくせによく食べるな。なんか明らかにスライムじゃないもん食ってる音出してる奴もいるし。
――こんだけ食ってるんだから、少しは強くなったのだろうか。
俺はふとそんなことを考え、適当な奴一人に『鑑定』を発動した。
*ステータス*
名前:なし
種族:謎の幼体
性別:不明
年齢:0歳
Lv:1
HP:1/1
MP:1/1
STR:1
INT:1
DEF:1
MDF:1
スキル:なし
耐性:水耐性、氷耐性、炎耐性、雷耐性、毒耐性、塩特効
……ここまで1ばかり並んだ雑魚だと美しさすら感じるな。
――それに、強くはなってないが何やら耐性が増えている。
スライムの肉は美味しいだけでなく、耐性を付与する効果もあるのかもしれない。
これは嬉しい誤算だ。
だが、いくら耐性があったところでこいつらは一発で死ぬけどな。
まったく、弱すぎて困るぜ。
その時、俺はふとあることに気づいた。
「そういえば……こいつらに名前付けてやってなかったな」
最初は全く見分けられなかったから、全員で一つのまとまりとして認識していたが、今は違う。
スライムの好みや、ご飯を食べる時の仕草なんかでだんだんと見分けられるようになったのだから、名前を付けてやってもいいかもしれない。
そんなことを考えながらぼーっと謎の幼体たちを眺めていると、やがて食事を終えて、すやすやと眠り始めた。
食べてすぐ寝る。実に怠惰な生活態度だ。素晴らしい。
「……さて、俺もそろそろ眠るとするか」
外の時間を確認することができない洞窟内においては、こいつらの寝た時間が夜だ。
こいつらに合わせて俺も眠れば、睡眠不足になることはない。むしろ寝すぎになる。
まあ、寝る子は育つって言うし問題ないだろう。
俺は手早く寝床を準備すると、そのままこいつらの名前を考えながら眠りについた。
*
「……………………ーク………………ますか?」
――突然、真っ暗な闇の向こう側から、何やら声が聞こえてきた。俺は寝たはずなんだが。
もしかするとこれは……夢だろうか?
すると、今度はさっきよりも鮮明に声が聞こえてきた。
「ジーク、聞こえていますか?」
どうやら、声の主は俺のことを呼んでいるらしい。
返事をしようとしたが、何故か声が出せなかった。
「私は大精霊です。今は一方的に語りかけているので、無理に返事をしようとしなくても大丈夫ですよ」
――大精霊だと!?
じゃあ、ツムリンの言っていた大精霊様とやらが、直接俺に話しかけてきているのか?
「あなたのことはツムリンを通して見ていました……そう……ツムリンの……うぅっ……!」
そう言って、言葉に詰まる大精霊。態度からして、ツムリンが死んでしまったことを知っているみたいだ。
「……おほん。そこで、折り入ってお願いしたいことがあります」
唐突だな。一体なんだろうか。
俺がそんなことを考えていると、大精霊はこう続けた。
「――私に代わって人類を滅ぼしてください。あなたが魔王になるのです」
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