第30話 引っ越し 其の三

 ――ズルズルッ


「アーニャ、大丈夫か? ほら、しっかりしろって」

「あんっ……。申し訳ございません。全身が痺れてしまって……」


 俺はラミアの女性、アーニャを背負って雨の中を歩く。

 背負うといっても下半身が蛇なので引きずるっていうほうが正確だな。

 彼女を背負っている理由だが……。

 どうやらラミアのアソコは人と蛇が交わる部分にあるようで、俺を背負っていたら当たってしまったと。

 気持ち良くなっちゃったのだ。

 

「あのさ、悪いけど持ち辛いからさ。腰に尻尾を巻き付けてくれるか?」

「はい……」


 アーニャはシュルシュルと蛇の下半身を俺に巻き付けてくる。

 これで大分背負いやすくなったな。

 

「ライト様は力持ちなのですね。ラミアは人よりも重いはずなのですが」

「そうか? そんなに重くないぞ」


 まぁ、今の俺は地球にいた頃に比べて何倍も筋力が増している。

 村民満足度を上げた結果だな。

 多分アーニャの体重は100キロを超えているだろう。下半身が蛇なので仕方ない。

 でも大した負担にはなっていない。

 もう一人ラミアを背負っても歩けると思うぞ。


 途中までアーニャが俺を背に乗せてくれたおかげで早めに拠点に到着した。

 それでも新しい拠点まで一時間か。

 時計を見ると、まだ正午を回ったところだ。

 今日中に引っ越しが出来そうだな。


「あ! ライトさん、お帰りなさい! あれ? アーニャさん、どうしたんですか?」


 リディアが出迎えてくれたが、アーニャの異変に気付いた。

 どうしたと聞かれたが、まさか途中で気持ち良くなって倒れたとは言えない。


「んー、途中で具合が悪くなったみたいでね。少し休ませるよ。そっちは荷造りは出来たか?」

「はい! もう終わっています! いつでも出られます! ……ということは、新しい拠点が?」


「あぁ。見つかったよ。先に壁と小屋は建てておいた」


 俺の言葉を聞いてリディアは安心した顔を見せてくれた。

 その旨を言葉の通じぬエルフ達に伝えてくれた。


「ライトさん、さすがです!」


 リディアは嬉しそうに俺に抱きついてくる。

 そして優しくキスをしてくれた。

 ってこら。みんなが見てるだろ。

 それにまだアーニャをおんぶしてるんだから。


「ぷはっ。ははは、嬉しいのは分かるけどさ。一度アーニャを休ませないと。出発は一時間後。それまでに腹ごしらえをしておこうか」

「はい! そう思ってごはんは用意しておきました!」


 この拠点に貯蔵してあるものだが全ては持っていけない。

 肉やナババなどの食糧は森に行けば手に入る。

 だがやはり残しておくのはもったいないということで、可能な限りここで消費しておくことにした。


 アーニャもようやく動けるようになったので、村民全員で一緒に食事を摂る。

 この世界に来て一番豪勢な食事となった。


「ふふ。美味しいです。ライトさん、食べさせてあげますね」

「一人で食べられるって」


 俺にちょっかいを出してくるリディア。

 ラルク達エルフも楽しそうに食事をしている。

 だがアーニャだけはどこか遠い目でその光景を見ているようだ。


 寂しいのかもな。ここにいるラミア……蛇人はアーニャ一人だ。

 同族がいないっていうのが辛いのかもしれない。


 俺は席を移動しアーニャの横に座る。


「ラ、ライト様?」

「ほら、しっかり食べな。あのさ、拠点を移って生活が落ち着いたら、また森に生き残りがいないか探しに行くんだ。きっとアーニャの仲間も見つかるよ。だから元気を出してくれ」


「ふふ、そうですよ。私も協力しますからね。ほら、アーニャさんもいっぱい食べて下さいね」

「ライト様……。リディアさん……。ぐすんっ」


 俺達の言葉を聞いてアーニャは涙を流す。

 ほら、泣いてないでさ。食べられる時に食べておいてくれよ?

 これから大荷物を持って引っ越しなんだからさ。

 

 豪勢な食事を終え、俺達は住み慣れた拠点を出ることにした。

 そしてまた例の音が聞こえてくる。


 ――ピコーンッ


【現在の拠点を破棄しました。村民満足度がリセットされます】


 分かってはいたが、今まで貯まった村民満足度が0になった。

 新しい力を得る機会を逃したか。

 

 まぁいいさ。彼らが一緒にいてくれたら、また村民満足度は上げられるしな。

 それよりも新しい拠点に移り、近い内に襲ってくるであろう異形達に備えなければならない。


 雨の中、荷物を抱え俺達は新しい拠点に向けて歩く。

 土地勘があるアーニャが先導してくれたので夜が来る前に到着した。


「ここですか! わー、前より広いですね!」


 とリディアは元気にはしゃいでいる。

 新しい拠点は2倍程に大きくしてある。

 一辺が25メートルある正方形の拠点だ。

 

 小屋も広く作っておいたぞ。

 俺とリディアに一棟、エルフ達に二棟、アーニャのために一棟だ。

 他にも栽培が出来るよう、ある程度土地は空けてある。


「よし、それじゃ荷物を降ろそうか。必要なものは各自持っていってくれ」


 とは言っても今小屋に持ち込むのは毛皮の布団くらいだな。

 仕方ないか。また一からのスタートだ。

 新しい拠点での、新しい生活の始まりだ。


◇◆◇

 

☆現在の村民数5人。総村民満足度7/50

☆エルフ

・リディア:村民満足度1/50

・村民エルフ3人:村民満足度3/50

☆ラミア

・アーニャ:村民満足度1/50


☆現在の物質

・毛皮15枚:様々な獣から剥いだ物。保温性が高い。

・燻製肉:50キロ程度貯蔵してある。リディアの精霊魔法により腐敗を遅らせている。貴重なタンパク源。今回の引っ越しでかなり減ってしまった。

・種芋:十個程度保存してある。味はヤマイモに近い。

・粉:20キロ程度貯蔵。ナババの実から作ったもの。

・塩:少量

・カエデの樹液:2L程

・毛皮の下着:各村民に一着ずつ。

・毛皮の布団:各村民に一つずつ配布。なお番になっている者には二人で一つの布団を配布してある。 

・竹槍:20本。地球の竹より頑丈であり、そう簡単に折れることはない。

・弓:リディア作成。現在庫は8丁。

・矢:リディア作成。800本。


☆現在の拠点

・竹壁

・625㎡(25m×25m)



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



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