第24話 それぞれの仕事

 二人のエルフを助けた次の朝。


「Yo¬ee」


 謎の言葉で俺に話しかけてくる。

 二人は笑顔なので悪口を言っているのではないと思う。多分。

 リディアとは言葉が通じるのだが、この二人の言葉は理解出来ない。

 リディアと二人の差は何なんだろうか? 彼女の話ではここにいる全員がこの世界の共通語を話しているらしい。

 

 まぁ、意志疎通はリディアを介せば問題無い。

 

「ふふ、おはようございますって言ってるだけですよ」

「そ、そうか」


 どうせ俺の言葉も通じないんだ。

 思いっきりいい笑顔で手を振っておいた。

 さてと、今日も色々とやることがあるぞ。

 四人で一緒に朝食を食べながら話すことにした。


 今日の朝食はリディアとミァンが用意してくれた。

 竹壁は食器としても利用出来るからな。

 細くて長い竹はコップ、大きくて太い竹は食器に加工してある。

 今日の朝ごはんはパンが出てきた。いつの間にか作ったのか。


「ミァンは王都では食堂で働いていたんです。酵母がないからふっくらしてませんが、きっと美味しいですよ」

  

 おぉ、本職の方でしたか。これはありがたい。

 他にも肉と野草が入った具沢山のスープ、カエデの樹液を入れた甘いお茶、デザートまであった。

 カエデの樹液はまるでメープルシロップのような味がする。それをミンゴにかけて食べるそうだ。

 

「わぁ、すごく美味しいです」

 

 リディアはシロップをかけたミンゴを気に入ったみたいだ。

 とてもいい笑顔をしている。

 

「cesks фayyb」


 食事を終えるとラルクが話しかけてくる。

 リディアの話では彼は雑貨屋を営んでいたそうで手先が器用みたいだ。

 竹を使って生活雑貨を作ると提案してきた。

 

「すごいな。それじゃお願いしようか」

「ふふ、任せてくれって言ってます」


 仲間が増えたことで、やれることの幅が広がった。

 ちなみにこんな感じで分担を決めることにした。


・朝。8時起床。

 俺とラルクは風呂から水を抜いて掃除した後、新しい水をためる。

 リディアとミァンは朝ごはんを作る。

 朝食を摂ったら四人で森を捜索する。期限は今まで通り午後2時までとした。


・2時から7時。

 拠点に戻り体を休める。自由時間ではあるが、仕事をしても構わない。

 ここでラルクは竹細工の他、家具を作ってくれるそうだ。

 俺は夜の入浴のために風呂桶に水を張って石を焼いておく。他にも雨が降っても入浴出来るよう、簡単な屋根を作ることにした。

 リディアとミァンは夕食の準備だ。


・7時から9時~11時。

 異形の襲撃に備える。早い時で襲撃は1時間程度で終わることもある。

 だが前回大群が押し寄せた時は、気がついたら深夜12時を回っていた。

 俺達が生き残るための最も大事な時間だ。


「……とこれが一日の大まかな流れになるだろう。他にも君達がしたいことがあるなら遠慮無く言ってくれ」


 リディアが二人に伝えると、にっこり笑って頷いてくれた。

 彼らの満足度を上げることが俺の力にもなるからな。


 今度はラルクとミァンが謎の言葉でリディアに話す。

 お? 早速リクエストか?

 だがミァンの言葉を聞いたリディアの顔が真っ赤になったぞ。

 どうしたんだろうか?


「あ、あのですね。したいことが3つ程あるみたいです。出来たら拠点の中で栽培したいものがあるって」


 いいんじゃないか? 拠点を広くしたことで、ある程度ではあるが土地に余裕はあるし。

 ミァンのリクエストらしいが、カエデの木を植えたいとのことだ。

 シロップを作りたいんだな。これは俺も賛成だ。


「いいよ。森に行ったらカエデの若木を見つけようか」

「はい! 伝えておきますね!」


 リディアの言葉を聞いたミァンは安心したように笑顔を見せる。


「次ですがラルクさんがナイフを欲しいと言ってます。黒曜石を多めにストックしてくれると助かるって」

 

 なるほど、職人さんだもんな。

 仕事道具は必要だろう。

 今あるナイフ……と言っていいのか分からんが、手持ちの黒曜石は料理や獣の解体で使っている。

 あまり数の余裕が無い。


「うーん、約束は出来ないけどさ、なるべく見つけられるよう努力するよ。時間が出来たら皆で川に行ってみよう」

「はい、伝えておきますね」


 ラルクも黒曜石が簡単に見つかるとは思っていないようで、納得した顔をしてくれた。

 

 では最後のリクエストを聞くとするか。

 

「あ、あのですね。二人は恋人同士なのですが……」


 らしいね。昨日そんなことを言ってた気がする。

 だがリディアが顔を赤くする理由が分からんぞ。


「久しぶりにしたい……そうなのですが、ご迷惑ではないかって」

「したいって何がしたいんだ?」


 とセクハラじみたことを聞いてみる。

 リディアはMっ気が強いようなので、つい苛めたくなってしまう。

 うりうりー、何がしたいのか言ってみろよー。


「エ、エッチがしたいって……」


 だよねー。二人も恋人なら仕方ないだろう。

 狭い拠点ではあるが、二人の声を聞かないよう努力しよう。


「いいよ。自由時間になら好きにして問題ないから。二人に伝えてくれ」

「そ、そんな……。恥ずかしいですぅ」

 

 とセクハラ伝言ゲームをやらせてみる。

 リディアってかなり大胆だと思うんだけど、自身は恋愛慣れしていないらしく、こういった話題も初めてらしい。

 

 うーん、仕方ないな。

 

「リディア?」

「な、何です……。って、んー!?」


 二人の前でリディアを抱きしめてキスをする。

 ラルク達も驚いた顔をして俺達を見つめていた。

 二人には言葉が通じないが、一応言っておこう。


「俺達を見れば分かるはずだ。リディアは俺の恋人でね。夜は好きにさせてもらう。だから君達も自由に楽しんでくれ」


 最後にウインクをしておく。

 二人は安心したようにお互いの手を握りしめていた。


「それじゃこれから森に行こう。仕事の時間だ。ん? リディア、どうした?」

「ライトさぁん……」


 い、いかん。リディアは火がついてしまったようで離してくれないんだけど。

 絡みつくリディアをちょっと無理やり離して、俺達は初めて四人で森に向かった。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



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