第42話 経過観察は順調

 …うん?もう朝かな?昨日は魔力操作で結構神経使ったから疲れてぐっすりだったのかも…って、お付きの人が控えてくれていた!


「ワタリ様、おはようございます。朝食の準備が出来ていますのでお持ちいたしました。」


 身分の高い人ってお付きの人がいるのが当たり前の生活なんだねぇ…僕は常に控えられていると急かされているって感じちゃいそうなんだけど…元々の環境次第なのかねぇ。

 というか、僕のような流れ人が王女様と食事をするなんて何かと問題があると思うから、部屋に持ってきてくれたのは嬉しいな。


「…あの…見られていると気になっちゃうのですが…」


「私のことはいないものと思ってください。」


「僕は庶民の出なので慣れないので…」


「そのうち嫌でも慣れる必要が出てくると思いますよ。昨日の感じからすると。」


 えっと…嫌な予感しかしないんだけど…


「それってもしかして…そういうことですか?」


「ええ、その可能性が高いと思われます。今はまだ引継ぎ中ですがアリエス様の夫が王位に就くことが決まっています。しかしジェミニ様を担ごうとするものが結婚を急かしていた面もあります。」


 なるほど…ジェミニ様を勝手に担ぎ上げようとしている貴族が、継承権を得て蹴落とすつもりということか。そうすると、ジェミニ様を政争に巻き込まれない様にするために外部の者に嫁がせるべきってなるわけか。ちょうどいい人物となると、病弱を治した功績のある僕に預けることで周りを納得させ、ジェミニ様の安全の確保って感じかな?

 ほんと王族ともなると大変だね…貴族も十分大変そうだけど…


「ジェミニ様は納得しているのでしょうか?僕に結婚とはいかずとも預けられることに対して。多分、気軽に姉に会うことが難しくなると思いますが…」


「ワタリ様は察しがいいですね。一時的に城から離れることになりますが、アリエス様がそのままにするわけはありません。反対勢力をすぐ抑えると思われます。そうすれば城に遊びにくることは大丈夫だと思いますよ。ただ、ジェミニ様は王族という立場を捨てることになりますが…そこはワタリ様もいますし私も付き人としてついて行きますので。」


 病弱だったジェミニ様に外を見せる機会にもなるし、面倒な政から切り離せるってことでアリエス様的にはいいんだろうなぁ。ジェミニ様が権力に執着していないからこそかもしれないけれど…


「ジェミニ様が納得しているなら僕からは言うことはありませんよ。それが最良でしょうし。」


「それでは2人とも準備は出来ている頃でしょうし部屋に向かいましょうか。」


 うーん…やっぱこうなると持ち家欲しくなるなぁ…いつまでも侯爵様の別邸に厄介になるわけにはいかないし…流れ人の攻略次第だなぁ…金策のために回復量の多いポーションの制作と料理を作って売るのもよさそうかな。土地と建物代かぁ…最悪、土地さえなんとかなれば自分で建築するのもありかも?


 色々と考えている間に部屋へ着いたようだ。


「ワタリさん、おはようございます。昨夜はゆっくり眠れましたか?」


「おはようございます。意外と疲れが溜まっていたのかぐっすり眠ってしまいました…」


「ワタリ様、おはようございます!」


「ジェミニ様も、おはようございます。体調はどんな感じでしょうか?」


「今までにないほど良いです!」


「それはよかった、一応念のため見させてもらってもいいでしょうか?あ、もちろん服を脱ぐとかじゃなく魔力的にですよ?」


 僕が言うと脱ぐと思ったのか恥ずかしそうにしたが、その後の言葉で勘違いに対して恥ずかしがった。

 まずは魔力の流れを見るかな。…うん、澱みなく正常に流れているな。後遺症もなくてよかったけれど、まだ長時間の運動がこなせる筋力ではないからリハビリが必要になると思う。


「うん、大丈夫そうですね。ただ、やっぱり筋力が低下している状態なので長時間の運動は避けてくださいね。あとは…動かしてなかったからか筋肉が固まっているのでほぐすのもした方がいいかな。これは一緒に来る付き人さんに教えときますので風呂上りやストレッチ後に行ってください。」


「何から何までありがとうございます…あの、私のこれからについてなにか聞きましたか…?」


 ジェミニ様が恥ずかしそうにして聞いてきた。僕はアリエス様のほうを向くとなんとなくだが判断を任せるって顔をしていた。僕の答えは…


「えっと、付いてくるなら今みたいな生活は出来ませんし苦労させるかもしれませんよ…?それでもいいのですか?」


 僕は問いかけた。貴族みたいな生活は無理だろうし…それに僕は色々な地域を少しずつ見て回りたいので拠点は設けるけれど留守にする可能性もあるからね…


「ワタリ様と一緒なら私は他に何もいりません。でも…たまにアリィお姉さまに会わないと、お姉さまが暴走する可能性がありますが…」


「粛清がすむまでジェミに会うのはちゃんと我慢するわよ!ワタリさん、ありがとう。一応これから王や側近達とジェミに関して会議をすることになるわ。

 私達王族はワタリさんに預ける方針で固まっているわ。ジェミは王家から外れることになるから結婚も自由よ!ちなみに、好きあっていれば何人娶っても問題ないわよ?それなりの功績が必要だけれど、ワタリさんはジェミの病を治した実績もあるから平気よ。」


「すでに方針が決まっているのですね。あとは側近達、貴族の反応待ちってことになってるんですねぇ…揉めなければいいのですが…」


「大丈夫よ、あの人達は口だけみたいなのも多いのだから。それに、病も治ったのだし厄介払いじゃなく感謝の気持ちでワタリに嫁がせるってことで王族がまとまったことがでかいわ。決定事項の確認の意味合いでの会議になるわね。」


 なんとまぁ…押しが強いというか、一気に決めてしまおうって感じなんだね。


「えっと…それじゃこれからよろしくねジェミニ様。」


「ワタリ様…夫婦となるのでしたらアリィお姉さまみたいに呼んで欲しいです…」


「ジェミニ様が様付け辞めたらね?」


 わかりました…ワタリさんっとジェミニ様もといジェミが小さく言った。そして僕達はフレンド登録をしておいた。今後、連絡を取ることが増えるだろうからね。


「とりあえず、僕の今後の予定だけ言っておきますね。いつジェミと合流することになるかわかりませんので。まずはダンジョンに潜り転移出来るようにする。これは他の流れ人がいっぱいいるので僕はそこまで熱心に潜りません、流れ人に対して金策を並行して行う予定ですね。その金策次第ですが、アルファスに土地を買い拠点の確保をしたいと思います。僕の師匠がいる街ですし。あとは少しずつ色々な地域を見て回りたいので、もしジェミが一緒に行動するなら冒険者としての活動も視野に入れておいて欲しいです。無理はしなくてもいいですが…」


「そこまで予定立てているのね。転移が出来なければこの大陸外に行くには船で長時間の移動が必要なのよ。だからこそ転移の魔道具の復活が行動範囲を広げる目的だから間違ってはいないわね。拠点に関しては私達が用意してもいいのよ?ジェミを任せるのだし、治療をしてもらったんだから。」


「あー…大きい屋敷を貰っても維持するのは大変なので…土地だけもらえれば錬金の練習にもなりますし自分で設計しようかと思うのですが…」


「アルファスの土地ね…領主に聞いておくわね。結果が分かったらノルニール侯爵の屋敷に報せを送るわ。」


「色々と配慮ありがとうございます。それじゃ今日はこれで失礼しますね。ジェミ、リハビリと魔力操作の練習と色々と大変かもしれないけれど無理しないようにね?」


「ありがとうございます…あの、その…次機会がありましたらワタリさんが懇意にしている貴族の方々を紹介してほしいです…一緒に暮らすことになるかもしれませんし…」


 そういえばそうだったね…ラナさん以外吊り橋効果とか命の恩人って印象が強いんだろうけど…

 リアルだと付き合いの浅い人ほど見た目だけで判断して僕を女と捉えるのだけど、こうやって付き合っていくときちんと男として好意を持たれるのはいいね。




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後書き

 いつも読んでくれてありがとうございます。少し体調を崩してしまったため更新頻度が落ちると思います…無理のない範囲で更新していくので何卒、応援のほどよろしくお願いします。

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