第2章 幼馴染みのやり直し。ややこしいなあ、もう!

第7話:ウブ・アマチュア・初心者……、お互い未経験だもんね。少なくとも私はガリ勉処女。

再会してから、今現在の私とマーちゃんの関係は複雑だ。

まず、とにかく、再び毎日近くで顔を見るようになってその美貌に驚いた。

こんなにも美しい少年に成長していたのかと。

4年間のブランクってやつですか?。

とにかくいつのまにかマーちゃんはもう一人だけ大人の男性のようになっていた。

って、人のことは言えないか……。

マーちゃんもきっと

「お前、そんなに勉強楽しいか?」

って言うだろうな……。

お互いさまだ。当然思ってる。

でも、二人は決して話さない。

そう。ブランクだ。

こいつが厄介だ。

気まずいよねえ、何だか……。

お風呂も入ってキスもした幼馴染みとはいえ、

今では住む世界も違うし付き合う友達も違う。

言葉も交わさず、目も合わせない。

でも、たった4年であの濃密な関係が崩れるわけがないし、あのたくさんの想い出も忘れるわけがない。

何かきっかけがあればすぐに関係が戻ると思うんだけど、

何だかお互いシコリができていて「最近どーお?」なんて話しかけるのも照れくさい。

それに立場も厄介だ。

マーちゃんは校内一の不良。私はガリ勉。

ニコやかに話していたら周りには不自然だし、

私はいいけどマーちゃんはカッコウが付かないだろうなあ……。

やっぱりカッコ悪いだろうなあ、ガリ勉女に

「直ちゃん、オフクロ煮物作ったよ、食べろよ」

なんて言うの。

たとえマーちゃんはよくても、石川翔や沢田唯人は

「マー、そんなヤツと話すなよ」

なんて怒るだろうな。いや、きっと怒る。

明らかに不釣り合いだし、だいたい、もう私たちが幼馴染みだってことを知ってる人もいないし、フォローもしてくれない。

とにかく私たちは周囲の耳目じもくという厚い壁にはさまれて身動きが取れない状態にいるのだ。

本当に目が合わない。

たまに合うんだけど、何の感情も起こらない。

でも、これは裏返しで、幼馴染みの関係があまりにも濃密過ぎて、今さら目が合ったぐらいでときめくようなそんな薄っぺらい間柄あいだがらではないのだ。

それほど心の中では熱い関係だ。

少なくとも私は……。

マーちゃんはどうだろう?。

私と同じだと思う。

そうあってほしい。

いや、どうだろう?。

男の子ってどんどん先に行っちゃうし。

小学校の卒業式のあと、澄ちゃんのスナックでお祝いをしたとき、一言マーちゃんと話したことがある。

「部活、何にする?」っていうようなことを目も合わさずわしたぐらいかなあ……。

中学に入ってからもクラスは別々で一言も話していない。

でも、廊下ですれ違うと必ずいつもあの幼い時の濃密な関係が昨日のことのような感触としてじんわり身体からだの中を温める。

頭は忘れても心と身体は覚えているのだ。

そんな身体にみついてるぐらいの関係だから、教室で目が合うぐらいでいちいち反応しないのは当たり前だよ。

でも、何だかむずかゆいよね。

せめて、一言ぐらい喋るきっかけがほしい。

でも、それを作るのはお互い恥ずかしい。

はたして私はマーちゃんを前にして「マーちゃん」と呼べるのか?。

マーちゃんも私のことを「直ちゃん」と言えるのか?。

二人だけが共有するこのややこしい思いを周りのみんなは知るよしもない。

私たちだけの秘密。

いや、でも、待てよ。

この思いはやっぱり私だけかもなあ……。

マーちゃんはもう何も思ってないのかも……。

そうかもなあ……。

私のストーカー的な心情かも?。

まずいまずい。暗い性格になりそう。

とにかく知りたい。マーちゃんの心……。

そんなことを考えて廊下を歩いていると人にぶつかった。やべッ。

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