生きてりゃ

1年間留年していた。やっとテストが終わりようやく進級できることが判明した。進級判定というのはその先だが、学則に照らし合わせて確認した。身体の力が抜けると同時に「本当にこのままでいいのだろうか」という疑問が浮かんだ。別にこの一年間、いや二年間、何かを頑張ったという実感がない。テスト期間にたくさん努力をしたというのも違う。


講義数の制約から時間が余り、バイト代は溜まったが、ほぼ学費に持っていかれた。両親2人と自分で3等分。一年あたりおよそ200万円超の学費だった。前期分は留年が確定した後に。後期分は今年の9月に親に納めた。ただただ私の無力感に苛まれる。


来年度からは対面での講義が再開され、通常通りの大学生活となる見込みである。私たちは「通常の大学生活」を知らない。入学式すら行われていない。その大学に在籍していることすら実感していない。私には大学の汚い部分しか見えなかった。過去問を1つ1万円で売りつける先輩。酒に溺れる未成年の学生たち。新しい非公式飲みサーが乱立、アルハラや闇金、薬物パーティーの横行。オンラインの講義に虚しさを覚え心を病ました高校時代の友人は退学。拠点を次々にかえて連絡も途絶えがちである。


1年目の前期が終わったころだった。私も無茶なアルバイトと一日7時間にわたるオンライン講義で心身疲弊していた。深夜に家を出て大量の向精神薬と酒を飲んだ。そうして橋の上から飛び降りしようとしたところを偶々警察に保護された。


ドアの外から私服の若い男性がこちらをじっと見つめる。これはまだ生きろということなのか。この汚い部屋の中で。扉を開けようとした。足がふらつく。開かない。ここはいわゆるブタ箱。免許証から未成年であることが判明してしまい、指紋をとられた。


警察官か何者か知らぬが、私には生きろというメッセージを伝えた。


私は生き続けている。


不器用なまま何も変えずに生活した。そして私は留年した。私は現実を受け入れた。私は逃げない。私はここで生きている。それで満足できる人間になりたい。

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