怒り

総務部へ書類を届ける為に廊下を歩いていると、向こうから顔をすっぽり隠したサンバイザーと黒いアームカバーを着けた女性社員が歩いて来た。

「今日は特にカンカンよ」

女性社員はすれ違いざまに、そう言った。

私はうなだれた。

総務部長の機嫌が著しく悪いのだ。

総務部長は怒ると顔が真っ赤になるが、そこを通り越すと発光し始めるのだ。

その為、日焼けを嫌う女性社員は、老いも若きもUVカット商品を身に着けている。

私は一つ息を吐くと、意を決して総務部の扉を開いた。

総務部長はカンカンに照り、部内にはそこら中にパラソルが立てられ、水着姿の総務部員達が互いにサンオイルを塗って、甲羅干しをしていた。

「参ったな…」

そう言うと、私は書類を放り投げ、スーツを脱いだ。

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