Act.25:崩壊した町①
「こ、これは……」
「何よこれ……」
俺たちは目の前に広がっている、光景を見て大きく目を見開く。
半壊したビルに、全壊した家屋。ヒビの入ったアスファルト……あまりにも現実離れしている物を見て何も言えないでいた。駅からはそこそこ離れている場所ではあるものの結構賑やかな場所だったはず。
ここで一体何が起きたのか?
十中八九、あのクラゲの魔物のせいだとは思うが、ここまで酷くなっているとは思わなかった。所々に無事な場所や、あまり壊れてない場所などが見えるが……。
恐らくは魔法少女たちが戦っていた跡だと思う。バリアみたいなやつで防がないと、ならないような形で残っている場所もあるし。魔法少女が戦っていたのは確かだと思う。
「……これクラゲがやったの?」
「ん。それしか考えられない」
他の魔物が出現した可能性も考えられるが……これ、他の魔物が荒らしたようには見えないな。丁度、クラゲの居た場所のすぐ近くのはずだし、あいつの周囲には魔物が出てなかった。
まあ、確定というか確信している訳ではないが、取り敢えずクラゲもどきの魔物がやった可能性のほうが高いというのが俺の考え。他の魔物が原因なら、俺の考えは外れということ、それだけだな。
「肝心な魔物は何処に……」
「見た感じでは、確認できないわね」
クラゲもどきの居た場所の近くだ。ここから見えても良いと思うが、空を見ても特にそれらしき姿は見えない。
「何か天気も不気味ね」
「ん」
さっきまで青空だった気がするが、今はただただ不気味な明るさの空。分厚く、灰色の雲が覆い隠している。世紀末のような感じさえさせる。
一体何があったのか? クラゲもどきの魔物との戦闘があったのは確かだ。それなら、戦っていた魔法少女たちは何処に居るんだ?
「瓦礫が多いわね。……ここまで被害が出ているのを見たのは初めてよ」
「それはわたしも」
今までの魔物出現では、全くの被害がないとは言えないが、ここまで酷いのは初めて見る。俺たちはそんな悲惨な状態となってしまっている町の中を警戒しながら歩く。
水戸駅はこの先をずっと真っ直ぐに行った所にあるはずだが……この調子だと向こうも荒れていそうだ。崩壊した町並み……まさか、現実の世界でこんなものを見る羽目になるとは思わなかった。
取り敢えず、先に急ぐべきか?
いや、それよりも少しこの辺りを調べるほうが先か? でも、調べると言っても何をと言う話になるな。もしかしたら魔法少女や一般人がいる可能性は考えられる。
「どうするの?」
「進もう」
「分かったわ。テレポートする?」
「いや、最初は良いかな」
「了解」
テレポートで一気に行ってしまっても良いが、戦闘中とかだったらいきなり現れた俺たちに戦ってる人が注意を逸してしまうかも知れないし、それは危ないかな?
ただ気になるのは魔物の姿が見えないこと。
空を飛んでいたし、その図体も大きかったはず。向こうの方に居るのであれば、見えてもおかしくないんだけどな……それとも、見えない距離まで移動している? 空路を使えるわけだし、その可能性もあるか。
「今にも崩れてきそうなのもあるわね」
「ん。気を付けて」
「そっちこそね」
破壊されてからあまり時間が経ってないように見える。半壊しているビルについては、ボロボロと上から破片とかが落ちてきているし、危なそうだ。ただ、こっちは魔法少女の状態なので大丈夫だとは思う。
電柱とかも倒れていたり、完全に壊れていたりしている感じだ。恐らくこの辺一体のライフラインは停止しているものと見える。とは言え、人影はなく避難はできいるのかも知れない。
「スターシュート!」
「え? きゃ!?」
放たれた星が空中にあるコンクリートのブロックを打ち砕く。
「驚いたじゃないの。まあ、助かったけれど」
「ん」
ビルの上からブロックが丁度、ブラックリリーのいる場所へ落ちてきていたので咄嗟に魔法で砕いちゃったが、間に合ったようだ。魔力装甲があるとは言え、割と痛いと言ってたしあのコンクリートブロックにぶつかったらそれなりに衝撃も来るだろう。
周囲に気を配りつつ、俺は進んで行くのだった。
□□□□□□□□□□
「……」
私は魔物の戦闘の影響なのか、悲惨な状態になってしまっている町を見る。あっちこっちで戦闘をしたであろう跡が残っていて如何に激戦だったのかが見て取れる。
空は酷くどんよりとしていて、不気味な色合いになっている。ビルや、建物の窓ガラスは完全に割れていて、一部は全壊している物もある。道路だった場所は凹んでいたり、ヒビが入っていたりなどの有様。
「ララ。これはやっぱりあのクラゲの魔物の仕業なの?」
「他の魔物が出現してやった可能性もあるけど、まあ、クラゲの仕業の可能性が高いね」
少し先で周りを見ているリュネール・エトワールを見る。
またこんな形で、一緒に行動するとは思わなかったけれど……何か今日の彼女は挙動不審と言うか、何か違う感じがする。と言っても、私もそこまで一緒に過ごした訳でもないし、以前の共闘の時のみくらいだ。
でも、そんな私でもあの時と比べて本調子には見えない。それでも十分強いっていうのがちょっと妬けるけれどね。
だって、戦闘中に止まるんだもの。顔もなんかあれだったし……彼女の魔力装甲はかなり強靭なのは分かってたけど、ついつい見ていられなくて助けちゃったけれど。
というか何で私こんなにも、あの子のこと気になってるのかしら? 確かに助けてもらったのは感謝してるんだけど……。
「? ブラックリリー? 何か顔赤いよ?」
「へ……!?」
ララに指摘されると、急に自覚する。顔が更に赤くなっていくのを感じる……何で? 何で? ふと、さっき落ちてきたブロックを素早く魔法で砕いてくれたリュネール・エトワールを思い出す。
素直にかっこいいと思ってしまった。
あれ? あれ? あれ?
「!」
不意打ちに直ぐ側に人の気配を感じ、身構えるがそこに居たのはさっきまで向こうに居たはずのリュネール・エトワールだった。
「大丈夫?」
ちょっと、近いわよ!?
「?!」
次の瞬間、リュネール・エトワールが顔を思っきり近づけてくる。更に私の顔は赤くなっていくのを感じるけれど、もうどうして良いか分からず目を瞑る。
「熱は、無いみたい」
「へ?」
「顔赤かったし、体調悪いのかなって思って」
その言葉にどっと疲れが襲ってくる。本当に何なのよこの子は……そんな私も何かさっきから気持ちが落ち着かないけど。これは一体何なの?
彼女とはまだ会ったばっかりだし、何も分からない。でも一緒に居るのは何処か安心ができるのも事実なのよね。私がおかしいのかしら……はあ。
「だ、大丈夫」
「そう?」
それなら良いけど……とリュネール・エトワールは続ける。毎回思うけど、この子魔法少女状態ではあるけど容姿とかずば抜けてる気がするわよね。銀髪金眼……まず、日本じゃ見ないわよね。
とは言え、魔法少女状態は魔力を纏っているから元の姿をは大きくかけ離れるのが普通だけど。僅かではあるけど、元の姿の面影も残るわね。
「それよりも、先に行くんでしょ」
「ん」
このままだと、何かおかしくなりそうなので気持ちを切り替える。未だにドキドキしているのが止まらないが、それはもう気にしないことにした。
本来の目的はクラゲの魔物よ。
あそこまで大きかったし、空を飛んでいたのだから近くにいれば普通に見える気はするんだけれど……生憎空を見上げて向こうの方を見てもそれらしき姿は確認できないのよね。
見えない距離に移動したか、それとももう討伐できたのか。
後者はまだな気がするわね。もし倒したのなら、この辺の復旧作業等をしているはずだし、この場に誰も居ないのはちょっと変だと思うわ。まだ手が届いてないって可能性もあるけれど……。
そうなると、前者? 空を飛べるのだし既に県央ではなく別の地域に行ってる可能性もあるわよね。
後は考えたくないけれど、全滅もしくは撤退せざるを得ない状態にまで被害が出たか。でも、仮に全滅したとしても魔物は残るはずよね。撤退だってそうよ。
「……」
何が起きたのかはわからないけど、とにかく今は情報を集めないと。でもこの辺には人影は全く無いし……どうしようかしらね。私は同じようにして考えているリュネール・エトワールを見た。
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