1-15. 魅惑のヘッドハント
「あ、そうだ! どうやって帰るか分かりますか?」
俺はクラウディアに聞く。
「え? あなた達、地図も持ってないの?」
驚くクラウディア。
「落とし穴を落ちてきたので……」
「
そう言ってクラウディアは壁面にあるドアを指さした。
「ありがとうございます。それでは……」
俺はそう言って、帰ろうとした。
「ちょっと待って……」
クラウディアは立ち上がると俺の手を取り、両手で包んで言った。
「え?」
「あの
クラウディアは上目遣いで俺の目をジッと見て、ニッコリと笑った。戦闘の汚れが見えるが、すべすべとした肌に整った目鼻立ち、相当な美人である。
「い、いや、ちょっと……そのぅ……」
俺が困惑していると、
クラウディアは俺の手を胸に押し当てる。豊満な胸は温かくてマシュマロのように柔らかく俺の心臓はドクドクと高鳴る。
「ソ、ソータ様……?」
エステルが戻ってきて驚き、寂しそうな目で俺を見る。
「あー、いや、これは……」
俺が言葉に
「どっちがいいか……、よく考えてみてね。また後で!」
そう言って俺にウインクをすると、仲間の方へと歩いて行った。
エステルは俺の手をそっと両手で取り、寂しそうにうつむいた。
「大丈夫だよ、エステルを見捨てるような事しないから」
俺はそう言ってエステルの頭をポンポンと叩く。
「ほ、本当です……?」
エステルは今にも泣きそうな目で言った。
俺はニッコリとうなずく。
「良かったですぅ」
エステルは胸をなでおろし、
◇
ドアの向こうにあった、白く光りながらクルクル回るポータルに触れると、身体がふわっと浮いて景色が変わった。そこは洞窟の入り口だった。夕暮れ間近な傾いた日差しの中で、多くの屋台が出て、冒険者でにぎわっている。
冒険者たちは皆冒険用の装備でバッチリと決めていて、まさにファンタジーの世界だった。それぞれよろいやローブをまとい、派手な剣や杖を装備し、中にはデカい盾を背負っている者もいる。
「おぉ……」
俺が圧倒されてキョロキョロしていると、
「あっ! 串焼き食べるです!」
エステルが俺の手を引いて屋台に連れて行く。
「はい、いらっしゃい!」
おじさんはにこやかに応対してくれる。
「俺、魔石しか持ってないよ」
と、エステルに言うと、
「魔石でも大丈夫ですよ!」
と、おじさんが答える。
「え? そうなんですか?」
俺はゴブリンの緑の魔石を出すと、
「それなら二本だね」
と、言って俺とエステルに一本ずつ肉の刺さった串を渡してくれた。
炭焼きで香ばしい香りが立ち上る串。俺は一口食べてみる。
少し硬いが、噛むと肉汁がジュワッと湧き出してきて、それがタレの甘みと合わさり、素敵なハーモニーを奏でる。
「うはっ! これは美味い」
俺は思わず声に出してしまう。
「ありがとうございます!」
おじさんもうれしそうに言う。
「ここの屋台は評判なんですぅ」
エステルは口の周りをタレだらけにしながら、ドヤ顔で言った。
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