1-11. ステータスウィンドウ

 俺は慎重にドアを開けて中をのぞく……。すると、部屋の中にはたくさんの魔石が、赤に青に緑にいろんな色でイルミネーションのようにキラキラと光っていた。

「やったぞ! 成功だ!」

 俺は思わずガッツポーズ!

「きゃぁ! すごーい! さすがソータ様!」

 エステルはピョンピョン飛び上がって喜んでくれる。


 部屋の中を照らしてみると、魔石散らばるフロアの奥に祭壇があり、エステルの言った通り、宝箱が置かれていた。なんと言っても一番の楽しみは宝箱である。うしし……。


 俺はまず魔石を拾い集めてみる。色とりどりの魔石が約三十個。これだけで金貨数枚になるらしい。日本円にして十数万円ですよ十数万円! バルザン焚いただけでぼろ儲けだ。


 そして、最後に宝箱に近づく……。

「気をつけるです。ワナがある宝箱もあるんです」

 エステルが心配そうに言う。

「えー!? じゃ、どうしたらいいの?」

「ごめんなさい、私、開けたこと無いんです……」

 駆け出しの冒険者には酷な質問だったようだ。

「まぁいいや、ちょっとつついてみよう」

 俺は物干しざおで恐る恐る鍵の辺りをガンガンと叩いてみた。

 すると、ガチャという重厚な音と共にふたが少し開く。

 俺は物干しざおで慎重にふたを持ち上げ、完全に開けてから遠巻きに中を覗き込む……。


「どれどれ……」

 すると、そこには金貨と魔法の杖が収められていた。


「やった! 金貨だ!」

 俺はガッツポーズして小躍りした。数えると金貨は五枚、推定二十五万円である。なんだよ、すごくいい商売じゃないか!

「杖もありますぅ!」

 エステルも大喜びだ。


 エステルに杖を渡すと、

「ステータス!」

 と、叫んで何か空中を見ている。

「あれ? エステル何を見てるの?」

「えっ? ステータスですよ? この杖の方が今のより少しいいみたいです」

 と、当たり前のように言う。

「ちょ、ちょっと待って! ステータスって見えるの?」

「はい? 普通に見えるですよ?」

 エステルは首をかしげる。


 俺も真似して、

「ステータス!」

 と、叫んでみた。

 すると目の前に浮かび上がる青いウィンドウ。


ソータ 時空を超えし者

稀人 レベル:12


 これ以外にもHP、MP、強さ、攻撃力、バイタリティ、防御力、知力、魔力……と俺のステータス情報がつづられていた。

 なんだこれは……、まるでゲームの世界じゃないか……。

 俺は唖然あぜんとした。鏡を抜けたらゲームの世界? では、エステルはゲームのキャラクター? エステルのあの柔らかな肌も甘酸っぱい匂いもみんな作り物のゲームデータって事か? こんな高精度で繊細なゲームなんて作れるのか?

 俺はなんだかとんでもない世界にやってきてしまったことに、愕然がくぜんとした。

 そして、職業は『稀人』。やはり俺は神託にうたわれた救世主らしい。一体なぜ俺がそんな存在にされているのだろうか? もう、謎だらけでクラクラしてしまった。


 とは言え、せっかくステータスが分かるのだからいろいろ聞いてみよう。

「レベルっていうのは魔物倒すと上がるのかな?」

「そうですよ、私は18、今ので少し上がったです!」

「え? エステルそばにいただけなのに上がるの?」

「良く分からないですけど、ソータ様と一緒に行動してるからパーティ扱いみたいですね?」

 なるほど、その辺は自動で判断して経験値が分配されるらしい。

「レベル18ってどのくらいなの?」

「ダンジョンに入るのがだいたい20からで、冒険者として認められるのが30。50まで行くと中堅です」

「ふむぅ、レベルあがると強さとかが上がるんだよね?」

「そうです、職業に応じてパラメーターの割り振りは変わるです。私は侍僧アコライトなので魔法関係を中心に上がるです」

「えーと、強さ上がると筋力ってアップするのかな?」

「筋力かどうかわからないですが、力強くなるです。Aクラスの冒険者さんは家の屋根とかに、簡単にピョーンと飛んでるです」

「マジか……」

 この世界でやっていくなら、レベルは上げておいた方が良さそうだ。俺も屋根まで飛んでみたい。

「強い魔物倒した方がレベルは上がりやすいんだよね?」

「そうですよ」

「なら、ダンジョンのずっと奥でモンスターハウスばかり回ってたらすぐにレベルあがる?」

「うーん、理屈はそうですが……、奥は恐い……ですぅ」

 確かに死んでしまっては元も子もない。でも、奥で安全に殺虫剤で倒せる魔物しか出ないルートを見つけたら、そこを回っているだけで安全に強くなりそうだ。昔ゲームでそうやって経験値を稼いだのを思い出した。

 調査をしてそういうルート、探してみたいなと思った。

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