新章

ユニークスキル『料理レシピマスター』で全ての料理のレシピを知ることができます

 さて。

 現在俺は、アリサさんと2人で。

 喫茶店ROOTルート内の、シェルター、そのキッチンの前に立っている。


 膳は急げ。

 お膳立てが揃う。

 据え膳食わぬは男の恥。

 とか言いますが。


 つまりは、早速。

 勝利をつかんだ、その当日に。

 『デミグラスソース』の作り方を教えてもらおう。

 ということである。


 既に必要な買い物も済んでいます。

 ガンダルにて、アリサさんと2人で、デートさながら。

 買い物を楽しんできました。

 ただ、最後に寸胴鍋を購入したので。

 こいつをシェルターを使わないで運ぶのには苦労しました。

 その寸胴鍋は、今コンロの上に置かれています。


「まずはじめに、質問します。

 『デミグラスソース』とは?

 そう聞かれたら、タドルは何って答える?

 無理やりでもいいから、言葉にしてみて」


「ちょっと時間もらえます?」






*****






 ここから俺がシンキングタイムに入りますので、皆さまはハッシュドビーフの映像をお楽しみください






*****






「野菜を溶けるまで煮て、それにワインを入れたもの、とか?」


「55点くらいの回答ね。

 デミグラスソース、ドミグラスソース、という言葉には、『煮詰めた濃厚なソース』という意味があるらしいわ。

 野菜も煮込むし、ワインも入れるから、間違えではないわね」


「アリサさん、なんでそんな詳しいんですか?」


「転生特典よ。

 前世で存在した、一般的に料理と認められている全ての料理。

 その作り方や、補足情報など。

 全部データとして見ることができるのよ。

 ただし、全部文字情報だけどね」


「なにそれ、すげぇ!

 なに?

 俺、こんな人に勝負いどんでたの?」


「まあ悔しながら、そんな私も。

 『経営は料理の質だけでは決まらない』、っていう言葉を突き刺されたわけね」


「何事も総合力の勝負ですからね。

 でも、やっぱり、一番は味だと思います」


 彼女が知れるのは、あくまで『一般的な料理法』であって。

 『秘伝の料理法』ではない。

 この差を埋めるのは、彼女のたゆみない努力なのだ。


「さて、では、再び質問です。

 ハッシュドビーフ、ハヤシライス、ビーフシチューの違いを説明しなさい」






*****






 ここから俺がシンキングタイムに入りますので、皆さまはハヤシライスの映像をお楽しみください






*****






「ハッシュドビーフは細切れ肉をデミグラスソースで煮たもの。

 ハヤシライスはハッシュドビーフとおおよそ同じ。

 ビーフシチューは大きめに切った具材を煮込んで、デミグラスソースなどで味を調整したもの。

 こんなので、どうでしょうか?」


「その解釈でいいと思うわ。

 ハッシュドビーフとハヤシライスの違いは諸説あるらしいし。

 ハッシュドビーフとビーフシチュー、両方ともデミグラスソースを使うのよね」


「ハッシュドビーフとビーフシチューを提供するためにも、デミグラスソースを作れないといけないんですね」


 ハヤシライスもビーフシチューも。

 提供できれば、その喫茶店の格が一気に上がる。

 そんな勝手なイメージがあります。

 夢、広がる。


「じゃあ、ここから、デミグラスソースの作り方に入るわね」


・牛肉と野菜(玉葱、人参、セロリ)と水を入れ、アクをとりながら半量くらいになるまで煮込む

・時間はわからない、8時間くらい?

・同時に、ワイン、トマトを入れて風味づけする

・これを2〜3日繰り返して、より濃厚なスープにする

・小麦粉をバターで色づくまで炒める(ここで出来上がるものを『ルー』と呼ぶ)

・ルーとスープを混ぜる

・完成


「8時間を3日!?」


「手間暇のかかる料理なのよ。

 わかったかしら?

 それにこれはあくまで基本であって、各店ごとに特色を加えるわ」


MILK FARMミルクファームでは、どんな特色を加えてるんですか?」


「企業秘密です」


「ですよねー」


「面倒ならウスターソースとケチャップ混ぜればいいんじゃない。

 まあ、ウスターソースがないんだけどね」


「ウスターソースって、何者なんですか?」


・『ウスター』は、イギリスの地名

・野菜果実(トマト、たまねぎ、にんじん、りんご、にんにく、など?)に、調味料(食塩、砂糖、酢、香辛料)を加え、『熟成』させたもの


「熟成、つまり何日も寝かすわけだけど。

 あなたにそんな衛生管理ができて?

 完璧なウスターソースが作れれば、それだけで企業、つくれるわ」


「ウスターソースって、すごいんですね」

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