転生特典の数は最高10個、最低0個です

 その瞬間、死んだと思いました。

 あと、『もしかしたら、恋、始まるかも』、とか思ってたの、終わりました。

 さようなら。

 もう、シラを切るの、やめよう。


「なんで、『競合』って、わかったんですか」


「ケチャップの味、確認してましたよね。

 そして、何より」


「何より」


「コーヒーミルを持って入店する人。

 私、初めて見ました」


 あー、しまったー。

 先に、喫茶店に置いてくればよかった。

 でも、喫茶店に一旦帰ってたら、ちょうどお昼時になって人が多いって思ったんだよなぁ。


「つまり、入店時から、バレてたんですね」


「ミル、高級品ですからね。

 でも、正確には、『目をつけていた』、が正解です」


「あははー」


 そして、ここから、事態は。

 本当に。

 本当に。

 予想もしない、方向に進むのでした。


「では、ここでクイズです。

 私は、もう1つの理由で、あなたが『只者』ではない。

 それを理解していました。

 その理由は、一体、何でしょうか?」


 彼女は、ウィンクして、右手の人差し指を立てる。

 信じられないほどの愛嬌あいきょうだが。

 俺は、その右手が、どうしても『拳銃』に見えたのだった。


「正解したら、許してあげます。

 では、考えてください」






*****






 ここから俺がシンキングタイムに入りますので、皆さまはウェイトレスさんがシンキングタイム中に、俺の隣りでピョコピョコする姿をお楽しみください






*****






 ピョコピョコする、ウェイトレスさん。

 あー、心がぴょんぴょん、するのやー。

 俺は、その小ジャンプが、1秒刻みであることを理解した。

 時間を計測しているのかもしれない、と思った。

 かわいすぎて、まったく集中できんのですが。


「ヒント、ください」


「『ケチャップ』、です」


「ケチャップ?」


 ・・・


 ・・・


 ・・・


 少し、巻き戻そう。

 なんで、この店は・・・。

 『挽肉ひきにく腸詰ちょうづめ』なんていう。

 この地に根付いていない食べ物を、提供できたんだろう。

 おそらく。

 食品の仕入れルートを、うまく開拓できているから、だと予測。


 それならば、ケチャップも、自家製ではなく、輸入品だったのではないだろうか?

 そうすると・・・。


「はい、時間切れでーす!」


「やっぱり、時間、はかってたんですね」


「はい、では、正解です。

 正解は・・・。

 この世界にはまだ、『ケチャップ』という言葉が、どこにも存在していないからでした!

 転生者さん!」


 その瞬間!

 俺の首元にナイフが突きつけられる!

 そのナイフは・・・

 すぐに引っ込んだ。


 が、しかし。

 俺の肝っ玉は。

 完全に、引っこ抜かれてしまったのである。


「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」


「壊れましたか。

 でも、油断したらダメですよ。

 如何いかなるときも。

 ここは、異世界という名前の『戦場』なのですから」


「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」


「・・・」


「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」


「・・・」


「あーーーーーーー・・・。

 いうえお。

 俺、生きてる!」


「お目覚めですか」


「おはようございます。

 そして、こんにちわ。

 で、ナイフ、どこから出して、どこにしまったの?」


「企業秘密です」


「ケチャップのレシピは?」


「企業秘密です」


「あなたの転生特典は?」


「企業秘密です」


「あなたの転生特典の個数は?」


「企業秘密です」


「なんで、俺、殺さなかったの?」


「私、殺し屋じゃないですよ。

 ただの、たわむれ、です」


「そんな、遊び、聞いたことないです」


らしました?」


「大丈夫です。

 すみません、最後に1つだけ注文していいですか?」


「はい」


「コーヒー、1杯ください」


「かしこまりました。

 少々、お待ちください」

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