三十五話 現代のチート能力者
「しくじったかもしんない……」
8人のチート能力者による企業経営を期待して配信でもVtuberを募集したりしたんだが。
思ってたのと違う結果になって正直、動揺している。
いや、確かに目論み通りにはなったんだ。当面の衣食住とVtuber企業への就職と引き換えに俺がチートを指定することは出来たし。
元ニートだからって変質者がいたわけでもない。やっぱニートだから犯罪事件を起こすってのは偏見だよ。
引き出し屋の件で他に行き場もないと必死だしね。今のところ真面目に仕事に必要なスキルアップをしてるし不満はない。
そうスキルアップ。チート能力者にも関わらず、それが必要なことが問題なのだ。
「リンクチートもゲーム内でのシンクロ率を鍛えなきゃいけなかったし、そういうモノじゃないの?」
「修練は必要だったけど、変身自体は最初から出来てたでしょ。彼らはチート能力と言えるような異能が何一つとして発揮できてない」
他者覚醒でチートを与えたのは間違いない。既に覚醒させた人間に覚醒チートは施せないので一発で分かる。
それにも関わらずチート能力の片鱗が見えないってことは、そういう仕様のチートを与えたってことだ。
「俺か? 俺が原因なのか? 俺がチート内容を指定したから?」
全ての事情、いや俺の三つのチートの詳細を話すことで神様転生方式のチートフォーマットになる。これは姉で証明されてる。
でも、姉は俺にチートの要望をした。俺と同じように。
今回はVtuber運営に必要だと思えるような技術に関するチートを俺が与えた。このチート選択に相手の意志は反映されていない。
それが神様転生方式のチートとは別のチートフォーマットへと変貌する条件だったのかもしれない。
「でも彼らは一般人じゃないよ。少なくとも一月もしない内に3Dモデルを作成できる程、成長するなんて普通じゃない」
「漫画家やイラストレーターのチートを授けた奴の絵とかエグいほど力量が上がってるのが分かるもんな。一人なら隠れた才能だった可能性はあるけど二人ともだから、これはチートの恩恵だ」
与えたチートはVtuberの裏方に必要だと思える各種職業のものにしている。
漫画家、イラストレーター、デザイナー、歌手、ダンサー、ミュージシャン、プログラマー、翻訳家。
ちょっと芸術方面に偏り過ぎてるかもしれないが、経営に関してはユカリとの共同経営になったので、あいつに全部任せることにしたから問題ない。
別の不安はあるが、事業の成功は約束されたようなもんだ。少なくとも案件は幾らでも持ってこられるだろう。
ユカリも表の身分が欲しかったのでちょうど良かったと笑っていた。怖い。
「まさか才能なのか? 天才と言えるほどの圧倒的な才能をチートとして与えた?」
確かにその道に精通している人間を天職だとか、天に才能を与えられたとか言うけれど。
それで出来ることは人間の領域を超えない。リンクやエナジードレインや霊能力のような超常的な力ではないだろう。
これはチートと言うよりはギフトだな。生まれながらに持つかもしれない天からプレゼントされた才能。
「ギフト。なるほど、しっくりくるね」
「現代で誰も魂の力を覚醒していないのは変だとは思ってたんだよ。少なくとも歴史上で異能の存在は何度も出てきている。現代の人口が過去の人口の何倍だと思ってるんだ。200年前の7倍はあるとされてるんだぞ。誰かは覚醒してないとおかしいだろ」
何のことはない。方向性が違うだけでチート能力者はずっといたのだ。
チートに重要な要素として自分だけの現実が上げられる。これは覚醒するチートの方向性を決めるほどの力を持っている。
たとえチートに覚醒するほど魂の力を秘める存在がいても、現実にはファンタジー的なことはないと、非科学的だという認識を持ってるならば、覚醒するチートはギフトになる。せいぜい天才だともてはやされるだけだ。
なるほど、そりゃ異能力者なんて現れないわ。あればいいなって願望じゃ駄目なんだ。異能は実在すると確信を持ってないと自分だけの現実とは言えない。
「そういえば超能力ブームの際は次々と自分もそうだという子供が現れていたっけ。ペテンだと叩かれていたけど」
「あれは本物の超能力だったの?」
「かもしれない。手品だと常識的な思想を植え付けられて自分だけの現実が崩壊したのかも。超能力から手品のギフトへとチートが変貌したと考えれば」
拓巳の霊能力みたいに半覚醒状態だっただろうし、容易く能力が変容しても驚かない。
そういえば子供の頃は幽霊が見えていたって人間も結構いるんだっけ。
拓巳も気のせいなのかと自分の常識を疑っていれば霊能力をなくしていたのかもな。運のない奴だ。
「そうなんだ。確かに色々と筋が通るね。ん? あの、それだともしかして、Vtuber運営は……」
「普通に正攻法で挑むことになりそう」
どうしよう。もう、後戻りなんて出来ないぞ。
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