一話 ネカマ姫リアルに爆誕☆

「そんでマジ、どうするか……」


 朝、目が覚めたら女になってたとかTS物の王道だけど、現代社会で戸籍のない状態で放り出されるとか割と致命的なんだよな。

 外見はどう見ても外国人だし不法滞在を疑われて国外退去させられる可能性が高い。

 日本語しか真面に話せないのに海外に放り出されても生きていけないぞ?

 14歳くらいの未成年だし身元がハッキリしないなら孤児院に預けられるだろうか。


「とにかく金は持っておかないと。通帳とクレジットカードから引き出せるだけ金を下ろしておくかな」


 二百万くらいは貯金があるから全額を現金にしてリックにでも放り込んでおこう。

 返済する気がないのに借金をするのは家族に迷惑が掛かるから止めておこうかな……。どっちにしろ俺が行方不明だってことで警察には追われるかもしれないけど、資金的な負担はない方が良いでしょ。


「でも職場からの通話を無視しても無断欠勤と思われるだけで済むよな。2,3日は」


 変にスマホで連絡を取って言い訳すると警察に嗅ぎつけられた時に面倒くさい。社会人としてマナーがなってないとか、どうでもいい。

 ギリギリまでは借りてるマンションで暮らそう。のんびり出来る内はのんびりするのだ。


「ああ、せっかく無断欠勤もとい自主休暇なんだしネトゲするかな」


 銀行口座も凍結されるだろうしネトゲも強制引退か。鬱だ。

 別にVRゲームが登場するほど科学技術が進んでるわけでもないので起動したネトゲはごく普通のブラウザゲーム。

 定番のファンタジー世界観とギルド戦が売りのゲームだ。よくある奴。手垢の付いた十把一絡げのゲームだと思うだろうけど、テンプレはテンプレで需要はなくならないんだよな。

 タイトルはブレイブソルジャー。少なくとも3年は続いてるから人気があるといって良い。


「あ、タラコ唇さんだ。オィッスー」


【お姫ちん、おいっすー^^】【こんちわわっ】【姫様キター】


 うん。実はネトゲでネカマしてる。しかも姫プレイ。

 我ながらド変態だな。おっさんが男に囲まれてニヤニヤしてるのを想像すると軽く死にたくなるわ。

 まあ、今は金髪碧眼の美少女だけどね! ゲームとはいえ女の子といちゃいちゃ出来て彼らも本望じゃないかな!


「あ、そいや下僕化チートって相手の同意さえありゃいいんだっけ。個人識別に名前は必要だけど本名じゃないといけないってわけでもないよな……」


 これはいけるのでは? 直に会ってチートを渡すから問題になるんであってネトゲで顔も知らないなら特定しようがないし。

 ネトゲに熱中すればするほど現実のリア充レベルは下がる傾向があるって何かよく聞くから、チート貰って人生大逆転でもしたらリアルでも忠実な犬になってくれるかもしれない。

 あれ、何でだろう何故か涙が……。


「ふぐぅ。いいんだ、神様からチートを貰えたんだから俺は何も間違っていなかったんだ」


 そうさ。社畜のネカマ姫なんて世間に後ろ指を指されようと神様は認めてくれたっ。お前は何も間違っちゃいない。性癖のまま突き進めって。


 何故か全力で首を横に振る神様の幻覚が見えた気がしたけど気のせいだろう。


「よーし、それなら垢BANされる前に勧誘しなきゃ。えっと、力が欲しいかっと」

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