第24話 王立魔法学園
「新入生の皆さん、この王立魔法学園に入学おめでとう。皆さんは、この由緒ある学園で学び研鑽して更なる高みに至って頂きたい。
昨今の魔法技術は一応の躍進を遂げてますが、まだまだそれは、魔法という叡智の一端にすぎません。この学園では、各国から最新の魔法技術を取り入れ、また、この学園で発見した新たな魔法の術式を各国に提供しております。ここでは国という境界、身分という境界はありません。各々が切磋琢磨して更なる勉学に勤しみ、己が国の為、世界の為に貢献する人物となって頂きたい。
そして……」
聖王国ミストラルの王立魔法学園で入学式が行われていた。
生徒達は、殆どの者が胸を張ってこの入学式に臨んでいる。
どの世界でもお偉いさんの話は長いものだが、生徒達はお喋りもせずその言葉を聞いていた。
シャルロッテも他の生徒と同じように心躍らせながら、その話を聞いていた。
この講堂での入学式が終わると、自分のクラスに戻ってオリエンテーションを受ける予定になっている。
入学式が終わり、生徒達は、それぞれの教室に向かって歩き出す。
教室はSクラス・Aクラス・BクラスというふうにEクラスまで分かれており、概ね成績順でクラス分けがされている。
シャルロッテは、自分のクラスであるSクラスの教室に入り、窓際の後方の席に腰掛けた。
「シャルロッテ様、入学式はどうでしたか?」
シャルロッテと同じくらいの歳の頭に耳を生やしている獣人の女の子がシャルロッテの脇に腰掛けて感想を聞いてきた。
「ええ、とても有意義な時間でした。ミリスも来賓席で見ていたのでしょう。どうだった?」
「私もそう思いました」
獣人の女の子、名前をミリスという。
この学園は申請すれば従者を1人だけ側に置くことができる。
学術的な授業は一緒に受けることができるが、基本的には主人の護衛であり実戦形式の授業は受けられない。
シャルロッテとミリスは一緒に同じ寮の同じ部屋で寝泊まりをしている。
小さな頃から一緒にいるこの二人は主従の関係だが、友人のように仲が良かった。
聖王国ミストラルには、色々な種族がおり獣人も珍しくはない。
このクラスにも数人人族以外の者がいた
だが、国によっては人族主義を掲げている国もあり、他種族が迫害されている事実がある。
教室のドアが開き、一人の女性が入って来た。
年齢は20代半ばの凛と背筋が伸びてる女性だ。
シャルロッテはその女性を見て、思わず懐かしい気持ちになった。
彼女は、数年前までシャルロッテの屋敷に一緒に住んでいたからだ。
「え〜〜私がこのクラスを受け持つ事になったカトリーナ・クラークです。分からないことが有れば遠慮なく聞いて下さい。
それでは、これからの事を話します。まず、授業の件ですがこの1年間は基本的にこのクラスで授業を受けてもらいます。来年度からは殆ど選択科目になり、それぞれ学びたい科目の授業を受ける事になります。
それと、新入生歓迎の為のレセプションが来月行われます。大森林手前の街コネットに1週間程滞在して魔獣狩りをします。実践経験のある3年生以上の有志の方と騎士学校の生徒達、それと冒険者の方も同行しますので安全には気をつけています。この魔獣狩りは、皆さんのレベル上げを目的にしています。Sクラスは、Aクラス、Bクラスと合同になります。日程、用意する物は、明日書類を渡しますので眼を通すように。それと各々が必要とする物は持って行っても構いません」
一瞬、教室内が騒つくが先生が話し始めると私語は納まった。
「明日は、身体測定がありますのでお忘れなく。今日は授業はありません、これで連絡事項は終わりですが、分からないことが有れば私は教職員室にいますので訪ねてくるように。自己紹介等は各々が済ませて下さい。以上」
先生はそう言って教室を出て行ってしまった。
「シャルロッテ様、カトリーナ様でしたね」
「ええ、びっくりしました。お祖父様に弟子入りして優秀なのは知ってましたけど、教員になられているとは知りませんでした」
「お元気そうで何よりですね」
ミリスと会話しながら、寮に帰るかどうか迷っていると、見知った人達がシャルロッテの前に現れた。
「シャルロッテ様、先日ぶりですね」
そう挨拶してきたのは、王城で寝泊まりしてた時に友人となったミストラル国王家第三王女のリリアーナ・マクスウェルだった。
「これはご挨拶が遅れて申し訳ありません。リリアーナ様」
「「ふふ……ははは」」
「シャル、畏まった言い方も悪くないわよ」
「リリーこそさすが王女様ですね。田舎者の私ではその雰囲気は出せません」
突然、目を合わせて笑い合う二人は、歳も同じせいかすっかり仲良しになっていた。
それに2人とも4属性に適性のあるクアドラプルと言われる魔法使いであり、この世界では希少な存在でもある。
「リリーはこれからどうするの?」
「私は、来賓の方が来られるそうで、直ぐにでも帰らないといけないのです」
「そうでしたか、それは残念です。一緒に街をまわりたかったのですけど」
「そうね、私も残念に思います」
「リリアーナ様、そろそろ」
そう声をかけたのは、リリアーナの背後に控えるクリスティーナ・レイルド。
20歳前後の女性騎士でこの学校ではリリアーナの護衛兼侍女の役割を任されている。
クリスティーナは、シャルロッテとその侍女エリスに目礼をして、リリアーナを連れて教室を出て行った。
「はあ、行ってしまいましたね」
「残念ですが王女様です。ご一緒に街の散策をされるのはお控えになった方がよろしいかと」
「残念ですが、仕方ありませんね。でも、ミリスは付き合ってくれるのよね」
「はい、お供します」
残念そうなシャルロッテだったが、ミリスの言葉で元気になる。
この王都で有名なお菓子があると耳に挟んでいたので、是非ともそれを食べたかったのだ。
ミリスを伴って教室を出ようとすると、いきなり男子が前に立ち塞がった。
「私は、ガリシア帝国第18王子のダリル・ガリシアだ。そこの獣人は目障りだ。私の視界から消えるが良い」
自らシャルロッテの前に立ち塞がり、獣人のミリスを目障りだと文句をつけてきた。
ガリシア帝国は、人族主義の専制国家である為祖国ではこういう行為は日常的となっているようで悪いと全く思っていない様子だ。
だが、シャルロッテは、その物言いに頭にきていた。
「ミリスは私の大事な従者で友人です。この学園では従者の同行は許されております。貴方様にとにかく言われるような事はしておりません。失礼」
そう言ってミリスの手を繋いでその場から立ち去ろうとしたのだが、顔を真っ赤にしたダリルは、その口を開いた。
「無礼だぞ、この私に口答えするとは良い度胸だ。其方に決闘を申し込む!お主らが負けたその時は、その獣人共々泣き叫ぶほど可愛がってやろう」
ダリルの後ろに控えていた青年が「あちゃー」と、言いながらしかめた顔に自分の手を当てた。
「決闘を受ける気はありません。私は忙しいのでこれで失礼します」
シャルロッテも頭にきていたので得意の魔法でボコボコにしてやっても良いと思ってはいたのだが、相手がガリシア帝国の王子となればそうもいかない。この学校では身分の境界はないと公言しているのだが、王族と一般貴族、そして平民の間には歴然とした身分による境が実在している。
「待て!臆病者め。決闘を辞退するとはお主の家名に泥を塗る事と同義であるぞ。それとも、お主は家名も持たぬ平民であるか?穢れた血が流れる獣人を従者にしているのだ。そうとしか思えん。どこかの商人の娘なら仕方があるまい。平民には、高貴な血は流れておらんからな。わははは」
シャルロッテは、そう言われて我慢できる女性ではなかった。
大好きなミリスやお祖父様までバカにされたのも同然、相手の煽りに思わず返事をしようとした時、その場を見ていた一人の女性が声をかけた。
「口を挟むつもりはなかったのだがな。そこの者があまりにも見過ごせない事を言ったのでな。悪いが口出させてもらう」
そう言ってきたのは、背後にガタイの良い獣人の兵士を連れている女子だった。
「ははは、何を言っている。私はガリシア帝国の王子だぞ。無礼者め」
だが、その女子は凛とした姿ではっきりした口調で語りかけた。
「挨拶がまだであったな。私はリンドブルク国の第一王女ステファニー・リンドブルクだ。私の母親は獣人であるが、お主のように穢れた血なのか?私にもその血が半分流れているのだが、どうなのだ。返答次第では相応の覚悟をしてもらうぞ」
ステファニーの背後に控えるのも簡易な鎧を着込んだガタイの良い兵士だ。
鋭い眼光でダリルとその背後の青年を睨みつけている。
焦ったのは後ろに控えていた青年だ。
ダリルに何やら耳打ちをしている。
「そうか、そうだったな。今日は用事があったのを忘れていた。では、またな」
ダリルはあっさりと引き下がった。
「まだ、話がついてないようだが?」
ステファニーは、毅然と立ちダリルを睨みつける。
「お主達と違って私は忙しい身だ。失礼するよ」
そう言ったダリルは、青年と逃げるようにその場から居なくなった。
「お嬢、良かったんですか?」
「ああ、ああいう輩は掃いて捨てるほどいる。そんな奴にいちいち相手をしてやる暇などこちらには無い」
獣人の従者に問いかけられて、そう答えるステファニー。
その性格は男っぽいようだ。
「あの〜〜この度は私達の為にありがとうございました」
シャルロッテがそうお礼を言うとえも頭を下げた。
「先程も言った通り、私にも口を挟まなければならない事情があった。こちらこそ、間に入ってしまい申し訳ない」
ステファニーは、そう謝罪を口にした。
「あ、自己紹介がまだでしたね。私はシャルロッテ・ルーズベルトです。こちらは従者のミリスです。ステファニー様、感謝申し上げます」
シャルロッテが挨拶すると、ステファニーは驚いたような顔で問いかけた。
「ルーズベルトと言ったか。もしかして賢者様のお身内の方か?」
「はい、賢者クライン・ルーズベルトは私の祖父になります」
そう答えた瞬間、ステファニーは大きな声で笑った。
「わははは、あのダリルとやら、命拾いをしたものだ。私は、結果的にあやつの命を救った事になるな。わははは」
そんなステファニーを見てシャルロッテとミリスもおかしくて笑みを浮かべたのだった。
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