第745話 アヴィドダンジョン・15
「強かったわね」
ポイズンフロッグを倒したところでルリカが呟いた。
舌による攻撃は激しかったが、致命的な脅威とはならなかった。
それはあくまで挑発が効いていて、攻撃の対象が俺だったからだ。
もしこれが一対一で麻痺耐性がない人だったら、危なかった。
資料にも麻痺に関する記述はなかったような気がする。少なくとも俺の読んだものには記述がなかったはずだ。
それともう一つ、戦った後に気付いたのがポイズンフロッグを攻撃するのに使用した武器の表面がコーティングされていたことだ。
触れるとぬるぬるしていた。あまり触っていたくない感触だ。
これはポイズンフロッグの体を覆っていた粘液?
拭って取ろうとしたけど頑固な汚れみたいになかなか取れない。
ただ火で熱したら溶けた。
ポイズンフロッグに斬撃が効くようになったのも、クリスが使ったヒートサークルが体を覆っていた粘液を溶かしたからなのか?
「クリス、知っててヒートサークルを使ったのか?」
「資料に熱が弱いようなことが書いてあった気がして、それで試しました」
「そうなのか?」
それは気付かなかった。
話を聞いて思い出せないということは目にしていないんだろう。
一度でも目にすれば記憶スキルがあるから覚えているはずだし。
「はい。ただ効果があったのはいいのですが、中に入ると私たちもダメージが入るので、接近戦で戦うなら耐熱装備が必要になってくると思います」
「耐熱装備のローブは動きを阻害したりするからな……。とりあえず挑発で一体ずつ誘き寄せて、ヒカリに処理してもらうのが一番安全かもな」
ということでポイズンフロッグ狩りを再開することにした。
戦い方は予定通り挑発で誘導し、クリスがヒートサークルを使ってヒカリが止めを刺す。
死体を回収したら再び挑発でポイズンフロッグを呼び出してを繰り返して、人数分の魔石を集めて、さらに余分に狩って素材を確保した。
初めて戦う魔物だし、錬金術や創造で使えるかもしれないからな。
何が作れるかの確認はまた時間がある時だ。
他にやることがあると忘れるかもしれないが、アイテムボックスに入れておけば駄目になることもないから問題ない。
本当はもう少し狩れたらと思ったけど、遠見スキルで視認出来る範囲にはいないから仕方ない。
反応自体はまだあるけど、沼地に潜っているのか姿が見えない。
そうなると挑発で呼ぶことも出来ないから現状手が出せない。
沼地に入って行くわけにはいかないからな。
足を取られるかもしれないし、底なし沼なんてこともありうる。
そこで俺たちは沼地を離れて、池のある方に移動した。
「主、魔物が近付いてきてる」
「ああ、そのようだ」
全部ではないが、一部のシーデビルたちが移動を開始し始めたのが反応で分かった。
ただ池の中に留まって外には出てきていない。
遠見スキルで確認したが、木の陰に隠れていて視認することが出来ない。
これだと挑発を使って一体ずつ誘き寄せることは無理だ。
「ならもっと近付いてみる?」
「そろそろ日が暮れそうだし、今日のところは止めておいた方がいいんじゃないか?」
引いた水が戻ってくるまでにはまだ時間があるし、無理をする必要もない。
ただ近付いてきたのに留まっているのが気になる。
夜襲を狙っている?
「確かに気になる行動だな。見張りは特に警戒する必要があるかもしれないな」
そのことを伝えるとアルゴも何かを感じ取ったようだ。
池から離れた森の中に開けた場所を見つけたため、そこを野営地に決めた。
そこでミアたちに料理を任せて、俺たちはヒカリとギルバートの指示に従って周囲に罠をつくっていく。
音で敵の接近を知らせる鳴子と、地面を踏むと作動する罠をいくつか設置した。
といっても丸太が飛ぶとか原始的なものだからこれで倒せるとは思わない。
あくまで時間稼ぎが少しでも出来たらいいなぐらいだ。
「主、魔法で壁とか出来ない?」
「長時間の維持は難しいな」
ダンジョンによっては地面の土を利用して建物を建てることも出来るけど、アヴィドダンジョンではそれが出来ない。
出来れば防壁とか作るんだけどな。
食事が終わったらチームを組んで見張りをする。
三つの組に分かれるが、最初にヒカリとギルフォードが、次に俺とギルフォードが、最後に俺とルリカがいった感じで、気配察知系のスキルを持つものが担当することになった。
「ソラはそれで大丈夫か? 正直俺の方は戦闘で休んでいるようなもんだったから疲れてないけど、ソラは戦いっぱなしだっただろう?」
「俺も大丈夫だよ」
確かに挑発を使える俺はずっとポイズンフロッグと戦っていたけど、慣れてくると攻撃を受ける前にヒカリとクリスの連携で倒していたけら、最後の方は挑発を使っていただけだったし、何より歩いている時は疲労しないから、体力的には既に回復している。
自然回復向上のスキルの効果も地味に効いている。
「……分かった。だが辛いようなら言えよ? まだまだダンジョン探索は続くんだからよ。ソラに倒れられると色々と大変だからな」
ギルフォードが心から心配してくれていることが良く分かった。
俺は素直に頷くと、体を休めることに集中した。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます