第740話 アヴィドダンジョン・10

 三階に入って三日が経った。

 全てではないが水位の変動の確認が終わり、魔物とも戦った。

 戦った魔物はサハギンとクラゲッソーとウォータースライムの三種だ。

 サハギンは半魚人の魔物で、ゴブリンとオークを足して二で割った強さの魔物だ。

 強くはないが数が多い。

 ただ攻撃が物理攻撃の接近戦のみだったから苦戦することはなかった。

 魔法を使ってきたら苦戦を強いられていたかもしれない。

 あと陸地で待ち構えていたら近付いてきたから陸地で戦うことが出来た。

 クラゲッソーはクラゲの魔物で、陸上では一切動けない魔物だが、水が抜けると透明になって視認出来なくなるという特性を持っている。

 それに気付かずに踏むと自爆するため注意が必要だ。

 ただ標的を選ぶことが出来ないみたいで、サハギンも巻き込まれていた。

 自爆すると魔石が入手出来ないため、自爆させないように倒す必要がある。

 倒すには魔法が必須だが、MAPで反応が分かっている俺にとっては楽な相手だった。

 ちなみに水中だと電撃を放ってくるそうだ。

 最後のウォータースライムは普段は小さいが、敵を見つけると大きく膨らむ。

 膨らんだ状態で飛び掛かってきてそのまま体の中に標的を呑み込み、窒息させようとしてくる。

 倒し方は魔石を破壊するか、火属性の魔法で攻撃するか、呑み込まれた状態で内部から体を形成する膜を斬り裂く必要がある。

 これは予め知っていないと混乱するに違いない。

 俺たち? もちろん知っていたから対処出来た。

 とはいえ、知っていても丸呑みされたら焦る。

 丸呑みされた本人というよりも、周囲で見ていた人たちがだけど。

 あとはあくまで窒息されるだけだからまだよかった。

 これが呑み込んだものを溶かすとかあったらもっと脅威だったに違いない。


「それでソラ、これが新作?」

「ああ、とりあえず履いてサイズ確認してもらえるか?」


 ミアに聞かれたから俺は頷いた。

 俺は倒したサハギンとクラゲッソーの素材を使ってブーツを作製した。

 ひざ下まである長めのブーツで、防水仕様で感電対策が施されている。

 これで浅い水場ならこれで自由に動くことが出来る。

 あとはクラゲッソーを誤って踏んでも、自爆の被害を受けないという追加効果もある。


「ある意味俺たちにとってはこれが一番嬉しいな」


 自爆の被害を受けないことを聞いたアルゴたちが頷く。

 その履き心地の確認をしてもらい、微調整をして完成した。


「効率を考えるなら分かれた方がいいと思うがどうする?」

「……今のままでいいんじゃないか? 初めて戦う魔物ばかりだし、多いところは魔物が固まっているみたいだしさ」

「そう言って、本当はクリスちゃんたちと離れたくないだけなんじゃないのか?」


 俺が答えるとアルゴが揶揄ってきた。

 確かに二手に分かれるとなると、俺がアルゴたちのパーティーに入ることになる。

 ここは倒すのに魔法が必要になってくる魔物がいる。

 アルゴたちのパーティーは物理攻撃特化だから、攻撃魔法も回復魔法も使える俺が入るとちょうどバランスが良くなる。


「アルゴ、馬鹿なことを言ってないで真面目にやれ。遊びじゃないんだぞ」


 ギルフォードはため息を吐きながら言ったが、アルゴが本気で言っていないのは分かっているはずだ。


「とりあえず近くにいる魔物から潰していこう。次に戦うことになるのはリーパーとフロストゲーターになると思う」


 前まではMAPで分かるのは魔物がいるということだけだったけど、遠見スキルのお陰で何の魔物がいるか分かる。

 一度戦えばある程度魔力の強さなどで何の魔物かは分かるようになるけど、初見の魔物だとこうもいかない。

 資料の中には魔物のイラストがないのもいたが、そこは鑑定を使えば何の魔物かが分かる。

 遠見スキルと鑑定スキルを使うことで、距離が離れていても鑑定することが出来るようになっているからだ。

 リーパーは魚に羽の生えた魔物で、短い時間だけど空を飛ぶことが出来る。

 鋭い牙を持っていて切れ味抜群。噛み付かれると危険と資料にはあった。

 他には超音波による回避不可能の攻撃をしてくる。

 音波攻撃に関しては攻撃範囲が直線と限定的で、射程も短いから回避することは十分可能だ。

 フロストゲーターはワニ型の魔物で、氷魔法を使ってくる。

 体を氷で覆って攻撃を防いだり、地面を凍らせて移動を阻害してくる。

 しかも自身は凍った上を素早く動けるということだ。

 多彩な魔法攻撃を使ってくるけど接近戦も強く、噛み付き攻撃は鉄をも砕くということだ。


「遠距離で倒すのが定石って感じの敵ね」

「ヒカリに任せる」


 ルリカの言葉を受けて、ヒカリが短剣を抜く。

 斬撃を飛ばせば近付かなくて攻撃出来るからな。


「それとリーパーは空を飛べるっていっても急旋回は無理みたいだから、動きをよく見れば接近されても躱すことは出来そうかな。カウンターを狙うのはありだと思う」

「なら同時に相手するようだったらリーパーは俺たちが、フロストゲーターは遠距離組に任せるとするか」


 俺の説明にアルゴが答えると、リックたちも頷いた。

 分担が決まったところで、俺たちはリーパーとフロストゲーターを狩るため移動を開始した。

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