第737話 閑話・未来視
計画は順調に進んでいる。
ゴブリンの集落を複数支配し、拠点を岩山の中にある洞窟に移した。
束縛することなく自由に生活させた。
とりあえず人に見つからないように生活するようにだけ命じた。
その間私がやったのは人間殺しと魔物狩り。森の中で冒険者を発見し、これを狩った。次に同じように森にいたウルフを狩り、他にはオークとオーガを狩った。
オーガは森の奥でひっそりと目立たず過ごしていた。
数が少なく、倒した時に彼らが人間から逃げてきたことが分かった。
そこで種を増やしているところを私に見つかり滅ぼされた感じだ。
この生活で私はさらに四つのスキルを得た。
【特殊召喚】
これは倒した種族を召喚出来るというものだ。
例えばゴブリンを殺したらゴブリンを、ウルフを殺したらウルフを、オークを殺したらオークを召喚出来る。
ただし例外があって人間を殺しても人間を召喚するものは無理みたいだ。
あとは私が強くなることで、一度に召喚出来る個体も増やすことが出来るみたいだ。
また個体の増やし方は私が強くなるだけでなく、人間を一人殺すごとに一体増えることも分かった。
これからは人間もある程度積極的に殺す必要がありそうだ。
【成長】
これは私の成長を強化するというものだが、もう一つ、私が成長することで特殊召喚した個体も強化されていくようだ。
私が強くなるほど召喚した魔物が強くなる。最高だ。
他にも召喚した魔物が敵を倒すことで、私が勝手に成長する。本当に最高だ。
【傀儡】
これは他者を操ることが出来るというものだ。
相手が強いと駄目なようだ。
ただ死体なら確実に操ることが出来る。
しかも操り方は簡単。指示を出しておけばいい。
もっとも複雑な命令は無理みたいだが、十分だろう。
これは殺した人間に使えそうだ。
【魔法書庫】
これは魔法を使えるようになるスキルだ。
しかし魔法の習得方法が特殊で、敵を倒すことで魔法の習得ポイントなるものが溜まるようで、それがある程度溜まると習得可能な魔法を自分で選択して使えるようになるようだ。
またこのポイントは魔法の習得だけでなく強化にも使う。
強化しないとその属性の上位魔法が使えるようにならないらしい。
いまひとつ私には理解出来なかったが、とにかく敵を殺せばいいということだけは分かった。
それから長い月日が流れた。
人を殺し、魔物を殺し成長していたが、徐々にその速度は遅くなっていった。
これが私の限界か? と思ったがそれを否定する私がいた。
そう、数だ。数が足りない。
もっとたくさん、たくさん殺す必要がある。
しかしこの近辺に生息していた魔物は全て殺し尽くした。残るは飼っているゴブリンぐらいだ。
なら次の段階に進むしかない。
本当は分かっていた。
魔物以上に、人間を殺した方が成長が早いことが。
ただ今まで本格的に動かなかったのは、まだそこまでの自信がなかったからだ。
決して人間を侮ってはいけない。
それはあの暗い街で、死にかけた記憶が今なお残っているからだろう。
そんな時だった。
未来視が発動した。
そこに見えたのは、私の拠点とした洞窟が襲われるという未来だった。
私はそれを見て決めた。
あの黒い街を襲う前の予行演習をしようと。
今の自分が何処まで強くなったかということを確認しようと。
ただ真正面からは挑もうとは思わない。
昔の私だったらそうしていたかもしれないが、今は数多くの知識を得ている。
人間というものは、本当に残酷で、嘘つきで、汚い。
それを思うと、ある意味魔物の方が潔く感じる。
魔物は本能に正直で、真っ直ぐだからだ。
考える力が著しく低いというだけかもしれないが。
私は計画を練り、実行した。
洞窟に人間が入ったのを確認して、中で閉じ込めることにした。
ゴブリンたちでは人間を倒すことは出来ないだろうが、これで外に出ることは出来ないだろう。
その後村を襲い、街道を移動する人間たちを襲った。
森の中を隠れるように移動する人間がいたからそいつらも襲った。
何人かには逃げられたが、深追いはしなかった。
そして目立つ動きをしていると、やがて私たちを倒そうとする集団が姿を現した。
もちろん返り討ちにして、殺した人間に傀儡をかけた。
これで準備は完了だ。
人間は死体を持ち帰るという習慣があるようだから、それを利用する。
ここまで来たら後戻りは出来ない。
リスクを冒したけど、それなりの見返りもあった。
特殊召喚の召喚出来る個体数が増えたし、ポイントが溜まっていくつかの魔法も習得出来た。
ただ残念ながら、新しいスキルは習得出来なかった。
今回私が狙うのはアヴィドという町だ。
ダンジョンがある町で、鍛冶が盛んらしい。
ダンジョンがあるから冒険者の数は多いが、戦力は他のダンジョンがある町と比べると一番低いそうだ。
また領主がケチで、軍隊の人数が他と比べて少ないとのことだ。
これなら簡単に町を滅ぼすことが出来るかもしれない。
「……さて、では始めよう」
死体が町に運ばれて夜がきた。
私は傀儡を発動させる。
町の中から悲鳴が聞こえて、騒がしくなる。
私は特殊召喚で複製体を町の中に呼び出すと、人間たちを襲うように命令した。
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