第712話 ミスリルゴーレム・3

 地面に横たわるミスリルゴーレムからは魔力の反応がなくなっていた。

 一番魔力の強かった場所には、背後から穿たれた穴が開いていた。


「嬢ちゃん、それは……」


 目を大きく見開いたヘルクが声を詰まらせた。

 ミスリルゴーレムの背後にいたのはミア。その頭には耳が、スカートからは尻尾が出ていた。

 ミアが大きく息を吐き出して槍をたてると、耳と尻尾が消えた。

 獣人化を解いたようだ。


「えっと、これはダンジョンで手に入れたスキルだよ。一時的に獣人に変身して、力とかを高めるの」

「な、なるほどのう」


 ミアの答えに、ヘルクは一応納得したようだった。

 実際ダンジョンで手に入れたスキルだから嘘は言っていない。

 あとは余計な詮索はしないという判断かもしれない。


「ソラ、とりあえずそれ仕舞った方がいいと思うよ?」


 ミアに言われて、このまま放置するとミスリルゴーレムが消えてしまうことに気付いた。

 ただ俺たちだけならそのまま回収していいけど、今回はヘルクたちも一緒に戦った。


「それはソラたちのものじゃ。正直わしらじゃ倒せなかったじゃろうしのう」


 俺が話し掛けようとしたらヘルクがその前に言った。

 ただかなり気になるようでミスリルゴーレムの方をチラチラ見ている。

 魔力による強化でかなり上質なミスリルになっていそうだしな。


「とりあえず帰ったらまた話さないか? 俺たちも自分たちの武器を作るにしても全ては必要ないし、欲しいものと交換してくれれば助かるし」


 クリスの魔法を止めたあの強化された盾は欲しいけど、あとは足の一本とちょっとあれば、自分たちの分の武器を作るだけの量は確保出来ると思う。


「う、うむ」


 ヘルクは戸惑いながら頷いた。

 まさか分けてもらえるとは思っていなかった?

 俺はひとまずミスリルゴーレムをアイテムボックスに収納した。


「それでヘルクたちはどうするんだ?」

「ミスリルゴーレムの脅威が去ったわけじゃし、予定通り採掘をするんじゃが……近くで採掘しても良いかのう」

「いいんじゃないか? どうせ俺たちしかいないし」


 俺たちのパーティーメンバーからは反対の声は上がらない。

 そもそも俺たちに許可を取る必要はないと思うのだが、気を遣ったのかな?

 とりあえず激しい戦闘の後ということもあって俺たちは休憩をするとした。

 ヘルクたち二人も休憩をするようだ。


「後で呼びに行くのか?」

「いや、もう連絡は取ったからこっちに向かっておるじゃろう」


 ヘルクが一緒に戦った仲間を見ると、その男は頷いた。

 通信出来る魔道具でも持っているのかもしれない。

 MAPを確認すると、確かに一五の反応がこちらに向かって動いている。

 ただ距離が離れているから、ここまで来るのにまだ時間がかかりそうだ。

 それを考えるとヘルクたちはかなりの距離を駆け抜けてきたことになる。

 休憩を十分とって体力が回復したら採掘を始めた。

 これは俺だけでなくヘルクたちもやり始めた。

 いつもよりも大きな音が坑道内に鳴り響き、それは夕食の時間がくるまで続いた。



「ソラよ。一度ミスリルゴーレムを見せてもらっていいかのう」


 食事を終えて休憩していると、ヘルクが懇願してきた。

 その声にヘルクの同行者も興味の色を示した。

 俺は敷物を広げてミスリルゴーレムをその上に置いた。

 二人は礼を言うと早速ミスリルゴーレムの……ミスリルの状態を調べ始めた。


「採掘の方はこのまま続けてもいいか?」


 ヘルクたちの様子を眺めながら、俺はヒカリたちに尋ねた。


「いいんじゃない? それにミスリルをもう少し採っておきたいんだよね?」

「ああ。さすがにあのミスリルゴーレムのミスリルを納品するのは勿体ないからな」


 ヘルクたちとの交渉で、三階に進むために必要な納品アイテムの目途はたったためこのまま引き上げても良かったりする。

 ただ折角ここまで来たのだから、ある程度は採掘をしたい。

 鑑定したけど何かが埋まってそうなのは分かるからな。

 鉱石類だけでなく宝石類も二階では採れるみたいだし。

 ミスリルゴーレムを一通り調べ終えたヘルクたちは興奮していた。

 とにかく今まで見たことのない質だと今から鍛冶をするのが楽しみだと色々と言ってきた。

 熱く語るその姿に圧倒されっぱなしだ。

 俺も鍛冶は習ったけど、ここまでの熱量で取り組むのは無理だ。


「それでヘルク、見張りの相談をしたいんだが……」


 落ち着いたところで見張りの順番決めをした。


「夜は採掘をしないのか?」

「しないよ。そもそも人数が少ないし、五月蠅いからさ」


 音を遮断することは可能だけど、それはそれで危険だからな。


「確かにこの人数じゃ辛いかのう」


 音に関しては鍛冶場も採掘場と音が変わらないということで、ヘルクたちは気にならないそうだ。

 交代で見張りと休憩をして、翌朝から再び採掘を始めていると酒と鉄槌の人たちが合流した。

 移動を優先していたらしく予定よりも早く合流したけど、その日は結局作業することなく体を休めることにしたようだ。

 頭では無事だと分かっていても、早くヘルクたちの無事な姿を見たかったようだ。

 ヘルクは体力配分も出来ないなんて鍛冶師失格なんて言っていたけど、ちょっと嬉しそうだった。

 けど疲弊するほど急いで半日以上かかったことを考えると、ミスリルゴーレムを引き連れて移動していたヘルクたちの体力は普通に凄いと思った。

 その後俺たちは一週間採掘して、ヘルクたちと共にダンジョンを出ることになった。

 普段なら一度ダンジョンに入ったヘルクたちがこんなに早くダンジョンから出ることはないらしいが、あのミスリルがかなり気になっているようでルールを曲げたみたいだ。

 そして一緒にダンジョンを出た俺たちは……正確には俺たちパーティー六人は、そこでギルドの職員に拘束されて牢屋へと連れて行かれた。

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