第710話 ミスリルゴーレム・1
「主、敵」
その一言を聞いて飛び起きた。
ヒカリが起こしたということは朝に近い時間か?
まだ少し重さの残る頭で気配察知と魔力察知を使えば、確かに近くに反応がある。
けどこれは……魔物以外に人の反応もある。
掘り進めた穴から出ると、反対側からクリスたちが起きてくるのが見えた。
「ヒカリちゃん、状況は?」
「人が二人、魔物の反応が一ある」
俺も素早くMAPを確認したが近付いてくる反応に間違いはない。
ただしこれ以外の反応もある。ちょうど俺たちから見て二人と一体の反対側には一五人近い人の反応がある。
どうなっている?
動きだけを見ると、その複数の人たちから引き離そうと魔物をこちらに連れて来ている?
「とりあえず迎え撃つ準備をしましょう」
俺がMAPで見たことを告げるとルリカが言った。
それに従い俺たちは武器を手に持つ。
俺は盾も用意する。
この魔物の反応だが、ストーンゴーレムやアイアンゴーレムとは魔力反応が違う。しかもかなり強い。
やがて見えてきた一人は顔見知りのドワーフだった。
「ヘルク?」
「! ソラか⁉」
俺たちを見たヘルクは驚きの表情を浮かべた。
「危ないさ」
動きが一瞬止まったところにヘルクを追っていた魔物……二メートル超あるミスリルゴーレムが手に持つ武器を振ってヘルクを襲った。
その一撃を間に入ったセラが防いだ。
大剣と斧が激しくぶつかり合い、火花が散る。
力は互角。セラが押し返すことが出来なかった。
「すまぬ。助かった」
息を切らせながらヘルクが言った。
「あれはどうしたんだ?」
「来る途中で突然湧いたのじゃ。ミスリルゴーレムとはもう何度も戦っておる。が、こいつは今まで戦った奴とは比べ物にならぬほど強い。倒そうとしたが無理じゃった。それでわしらが仲間たちから引き離してきたわけじゃが……」
その先に俺たちがいたというわけか。
しかしヘルクたちはここまで連れて来てどうするつもりだったんだ?
いや、それを聞くのは後だ。
まずは目の前の脅威を排除する必要がある。
「あいつを俺たちが倒してもいいのか?」
「倒せるのか?」
「……やるしかないだろう?」
目の前のゴーレムからは殺気なんか感じない。
けど俺たちを倒そうと、殺そうとしているのは分かる。
俺は前に出るとセラと交代して盾役として攻撃を受ける。
上段から振り下ろされる大剣は迫力がある。
二メートルを超える体躯から繰り出される斬撃は、受け止めた俺ほど叩き潰そうとしてきた。
火花が散り、嫌な音が盾から聞こえてくる。
店売りの盾だけど、魔鉄鋼や魔物の素材を使ったそれなりの盾だ。
慌てて強化スキルで補強したけど、耐久値がごっそり減っている。
これはまともに受けては駄目な攻撃だ。
セラはよく力負けしなかったよな。
俺は盾をアイテムボックスに収納すると、ミスリルの剣を持って対峙した。
「ソラ、なんなら代わるさ」
「いや、セラは攻撃を頼む。あれは普通に戦っては倒せない」
ヒカリとルリカが攻撃しているけど、ミスリルゴーレムにダメージが入らない。
魔力を流しているのに弾かれている。
かなり硬い。
これはミスリルの身体が魔力によって補強されているからだ。
攻撃が当たるごとに魔力が消費されてミスリルゴーレムの傷が修復されて持つ魔力も減るけど、すぐにその消費された魔力が回復している。
俺も剣を振るうけど、表面に擦り傷のような痕が残るけど、すぐに修復されてしまった。
ミアの突きも、クリスの魔法も同じ感じで、唯一セラの攻撃が有効打として通るけど、時間が経つと元通りになってしまう。
こいつ、下手なダンジョンボスよりも強い?
ヒカリも相手の強さを理解して斬撃を放ったけど、それも有効打にならない。
「ルリカちゃん、セラ、時間を稼いでください」
クリスもこのままだと駄目だと思い魔法の準備に入る。
精霊魔法を使うつもりか?
ヘルクたちがいるけど、このままだと駄目だと判断したに違いない。
なら俺も攻撃をしながら魔法の準備を行う。
ミスリルゴーレムの横凪の一撃をミスリルの剣で弾く。いや、受け流して軌道を変える。
手が痺れる。
その隙にヘルクたちも攻撃に参加するけど、大槌による攻撃はダメージを一切与えられない。
普通のゴーレムならこの打撃で体を修復して、魔力を消費させるのだろうけど、消費した魔力がその都度回復するこのミスリルゴーレムには意味がない。
「やはり駄目じゃ。魔力が減らん」
「分かるのか?」
「まあのう。魔力の動きは鍛冶をする上で必要になるからのう」
「ここまでゴーレムを運んできて、ヘルクはどうやってあいつを倒すつもりだったんだ?」
「……ここに捨て置いて援軍を要請するつもりじゃった」
何らかの方法でここにゴーレムを留めることが出来るというのか?
詳しく聞きたいところだけど、それは最後の手段だ。
「離れて!」
ルリカの鋭い声がして、俺たちは瞬間的に離れた。
ヘルクたちもそれを見て何かを察して慌てて離れた。
それだけで動けるということは、鍛冶師としてだけでなく、冒険者としてもある程度動ける証拠だ。
実際これだけの化け物をここまで引き連れてきたわけだから、戦えないわけがない。
俺たちが離れた瞬間、ルリカが疾風を使って斬り込んだ。
金属音が鳴り響き、剣の通ったところのミスリルが削ぎ落された。
「おお」
それを見たヘルクは驚きの声を上げたが、攻撃はまだ終わらない。
次に攻撃を仕掛けたのはクリスの精霊魔法。ファイアーボールのような炎の球体がミスリルゴーレム目掛けて放たれた。
ミスリルゴーレムはそれを大剣で受け止めたが、大剣が徐々に鎔けていく。
それを後押しするように俺は風魔法のトルネードを放つ。
トルネードは炎の球体を前に押すように展開し、さらに炎をより燃え上がらせて……大爆発を引き起こした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます