【千字_感想】「中国行きのスロウ・ボート」(村上春樹/中央公論新社)
日々を忙しく過ごそうと思う。忙しく過ごして、この短編集の中身をすっかり忘れて、もう一度たのしもう。そう思った。
「中国行きのスロウ・ボート」は七編からなる、村上春樹の処女短篇集。とてもおもしろかった。おすすめの一冊である。ぜひぜひ、ご覧あれ。表紙もいいよ。
カクヨムで前後のつながりが不透明な作品を読み、意味がわからずに不機嫌になることがたまにある。対して、村上春樹の文章の意味のわからない箇所に、首を傾けながらも喜びをおぼえる。このちがいは何なのだろうか。両者とも、意味がわからないのは共通しているのに。なぜ、私は一方で不機嫌になり、もう一方でご機嫌になるのだろうか。
「ニューヨーク炭鉱の悲劇」のラストの意味が私にはわからない。ではつまらないのか、「なし」なのかと問われれば、「あり」なのだ。とてもおもしろい話であった。
表題作である「中国行きのスロウ・ボート」は、「おまえ、ばか、捨てんなよ」とつい声に出して言ってしまった。
「貧乏な叔母さんの話」は、どうしたら、こういう話をかけるようになるのかと考えた。しかし、小説というのは、私が思っている以上に自由に書いても読んでくれる人がいるようである。こういう作品をたくさん読めば、似たような作品を書けるようになるのか。深く読む必要もあるのだろう。構造を分析しながらとか。
「ニューヨーク炭鉱の悲劇」は、これもなんだかすごい。よくわからんがおもしろかった。筋はあってないように見える。初期の高橋源一郎をもっと崩した感じ。この作品に編集者がO.K.を出して、多くの読者が喝采しているのだから、日本の文学も捨てたものではないと思った。
「カンガルー通信」は、作家と読者の関係を暗喩しているのだろうか。
「午後の最後の芝生」は、逆立ちしても出てこない、すばらしいタイトル。どうやら、この作品は村上春樹の短編の中で最高傑作と評されているようで、それもうなづけるおもしろさであった。
「土の中の彼女の小さな犬」は、私がいちばんおすすめしたい短編。思わず笑ってしまった。設定の妙というか、文体の妙というべきか、村上春樹、恐るべしと思った作品であった。まったくかなわないね。こういう作品をいつか、私も書いてみたい。そう思わせてくれる作品だった。
「シドニーのグリーン・ストリート」は、羊男が出てくるよ。
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