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 墜ちていくブリュン。自由落下が作り出す風圧のせいか、身体を包んでいた炎はすぐに消えました。

「くっそー、いったい何が起きたっていうのよ!?・・・」

 ブリュンは身体をくるっと捻り、上空を見ました。そこに宙に浮く人影が。人影は自分を見てます。その顔は準一でした。

「ええ?・・・

 チックショー! あいつ、また肝心な時に出現しやがった! いったいなんなのよ、あいつ!?

 くそー、こんなところで死んでたまるかよ! くーっ!」

 ブリュンは右手を思いっきり伸ばしました。

「箒よ!」

 するとどこからともなく箒が現れ、ブリュンの手に握られました。

「ラッキー!」

 ブリュンの落下速度が徐々に緩くなってきます。ブリュンはほくそ笑みます。

「ふふ、こんなところでは死なないわよ、私は、絶対!」

 次の瞬間、地上にいた隊長格の兵が号令。

「撃てーっ!」

 軍の一斉射撃。無数の銃弾がブリュンの身体に向かいます。ブリュンはその銃弾に気づき、唖然とします。

「ええ?・・・」

 ブリュンの身体はあっという間に蜂の巣になってしまいました。

「うぎゃーっ!」

 ブリュンの落下は再び自由落下に。そのまま地面に激突。その姿は見るも無残になってました。


 空中要塞コントロールルーム。モニターを見ていたナルヴィが思わずあっちの方向を見ました。

「ふ、使えないやつだったな、あいつ」


 箒に跨ったまま、うつむき加減で微動だにしない姫。その姫を背後から抱く影。準一です。今回の準一も半透明です。姫の後ろで箒に跨ってます。準一は優しい声で呼びかけました。

「姫、もういいよ。君は十分やった」

 すると姫はかすかに口を開きました。

「いいえ、まだ終わってません。

 どうやら私は心臓を撃ち抜かれてしまったようです。今はなんとか魔法で生き永らえてますが、それもあと何分持つことやら・・・

 ねえ、準一。最期のお願いをしてもいい? あの空飛ぶ要塞に私と一緒に突っ込んで欲しいんだ、今すぐ。私の人生最期の魔法、閃光魔法はしかばねになったら使えないのよ」

 準一はほんの少し考え、応えました。

「わかった、わかったよ」

 準一は姫の身体を抱く両手のうち、右手だけを離し、箒の柄を掴みました。動き出す箒。2人の身体は空中要塞から離れて行きます。

 準一は姫に再び話しかけます。

「姫、実はオレ、輪廻転生の女神様に会ったんだ」

「ええ、じゃ、私たち、輪廻転生できるの?」

「うん」

 いいえ、これはウソ。準一は輪廻転生できません。もう1度蘇ることと引き換えに自分の魂は2度と輪廻転生しない。このまま永遠に葬る。この条件を呑んだのです。

 ちなみに、今回許された時間はたった3分。それが過ぎると準一の魂は永遠に消滅します。


 大勢の人の中、姫と準一を地上から見ているグラニ。

「お姉ちゃん、無事だったんだ・・・

 けど、いったい何をする気なんだろ?」


 空中要塞コントロールルーム。モニターに映る姫と準一。ナルヴィはそれを見て、

「こいつら、いったい何をする気だ?」

 技術者も頭の中は?がいっぱい。

「さあ・・・」

 技術者の背後では、他のオペレーターの兵たちもこの映像を心配顔で見てます。実は彼らは、閃光魔法をまったく知らないのです。


 2人が乗る箒がUターン。そこで空中に一時停止。準一は空中要塞を見て、

「じゃ、行くよ!」

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