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 鉄の馬は空中要塞の近くにいて、空中要塞を背にしてます。マグニがよーく眼を凝らして見てみると、鉄の馬と相対してる何かがあります。マグニがさらに眼を凝らします。

 それは箒に跨ってるようです。黒い服。魔女のようなハット。マグニはそれだけでこの物体が、マグニがお姉ちゃんと呼んでる人物だと気づきました。そう、それは姫なのです。

「お、お姉ちゃん?・・・」

「撃てーっ!」

 再び隊長格の兵士が号令。軍隊が上空に向け一斉に小銃を撃ちました。ズバババババーン! しかし、鉄の馬は微動だにしません。やはり銃弾は届いてないようです。ほぞを噛む隊長格の兵士。

「くそーっ、届かないか・・・」


 ここは上空。箒に跨った姫と鉄の馬に乗ったブリュン。2人は対峙してます。姫は怖い眼差しで叫びました。

「どいて!」

 売り言葉に買い言葉。ブリュンも怖い口調で言い返します。

「嫌だね!」

 ブリュンは姫の周りを見ました。周りには何もありません。ブリュンは準一を思い浮かべ、

「あの男がいない? この世に存在し続けるためのマナの力が尽きたっていうこと?

 いや、まだどこかにいるのかもしれないな。注意しないと・・・」

 一方姫はブリュンに殺意剥き出しの顔になってます。あいつは私の大事な準一を殺した魔女。今ここで閃光魔法を使ってこの女を殺してやろうか?

 しかし、閃光魔法は1度しか使えません。だいたい姫がここに来た目的は1つ!

 姫はブリュンの背後に浮いてる空中要塞をにらみました。今私がらないといけない相手は、この中にいるグラニ帝国第2皇子ナルヴィ。ナルヴィ、覚悟!

 姫が乗る箒がスタート。ものすごい加速。ブリュンはあわてて光弾銃を構えました。

「ちっ!」

 姫はブリュンから見て左側に飛んで行きます。

「させるか!」

 ブリュンは持っていた光弾銃を撃ちました。が、姫は上下に不規則に蛇行。軽く光弾を避けます。

「くそーっ、ちょこざいなーっ!」

 ブリュンは光弾銃を連射。が、不規則に動く姫に光弾は当たりません。

 空中要塞に近づく姫の身体。ほぞを噛むブリュン。

「ちっ、このままだと貫通魔法で内部に侵入されちゃう・・・」


 地上では市民や兵たちが固唾を呑んで見上げてます。中には祈ってる人も。

「神様、どうか姫様を守ってください!」

 グラニも固唾を呑んでました。

「お姉ちゃん・・・」


 姫とブリュンの戦いがモニターに映し出されてます。ここは空中要塞コントロールルーム。ナルヴィはモニターを見ながらつぶやいてます。

「おいおい、しっかりしろよ・・・」


 空中要塞の外壁がものすごいスピードで近づいてきました。あともう少し・・・ が、姫ははっとしました。

「ダメ!」

 急ブレーキ。姫の身体は空中要塞の外壁と平行になり、最後は右肩から激しく激突。

「くっ・・・」

 地上のグラニは唖然。

「ええ・・・」

 ほかの地上にいる市民や兵も唖然としてます。


 鉄の馬に跨ってるブリュンは、この光景を不思議に感じてました。

「え、なんで?」

 と、ブリュンはひらめきました。

「あは、そっか! 貫通魔法はある一定以上のスピードが出てないと貫通できないんだった。ふふ、あの、光弾を避けることばかり考えていて、スピードを出すことを完全に忘れてたみたいね」

 姫は右手で思いっきり空中要塞の壁面を押し、その反動で空中要塞から離れました。

「逃がすかよ!」

 ブリュンが駆る鉄の馬は、再び姫を追いかけ始めました。

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