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 侍女が再び侍従に話しかけました。

「失礼ですが、その機械は屋外の高いところに出ないと使えないのでは?」

 侍従長は今度は素直に応えました。

「ああ、そうじゃった。仕方がないなあ・・・」

 侍従長は今来た近衛兵に、

「さっき4人生き残ってると言ったな。馬に乗れる状態なのか、4人は? ケガは?」

「ありません」

「じゃ、4人で行ってこい!」

「御意!」

「小銃で撃たれても構わず突っ走るんじゃぞ! な~に、相手はデモ隊とはいえ、一般市民じゃ。武器の使用には馴れてないはず。4人同時に殺されることはないじゃろ」

 まるで死んで来いと言ってるような命令です。姫は唖然としました。あの近衛兵は死を賭けて他の兵隊を呼びに行こうとしている、私のために・・・

 けど、彼はプロの近衛兵。王室を守るためなら自分の命もいとわないのです。

「では!」

 と言うと、近衛兵は元来た方向へ走り去って行きました。

 一方侍従長はお側ご用人と近衛兵たちを見て、

「さて、どうしたものかのう。姫をどこに逃がせばいいのか・・・」

 近衛兵の1人が進言。

「あの隠し部屋に行ってみては?」

 侍従長は苦笑いし、

「わしもそれを考えておった。けどなあ・・・

 あの部屋に行くには、かなり危険な場所を通らないといけないのじゃ。本隊が来るまでこの近くに立て籠もってた方が安心のような気もするのじゃが・・・」

 姫が質問。

「隠し部屋て?」

 たった今進言をした近衛兵が応えます。

「こんなときのために用意しておいた部屋です。小さな部屋ですが、一度閉めてしまえば外から絶対侵入できない部屋です」

 姫は関心しきり。

「へ~・・・」

 どうやら姫は、隠し部屋の存在を知らなかったようです。

 侍従長は決断しました。

「宮殿の中はどこも危険な状態になった。安全な場所はやはりもうあの隠し部屋しかないじゃろ。

 では、皆の者、行きますぞ!」

 姫以外の一同が一斉に応答。

「御意!」

 一同が同じ方向に歩き始めました。が、

「じぃ、ちょっと待って」

 それは姫の発言。一同ははっとして姫に振り返りました。姫は一同に、

「みなさん、お願いがあります。もう誰も死なないでください! 私のせいで人が死ぬのは、もう嫌!」

 その言葉に全員フリーズしてしまいました。なんと応えたらいいかわからない・・・ けど、近衛兵の1人が、

「御意!」

 と応えると、空気が変わります。

「御意!」

「御意!」

「御意!」

 お側ご用人の2人と近衛兵たちが三々五々ですが、御意と応えたのです。最後に侍従長が微笑んで、

「さあ、姫、行きましょう!」

 姫はうなずきました。

「うん!」

 一斉に動き出す一同。と、お側ご用人の侍女が侍従に小声で話しかけます。

「ねぇ、あなた、輪廻転生の女神って知ってるよね」

 侍従も小声で応えます。

「え? ええ、もちろん。ノルン王国の国民なら当然知ってますよ」

「私、その女神様に祈ることにするよ」

 その発言に侍従はびっくり。

「ええ~!」

 その大きな声に、今度は一同がびっくり。数人の近衛兵が叱責。

「おい、でかい声を出すな!」

 侍従は小さくなって、

「す、すみません・・・」

 侍従は続けて思いました。

「輪廻転生の女神様に祈るってことは、オレたちは死ぬってことじゃんか。なんの冗談だよ、いったい・・・」


 ここは宮殿の中庭。この中庭に面した建物の大きな観音開きの扉が開き、4頭の馬が飛び出してきました。それぞれ近衛兵が乗ってます。

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