51

 その月明かりと準一が暗闇に馴れてきたせいで、徐々に周りが見えてきました。どうやら準一は無骨なロッカーに囲まれているようです。

「なんだよ、このロッカー?」

「武器が入ってるロッカーよ」

 それは姫の声。どうやら姫はロッカーに護符のようなものを貼ってるようです。準一は不思議に思い、質問しました。

「何やってんの?」

「ふふ、転移魔法の護符タリスマンを貼ってるの」

 準一はそのセリフの転移魔法て言葉が引っかかりました。

「転移魔法? も、もしかして?」

「そう、そのもしかして」

 と言うと、姫は指をパチンと鳴らしました。すると複数のロッカーが一気に消えました。準一の顔が驚きとそれ以上の喜びに変わりました。

「おおーっ!?」


 ここは姫の世界の宮殿の大広間。魔法円が強く青く光ってます。たった今その魔法円の中に無骨なロッカーが現れました。ロッカーの中には大型の金庫もあります。ロッカーのいくつかは開いていて、そこから小銃が見えます。

 巨漢のコマンダーやそれ以外の兵士たちは、途端に歓喜の顔になりました。

「おおーっ!」

 侍従長も歓喜。

「皆の者、喜べ! 姫がさっそく武器を調達してくれたぞーっ!」


 再び武器庫の中、準一も護符タリスマンの束を持って、次々と護符タリスマンをロッカーに貼り付けて行きます。

「よーし、オレも!」


 ここは監視室。たくさんのモニターが並んでいて、それを数人の係員が見てます。その中の1人があるモニターに起きてる異変に気づきました。なお、そのモニターの映像は暗視スコープのようです。係員は叫びました。

「た、大変だーっ!」

 この部屋にいた者すべてがそのモニターに注目しました。

「なんだ!?」

「また武器庫が荒らされてます!」

 映像の中では姫と準一が。係員の1人がぽつり。

「お、おい、今度は2人かよ・・・」

 その係員が受話器を手にしました。

「あ、もしもし、警察ですか!?」


 再び武器庫。今度は準一が指をパチン!と鳴らしました。すると眼の前にあった複数のロッカーがふっと消えました。喜ぶ準一。

「あは、こいつはおもしろい!」

 姫は口に護符タリスマンの束をくわえ、右手でそれを1枚1枚はぎ取り、一心不乱にロッカーなどに貼っていきます。

「もっともっと頂かないと! こんなものじゃ足りないよ!」

 姫は口から最後の護符タリスマンをはぎ取り、それをロッカーに貼ると、指をパチン! すると眼の前にあったロッカーや金庫が一瞬で消えました。ニヤッとする姫。

「あは」

 と、遠くの方からパラパラパラという音が。準一ははっとし、姫を見ました。

「あれは・・・ ヘリコプターだ!」

「え、ヘリコプター?・・・」

 姫は右手で無くなってしまった自分の左手の袖を掴みました。何か思うところがあるようです。と、突然右手を突き出しました。

「箒よ!」

 するとその手に箒が現れました。姫はさっと箒にまたがり、

「今夜はここまでにしましょ! 行くよ、準一!」

「OK!」

 準一も同じ箒にまたがると浮上開始。天井に開いた丸い穴に向かいました。


 ここは先ほどの自衛隊基地。無骨な建物の天井に丸い穴が開いていて、そこから箒にまたがった姫と準一が出てきました。準一は振り返り、今出てきた穴を見ました。そして思いました。

「やっぱりあの建物の中にいたんだ」

 ここで突然のサーチライト。2人がまばゆい光に照らされます。2人ともひるみます。

「うっ!?」

 2人が光源の方を見ると、いつの間にか2人の横にヘリコプターがいました。警察のヘリコプターです。

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