エピソード71 導かれたプレッシャー
オレは見とれていた恥ずかしさから真っ赤な顔で美女の質問に答えた。
「ハイィ!」
オレは声が裏返ってしまい恥ずかしい思いでいっぱいだが、美女は優しく微笑んだまま話かけてくれた。
「あの子を守ってくれてありがとうね。クライヴくん」
「えっ?」
オレは全く何の事か分からない。
「あの子ったら久しぶりに帰ってきたのに、クライヴくんの話ばかりするの。それで一度どんな子なのか興味を持って今回こんな事をして精霊達に連れてきてもらったの」
美女は少し困った顔をして話すがオレの頭の中ではある程度人物を絞る事ができた………………と言うか一人しかいない!
(久しぶりに帰ってきた? あの子? オレの話ばかり? フィーネですね! ではこの人はフィーネの家族? 精霊ってもしかして光の塊の事?)
「あの、その、あの子とは……フィーネさんの事でしょうか? それと精霊と言うのは、光の塊の事でしょうか?」
オレは失礼がないように言葉を選びながら美女に話しかけた。
「ああ、ごめんなさい名乗っていなかったわ。私はイルーラ・エルフィーナ・フォレストリーフ。隠されたエルフの楽園とか、森の都フォレストリーフって人間達からは呼ばれているこの都の女王よ」
いきなり女王様が現れてオレはすぐに片膝をつき頭を下げた。
「ちょ、ちょっと、そんなに畏まらなくて良いわよ。フィーネのお友達なんでしょう……今は」
オレはイルーラ女王の言葉を聞き、顔だけそっと上げた。
そこにはニヤニヤとしているイルーラ女王がいた。
「クライヴくんは、フィーネの事どう思ってるの?」
まだイルーラ女王はニヤニヤしている。
「あの、女王様。失礼ですがフィーネさんとはどのような関係なのでしょうか?」
(コレは大事な質問、最初は家族と思っていたが、流石にフィーネが王女ではないだろう。女王様の親戚、もしくはエルフの世界では子ども達は女王様に報告するとか?)
「あら、ごめんなさいね。フィーネは私の娘よ。三姉妹の一番下の末っ子なの。可愛い子でしょ」
「はい! 可愛いです!」
オレは脊髄反射で答えた。
選択肢を誤ると殺されると思ったからだ。
(えっ? フィーネって王女なの? 嘘でしょ? 野蛮過ぎるって)
イルーラ女王からはジト目で見られ、そのあと溜め息をつかれた。
「別に怒ったり、クライヴくんに危害を加えたりしないから、ちゃんと答えてね」
「はい! わかりました」
「クライヴくんにとってフィーネはどんな存在なの?」
(まぁ親として普通聞きますよね。エルフは人間に迫害されてきた歴史がありますし、未だにエルフは奴隷として需要が高いですし……)
「一番心を許せれる異性の友達です。というか今まで友達がいなかったので初めての友達です」
「友達? これから歳を重ねてもクライヴくんはフィーネの友達なのかしら?」
(痛いとこ突かれた…………そうなんだよ出会った時と今とはオレの心境が少し変化してんだよ……たまにドキッとしたり、友達以上の関係にならないよう自分を抑えている部分もあるんだよ。
多分オレはアネッサに出会うとアネッサに心が傾いてしまう自信がある…………だからフィーネには傷ついて欲しくないから今の関係が心地良いと思ってしまう………………けど、そんなのフィーネの意思を弄んでいるだけだ…………)
オレは悩んでいるのが顔に出ていたのか、イルーラ女王は少し悲しそうな顔をしていた。
「ごめんなさいね、精霊がクライヴくんの心を読み取ったようなの…………フィーネの事も気になるけど、クライヴくんは好きな人がいて、その時にフィーネを傷つける事になりそうだから、一定の距離を保っているのね」
精霊のおかげでほとんど筒抜けだった…………
「はい……」
そう答えるしか出来なかった。
「とても珍しい事なのよ、精霊が人の心を読んで私に伝える事は! 精霊は人間を気に入る事は無いのよ。唯一私の夫だけが精霊に気に入ってもらえた人間なの。でも精霊がクライヴくんとお話がしたいから心を読んだらしいの。クライヴくんの事がとても気に入ってて、まるで神様に会ったような気になるから嬉しいって言ってるわ。不思議ね?」
胸がドキリとした。
神様に会った事あるのと神様から
「正直に答えてね? と言っても精霊が嬉しそうにしてクライヴくんの心の中の断片的な情報を私に伝えて来るんだけどね。クライヴくん、あなたは何者なの?」
(迷ううう! 考えている事も断片的に漏れていく。どこまで言うべきか…………よし)
オレは真剣な表情をして雰囲気を変えた。
それは皇子スノウとしてイルーラ女王と話をするために、イルーラ女王も何かを感じ取ったようだ。
「イルーラ女王様、私が今から話す事は他言しないで下さい。たとえフィーネさんであろうとも。
私の名前はアレクサンダー帝国第三皇子のスノウ・デア・アレクサンダーと申します。帝国では亡くなったか亡命したか、色々と噂話されていると思います。
訳あって正室の女王の派閥の第一皇子派に命を狙われており、私が六歳の頃に毒殺されました。
そして神様に会い、もう一度命と闘う力を授かりました。
その後も命を狙われる日々が続き八歳の時に第二皇子の協力と母の犠牲により私は王国へ亡命する事ができました。そして王国では念の為に助けて下さった貴族の方の提案で亡命した事をふせていただき平民クライヴとして新しい人生を生きる事になりました」
イルーラ女王はオレの話を聞いて、子どもながらに劣悪な境遇を懸命に生き抜こうとしている様に思ったのか、悲痛な表情をしていた。
「そう……ごめんなさいね……辛い話をさせてしまい…………」
そう言ってイルーラ女王はオレを我が子の様に優しく抱きしめた。
「えっ? 女王様?」
美女に抱きつかれるのは悪くはないが突然過ぎて理解が追いつかない。
「ううん、お母さんって呼んで良いのよ」
もう一度言おう。
こんな美女に抱きつかれるのは幸せな事だが、突然過ぎて理解が追いつかない。
「えっえっ? え?」
「クライヴくん、いやスノウ皇子。貴方はいずれ結婚するでしょう。
その時に皇子と言う身分の人間が生涯一人だけの女性と結婚するのは珍しいと思います。
私の夫は貴族の端くれだったようですが、ある程度の貴族になると一夫多妻というのは珍しい事ではないと言っていました。
あなたは王族の血を引く皇子です。将来お母さんと呼ぶのが恥ずかしくならないように、今から練習だと思って私をお母さんと呼んで良いのよ」
もう一度言おう。
こんな美女に抱きつかれるのは幸せな事だが、オレにはどうしてこうなったか理解できない。
「え? あの、女王様! ちょっと待って下さい」
「女王様なんて堅苦しいわ。お母さんでいいのよ」
やっと理解ができた。イルーラ女王の心の中ではオレとフィーネは結婚に賛成的で、なおかつ他の女性とも結婚して良いよって事を考えているのだろう。
「あの! 僕はフィーネさんとの関係については少し慎重に考えたいところがありまして、初めて出来た友達ですから焦らず考えたいです。
それにこの王国では平民なので、一人の女性としか結婚はしません。
先程も精霊が読み取りましたが、フィーネさんに対する想いは、最初は友情が僕の心を占めていたのですが、最近は友達以上の感情を持つ事もありまして……絶対にフィーネさんを傷つけたくないので、これからどう接していけばと正直悩んでおります」
イルーラ女王に勘違いされないように心の中にあるモノを包み隠さず打ち明けた。
「うーん、どうしましょう…………クライヴくん」
困ったようにイルーラ女王はオレに言った……すると精霊がふわふわと何処かに行った。
しばらくすると女の子の悲鳴が聞こえた。
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